『異世界美少女受肉おじさんと』編集担当・吾田慎悟氏インタビュー! ファ美肉おじさん の文言で「これは行ける」と思った

TVアニメ

漫画アプリ「サイコミ」などで掲載されている『異世界美少女受肉おじさんと』。本作は、アラサー会社員のおじさんが異世界転移したら絶世の美少女に。男の姿に戻るため、親友とともに魔王を倒す旅に出るというファンタジー作品だ。

5月には TV アニメ化も発表され、ファンを湧かせた本作。AnimeRecorder では本作の原作・津留崎優氏、作画・池澤真氏、「サイコミ」編集担当の吾田慎悟氏にインタビューを実施した。

第3弾となる今回は編集担当である吾田慎悟氏のインタビューを紹介。編集者目線から見る同作の魅力、そしてこれまでの道のりを振り返ってもらった。

第1回・津留崎優氏インタビュー 第2回・池澤真氏インタビュー

神宮寺と橘、互いを大切に思い合う心を楽しんでもらえたら

――『異世界美少女受肉おじさんと』を手掛けることになった経緯を教えてください
私はもともと大手出版社にフリーの編集として在籍しておりまして、その当時からお二人にはコミカライズなどをお願いしていました。その中でアニメに合わせた短期集中連載企画がありまして、一時はそのアニメ化の発表もされたのですが、結局ストップしてしまうということがありまして……。

その後「サイコミ」編集部に転職し、「ここでもなにか一緒にやりませんか」とお二人に声をかけたのがきっかけでした。
本作のアニメ化はかなり早いタイミングから決まっていました。連載開始から 1 年経ってないくらいでしょうか。ただ当時の「サイコミ」は紙の書籍をようやく出し始めたころで、驚きというか、僕自身も半信半疑の気持ちが強かったです。「本気?」みたいな。

――コミカライズ作品を手掛けてきたとのことですが、それ以外にどんな作品を担当してきましたか?

本当にコミカライズ作品ばっかりで、『異世界美少女受肉おじさんと』がほぼ初めてのオリジナル作品と言っていいです。
「サイコミ」に入ってからは本作以外に、『異世界社長 魔王軍で成り上がる!』や『いわかける!! -Try a new climbing-』などもメインで担当した作品になります。

――本作は企画開始当初からメディアミックスを考えていたとのことですが、どんな意図があったのでしょう。

やっぱり、かつてお二人と携わったアニメ化の企画がなくなり、悔しかった思いがあったからですね。お二人の作品がアニメすることが重要だったんです。
だからこそアニメ化が実現できるよう、連載当初からアニメになることを意識したシナリオ構成になっています。小編をはさみつつ中編を進め、大長編のエピソードへとなだれ込んでいく。コミックスでいうと 4 巻から 5 巻あたりで 1 クールが終わる。そんなところまで意識しながらの編集作業でした。

――あらためて、『異世界美少女受肉おじさんと』にはどんな魅力があると感じますか?

セリフがどれもキャッチーなのと、パッと出てくるコメディ要素、表現の力のある絵力の 3点です。

――原作者お二人の印象はいかがですか?

真面目な天才ですね!
打合せの際、今後の展開やネームの部分で言い合いになることがあるのですが、これはお二人に自分の理論があって、明確に目指しているものがあるからこそだと思います。作品をよりよくしようと、編集と議論してくれるところは真面目だからこそだと思います。

――この作品のターゲット層はどのように考えていますか?

ひとつはライトノベルが好きな 20 代から 30 代の男性です。異世界転生ものでありながら、あえて外したストーリー展開も持ち合わせるので、意外性があると思います。
もうひとつは女性です。津留崎先生とも「男性でも女性でも楽しめる作品にしたい」と話し合っていて、神宮寺と橘の精神的つながり、互いを大切に思い合う心を楽しんでもらえたらと思います。

――アニメ化に向けて、具体的にどんなアクションを起こしたのでしょう。

アニメ化に向けてというところだと、タイトル付けのところまで遡ります。アニメにするとき、どれだけキャッチーなコピーを打ち出せるかはとても重要だと考えていて。この作品も最初にその部分を津留崎先生と相談したら「ファ美肉おじさん」というキャッチコピーが返ってきて、「これはいけるんじゃないか!?」と思いました(笑)。
また作品の作り方も、短編にするか、しっかりとしたストーリーを軸に据えるかも津留崎先生と相談しました。その上で、短編よりも連載形式でストーリーを見せたほうが読者受けもいいし、アニメ化もやりやすいということで現在の形になりました。

――企画を通すまでにはどんな苦労がありましたか?
1 話のネームを同僚や知り合いに見せたとき、「これは厳しいと思う」と言われたことですね。だからこそお二人とは「見返してやろう」と逆にモチベーションを上げて行きました。

――アニメ化の発表にあたって、ファンからの反響はいかがでしたか。
発表時に Twitter のトレンドに入ったのは驚きました! 最初にアニメ化の告知を打ったのは「サイコミ」内だけで、メディアと連携もしていなかったのですが、それにもかかわらずあれだけの反響があったのはとても嬉しかったです。

――アニメの制作に原作者のお二人が携わることはありますか?
脚本のところで津留崎先生に入ってもらっています。アニメの制作が始まった当初は原作が想定していたところまで描き切っていなかったため、構想の先出しなどお願いしました。脚本が上がってからは密度が濃すぎる問題も発生してしまって、どこの表現をシンプルにするか、というところも含めてご相談させてていただきました。

――アニメに対して期待していることは?
脚本と音楽周りはとてもいいものができていると思っています! あとはアフレコや実際に動いているところなど、これから本格的に始まる部分については本当に期待しています。

――ちなみに、好きな異世界作品があれば教えてください。
異世界作品を読み始めたのはいつぐらいでしょうか……。もともと二次創作小説などを求めて小説投稿掲示板を読み漁っていた時期があって、そこからオリジナルへと遷移していったことを考えるとたくさんありますね。それらの中でも、『この素晴らしい世界に祝福を!』は飛び抜けて面白かったです。あとは『ダンまち(「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」)』も掲載当時から異色の作品として印象的でした。

――今後アニメ化を目指す作家さんや、応援するファンにへ向けて、アドバイスはありますか。
地道な布教活動が一番嬉しいですね! Twitter での感想や Amazon のレビューなど、面白いものをしっかり面白いと発信することが、作品の発展につながると思っています。

――最後に、ファンの方々に一言メッセージをお願いします。
当初から目標にしていたアニメ化が実現できたのは皆さんの応援があったからこそです。アニメ本編も含め、今後もファンの方々の期待に応えられるような展開を見せていけたらと思います。

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