【YouTubeショートアニメ】独特の世界観で人気を博すピュティフィにインタビュー 「今の自分が想像できていないことをやりたい」

インタビュー

ここ最近、3分ほどのショートアニメを投稿するYouTubeチャンネルが盛り上がりを見せている。クスっと笑えるものを中心に日常系、SFやファンタジーといった一風変わった世界を持つものまで、実にさまざま。登録者数100万人を超えるチャンネルもあり、その勢いは2022年から高まり続けている。

今回取材した「ピュティフィ」も、勢いに乗るチャンネルのひとつ。2022年1月1日にチャンネルが開設されると、1年でチャンネル登録者数は40万人を突破。「天才JK」「ギャルとオタクの日常」といった人気シリーズを多く生み出し、再生数100万回を突破する動画もあるほどだ。

この1年間で「ピュティフィ」でなにが起こり、そして今後なにを見据えているのか、脚本を担当する宇月さん、イラスト担当の鈴木さんに話を伺った。

「何かやりたい」から始まったアニメ制作

――本日はよろしくお願いします。まず、なぜみなさんがショートアニメを制作しようと考えたのか、そのきっかけから教えてください。

宇月さん:本当に深い理由はなくて、「何かやりたい」と、ふと思い立ったんですよ。

鈴木さん:そう、宇月さんの声かけからでしたね。

宇月さん:これ自体は誰にでもある感情だと思うんです。何かやりたい、でも何をやりたいか分からない、みたいな。今でも覚えているのは2021年の10月31日、その思いに駆られて、鈴木さんともう一人のメンバーをご飯に誘って、「何かやろう」と伝えたんです。
そして今のアニメを作ることになったのですが、それはある種の消去法で自然と決まりました。僕の持論として、結局人は出来ることしか出来ないと思っていて。では僕らに出来ることはなんだろうと考えていたら、鈴木さんがファミレスの紙ナプキンに絵を描き始めたんです。それを見て自然と「アニメを作れるのでは」と思ったのです。だから僕、ショートアニメを始めたきっかけを聞かれたら「運命です」と答えています(笑)。

鈴木さん:運命……。私がイラストを描けて、もう一人の方は声真似などが得意で、宇月さんは動画作りのノウハウがある。その3人で出来ることと言ったら、ショートアニメを制作することなのかなと着地しました。楽しい仲間で何かを一緒に始められるのが、たまたまショートアニメだったんです。

――アニメのテーマはどのように決めていくのでしょう?

鈴木さん:まずは脚本が先行です。宇月さんの書いた脚本から画を想像して、デザインなど考えて描いていきます。イラストではなく、動画にすることを前提にテーマを決めています。

宇月さん:テーマも色々考えてこうなった、というより、結果論だと思っています。僕が書く脚本がたまたま日常っぽい内容だったのと、鈴木さんの絵柄もたまたま可愛らしい雰囲気だった。その結果、自然と日常を切り取った今の作風になった、くらいのイメージです。もしも僕が過激な内容の脚本を書いて、鈴木さんが暴力的な絵を描いていたなら、必然的にチャンネルの方向性も変わっていたと思います。

鈴木さん:日常系といいますか、穏やかな内容が多くなったのは自然な流れかもしれないですね。

――このチャンネルが伸びると手応えを感じたのはいつ頃でしたか

宇月さん:手応えは1本目の動画からありました。YouTubeは全然伸びなかったんですけど、TikTokは1本目から多くの方に見ていただけたので。

鈴木さん:実感が湧きませんでしたが、とても嬉しかったですね。

宇月さん:動画の作り方として、最初に10通りの「型」を考えて、まずはどれが伸びるか見て、今後の方向性を考えようとしたんです。ヒナとアンコのシリーズもその内のひとつの型で、もしも最初に伸びてなかったら続いていなかったと思います。ですがその後も結果的に、用意していた10個の型が全て伸びたので、そこは嬉しい誤算でした。
なかでも1月21日に公開した「懲役200年の囚人」シリーズは、単純に視聴数が伸びただけでなく、登録者やフォロワーも増えたので特に印象的でした。

――イラストを手掛ける鈴木さんは、いつ手応えを感じましたか?

鈴木さん:クリエイティブな視点から言うと、「これ!」という瞬間はなくて……。というのも、一本目の「視力53万のJK」の完成動画を見た際に「素敵なものができたな」という、自分軸の満足があったんです。なのでいつ手応えを感じたかと聞かれたら、最初からかもしれないし、一方で精進しないと……という気持ちが常にあります。

――ひとつの動画を作るのにどれくらいの時間をかけているのでしょう。

鈴木さん:ひとつの動画で3日程度、1週間で3本程度の動画が作れるようにスケジュールを組んでいます。

宇月さん:ある程度のスケジュールを組まないと、どこまでも作り込んでしまうので。もちろん人を増やして本数を稼ぐことも出来ますが、そうするとある種の作家性が薄れてしまう気もするんです。個人的に、所謂「中の人」が色濃く出ている作品の方が好きなので、バランスを取って今の形になっています。

――動画の内容で言えば、最近は、エンディングにフリートークが入るようになりましたよね。

宇月さん:二つ理由があって。一つは、当たり前といえば当たり前ですが、基本的にエンディングって視聴維持率が下がるんです。そこで、動画の最後にほんの少しでも楽しんでもらえるような要素を入れられたら最後まで見てもらえるのでは、と思ったのが理由の一つです。それともう一つ。中の人を出すこと自体が、チャンネルの個性につながると思ったからです。中の人を出すことは、「こいつらが作っているんだよ」と示す意味でも大切なことだと思っています。この人が作りました、と顔写真付きで売られているお野菜ってなんだか親近感湧くじゃないですか。

鈴木さん:エンディングのフリートークは、特に内容を考えず勢いで録音していて…。少し時間が経って確認する時、ものすごい恥ずかしさに襲われます(笑)。なにを言っているんだろう?と…。

――動画制作で苦労した点はありますか? 例えば期待していたほど再生数が伸びなかったとか。

宇月さん:多分、予想外に伸びなかった動画っていうのはなかったかな…。例えば「彼氏の始めた秘密のバイト」は、今見ると18万再生と、僕にとっては見ていただけている数字なんですけど、投稿したばかりのころはそんなに伸びていませんでした。同時に、当時は「必ずしも伸びなくていい」と思っていたんです。
というのも、僕たちは内側向けの動画と外側向けの動画の2種類があると考えていて、「彼氏の始めた秘密のバイト」は内側向けの動画です。つまり、今までの作品も見ている人、すでにピュティフィを知っている人が見るとより楽しめる動画なんです。だから、最初は伸びなかったけど、それも含めて動画の特徴だと思っています。

――ちなみに、みなさんが気になっているYouTubeチャンネルはありますか?

鈴木さん:Pie in the skyさんの公式チャンネルが好きです。『あはれ名作くん』や『ポンコツクエスト』などを制作していらっしゃる会社のチャンネルなんですが…。なかでも『アニメ会社で話すことかよ』という不定期更新の作品が大好きで。このシリーズは、絵作りにおいて私がとても影響を受けていると思います。

宇月さん:勉強の意味も含めると、たくさんのアニメチャンネルをチェックさせてもらってます。登録者数とかも関係なく見ているので、昨日も登録者80人のチャンネルを登録させていただいたり。好きなチャンネルはたくさんあるんですけど、あえて一つ選ぶなら、いくとんさんが好きです。単純に面白いです。

――最後に、今後の目標が何かあれば教えてください。

鈴木さん:健康に気をつけて、楽しんでもらえる作品を作ること…。心身の健康第一(笑)!具体的な制作の目標としては、魅力的なキャラクターを作り出したい気持ちがあります。

宇月さん:YouTubeの中でいえば、登録者100万人。あとは漠然と、ですけど、今の自分が想像できていないことをやりたいです。ひとつの目標を掲げることも素敵ですけど、それはある種そこに縛られることにもなってしまうと思っています。なので僕らはいい意味で揺蕩うように、時に横道に逸れながら、その時一番心が動くことをしていきたいです。今、想像できるものを仮に全て叶えられても、それは「想像通り」でしかなくて、面白くないですから。

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