『さよなら私のクラマー』島袋美由利&若山詩音インタビュー 「エラシコってなんだろう」なれないサッカー用語に勉強の日々

TVアニメ

2021年4月から放送中のTVアニメ『さよなら私のクラマー』、そして6月11日から公開がスタートする『映画 さよなら私のクラマー ファーストタッチ』。
両作品は「四月は君の嘘」の新川直司が手掛ける、女子サッカーを題材に描いたコミックが原作。サッカーに打ち込む主人公・恩田希の成長を描いており、劇場版では中学時代、そしてTVアニメでは高校に進学してからの物語が展開する。

本作で主要キャラクターを演じているのが、島袋美由利さんと若山詩音さんだ。島袋さんは主人公の恩田希役、そして若山さんはマネージャーとして恩田希やチームメートをサポートする越前佐和役を担当している。

今回のインタビューでは、『さよなら私のクラマー』という作品への思い、またサッカーが題材のアニメならではの難しさを話してもらった。

サッカーのサの字も知らない、だけど「絶対に出演したい」と思わせた登場人物の情熱

――『さよなら私のクラマー』への出演が決まったときを振り返ってもらえますか。

島袋さん:『さよなら私のクラマー』はオーディションのタイミングで原作を読ませていただいて、「これは絶対に出演したい!」と思っていた作品なんです。いち早くオーディションの結果が知りたくて、「例え落ちていても、すぐに教えて下さい」と言っていたくらいで(笑)。合格を知ったときも、痺れを切らして私から聞いたのがきっかけでした。
でも、いざ合格と聞くと嬉しさを通り越して実感がなかったです。実際の収録が行われる日を半信半疑で待っているような、不思議な感覚でした。

若山さん:私は最初、恩田希役でオーディションを受けていたんです。だから合格したことにも驚きましたし、佐和役だったことにも驚きました。まったく逆の性格ですからね(笑)。
とはいえ、ワラビーズの一員になれることはとても嬉しくて、原作を何回も何回も読み返しながら、収録の日を楽しみにしていました。

――お二人とも原作コミックも読んだと思いますが、どのような印象でしたか?

島袋さん:もともとサッカーのサの字も知らないので、出てくる人物名も戦術も、なにもかも分からない状態からのスタートでした。それでもすごく楽しめて、ワラビーズはもちろん、登場するチームの誰かに感情移入してしまって、最終的にみんな大好き、みんながんばれという気持ちになっていきました。
あとは一人称視点で語られるモノローグと、三人称視点のナレーションの塩梅も絶妙なんです。その子を客観的にも見られるし、自分自身と重ね合わせることもできる。その感覚がとても大好きで…言い出すときりがないです。

――だからオーディションでも「これは絶対に出演したい」と思うようになってのですね。

島袋さん:そうですね。読んでいくうちに夢中になって、全員のセリフを音読することもありました。そうしているうちに「誰かは絶対に演じたい」と思うようになりました。

島袋美由利さん

――若山さんはどうでしたか?

若山さん:登場するキャラクターのサッカーに対する情熱がみんな本物で、全員に愛着が湧くのがすごいですよね。試合で対戦することはあっても、決して善悪で戦っているのではなく、そこにあるのは勝利と敗北だけ。明確な敵がいないから、読んでいてすごく清々しいんです。
作品の中心はワラビーズですけど、対戦では普通に負けちゃうこともあるんです。その姿がとても現実的で、勝敗がつくたびに一喜一憂していました。

――女子と男子の体格差を見せつけられたり、現実を思い知らされる場面は多いですよね。

若山さん:確かに、勝敗だけでなく場面ごとでもリアル感を追求している作品だと思います。

――作中で性格や行動が気になったキャラクターはいましたか?

島袋さん:恩田を演じた身としては恩田以外見えないです…(笑)。それでもあえて挙げるなら、ナメックは素敵だなと思いました。恩田に追いつくために、誰よりも泥臭く頑張ってきた姿がとても感動的で、作品の中で描かれていない努力まで想像して、応援したくなりますよね。でも恋にはちょっと不器用で、中学生になった恩田との話し方とか、見ているとすべてがいじらしくなってしまうんです。

若山さん:私が気になると言えば山田かな…。会話を見ていると「あなたは恩田のことをどう思ってるの」と考えちゃうます。多分、いや絶対恩田のことが好きなんですけど、セリフは意外とサラッとしていて、とても不思議な存在です。中学生離れした精神で、「なんでそんなにドライなの!?」って思いながらの収録でした。

島袋さん:当の恩田自身が、サッカーのことばかり考えているから不思議な関係になるんでしょうね。

若山さん:それなのにみんな恩田のことばかり気にかけているのも不思議! 佐和だってそこにいるのに(笑)。でもきっと、サッカーに夢中な姿というのも、男子からしたら魅力的なのかもしれませんね。

――では、実際の収録はいかがでしたか?

島袋さん:恩田が「今のはファールだ!」と言った後、山田が「正当なタックルだ!」と言い返す、というシーンがあるんです。だけどそのとき内山さんが「正当なファールだ」と間違えてしまって、そのとき緊張感がちょっとだけ和らいで、楽しいと思えました(笑)。内山さんをはじめ、先輩の方々が見守ってくれる環境の中で、ほっこりする瞬間に立ち会えたのはすごく嬉しかったです。

若山さん:収録にのぞむときスタッフの方から「佐和は育ちがいいです」とディレクションされたのがとても印象的でした。言われてみると確かに、小さい子供のころの服装も他の子とはちょっと違うし、すごく納得でいました。

――演じる際に注意した点は?

島袋さん:恩田の試合に出れない悶々とした気持ちを表現しようとすると、ついつい悲観的な演技になってしまうので、収録ではそうならないように注意しました。スタッフの方からも「恩田はもっとバカでいい」とディレクションをいただいていたので(笑)。
あとは試合中のシーンですね。試合中はアドレナリンが出ているはずなので、あまり息を入れないことは意識しました。とはいえ、どのくらいの息遣いになるかは試行錯誤でした。作中の運動量は想像でしか補えないので、せめて恩田の感情の動きは最大限演技に困られるよう努力しました。

若山さん:なんでそんなに、恩田に一生懸命になれるんだろうと考えるところからスタートしました。でも、いくら考えても理屈じゃ全然答えが出ず、悩むこともありましたね。悩んだ末に出た答えが、「そもそも理屈じゃない」なんです。「よく分からないけどのんちゃんのことが大好き、のんちゃんとずっと一緒にいよう」という気持ちが原動力だと思うとすごく腑に落ちたし、その真っ直ぐな気持ちを表現できるようにがんばりました。

若山詩音さん

――すでにTVアニメが放送されていますが、こちらを実際に見た印象はどうですか?

島袋さん:みんなに声が付くことで心理描写がさらに鮮やかになったと思います。ワラビーズのドタバタしたスピード感とか、独特のチームワークとか、アニメで見ると原作とは違った楽しさになっていますよね。

若山さん:4話でみんなが料理をするシーンが印象的で、ボケとツッコミのバランスとか、原作の面白さはそのままに、さらに勢いが増していますよね。サッカーの熱さも原作通りで、見ている私も自然と応援してしまうようなアニメだと思います。あと、ついつい知りたくなる用語がどんどん出てくるのも面白いです。

島袋さん:あー分かります! 「ルーレット」ってなんだろうとか、収録中ずっと考えてました。あとから動画で見てみたらすごいテクニックで驚いたし、勉強になりました。

若山さん:イントネーションが分からないこともありました。私が分からなかったのは「エラシコ」で、どの文字を強調すればいいんだろう…って(笑)。共演者の方に聞いたり、最終的には実況アナウンサーの声を確認したりしながら、試行錯誤していましたね。

――ちなみに、お二人は学生時代、部活動などはされていたのでしょうか?

島袋さん:実は部活は殆どやったことがなくて…(笑)。一応ロボコン部に所属していたことはあったんですけど、活動をするでもなく、みんなとお菓子を食べてばかりでした。なにか一つのことに打ち込むことがなく、『さよなら私のクラマー』ではじめて部活の雰囲気を味わえました。

若山さん:私は高校のとき美術部だったので、秋の文化祭へ向けて夏休み中集まって、アイスを食べながらみんなで頑張ったのが思い出です。美術室はクーラーがついてなくて、みんな汗だくになりながらの作業でしたね(笑)。

――それでは最後に、ファンに向けて一言お願いします。

島袋さん:『さよなら私のクラマー ファーストタッチ』は、特に終盤の試合シーンに注目してもらいたいです。俯瞰で試合を見せつつ恩田の目線になったり、ボールに合わせてカメラが動いたり、選手ですら味わえない迫力が楽しめます。監督からの指示や応援といった声もいろいろなところから聞こえて、臨場感もすごいです。
ぜひ試合に至るまでの物語で、きっと恩田のがむしゃらな姿に惹かれていると思うんです。なのでクライマックスでは、みなさんも恩田のことを応援してもらえると嬉しいです。

若山さん:それぞれの心情がぶつかり合っている様が愛おしくて、そこを見るだけでも楽しめると思います。サッカーに詳しい方はもちろん、サッカーのルールや用語を知らない人にも魅力的に映ると思うので、ぜひ劇場に足を運んでいただけたらと思います。

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©新川直司・講談社/2021「映画 さよなら私のクラマー」製作委員会