『山田くんとLv999の恋をする』浅香守生監督インタビュー。茜は「別れ際に笑える人」

TVアニメ

2023年4月から放送がスタートしたTVアニメ『山田くんとLv999の恋をする』。原作はマンガアプリ「GANMA!」にて連載中で、2022年6月には「第6回みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞」にて大賞を受賞。KADOKAWAから発行されている単行本の累計発行部数が200万部(紙・電子版合算)を突破するなど、注目を集めているラブコメ作品だ。

本作で描かれるのは、予期せぬ失恋に落ち込む女子大生・茜と、ゲーマー男子高校生・山田との恋。
アニメーション制作は、『オーバーロードⅣ』や『宇宙よりも遠い場所』などで知られるマッドハウス。そして監督は過去に『ちはやふる』、『カードキャプターさくら』などを手掛けた浅香守生氏が務める。

今回は、そんな浅香監督にインタビューを実施。マンガアプリから生まれたこの作品をどう映像化したのか、さまざまな質問をぶつけてきた。

時にはプロゲーマーの動画も参考にしながら

――原作を読んでみての印象はいかがでしたか?

この作品はマッドハウスから監督の仕事を頼まれたタイミングで知って、そこで初めて原作も読んだんです。私はこれまでマンガアプリというものに触れる機会が多くなかったので、テンポの良さには驚かされました。軽快に読める中で、時折キラーショットやキャッチーなセリフが挟まるのも印象的でした。

――アニメ化するにあたって、まずはどんなところにこだわろうと考えたのでしょう。

まずは軽快な会話がアニメでも重要になると感じました。山田と茜のやり取りは特にテンポが良いので、そこは映像でも違和感がないように仕上げたいなと。
会話というところにも関連してきますが、キャラクターの見せ方も意識したポイントです。まずは茜に感情移入してもらって、そこからだんだん山田にシフトしていく過程を全体の構成として考えました。

キャラクターの見せ方に関しては、原作者のましろ先生にもご協力いただいたところです。先生は脚本会議にもアフレコにも参加していただいて、キャラクターの感情の変化は意見をもらいながら制作しました。

――ましろ先生とのやり取りも積極的に行っていたんですね。

そうですね。キャラクター以外にも助けていただいたところはたくさんあって、例えば山田がゲームをプレイするシーンですね。私はネットゲームをほとんどプレイしないので、ましろ先生にいろいろと質問することもありました。

――確かに、このアニメを作るとなると、ゲームの知識も重要になってきますよね。

重要ですけど、私を含めたスタッフにはゲームを普段からプレイする人がいなくて…。なので、ましろ先生に話を伺い、ときにはプロゲーマーの動画を見たりしながらイメージを膨らませていきました。
私からすると、マウスでエイム操作をすることですら驚きで…。こんな知識のない私を助けてくれたのは茜の存在です。彼女もゲームの知識があるとはいえないので、同じ目線でゲームと向き合うことができました。

――山田が仲間に対して指示するシーンは、とてもリアルに感じました。

ありがとうございます。山田と一緒にゲームをプレイする仲間に関しても、知らない人間から見ても「こういう人いそうだな」という雰囲気が出せたかなと思います。

――山田や茜の人物像についてはどのように見ていましたか?

2人ともアウトプットする量が違うだけで、周りに気を配れる人だと思います。もちろん違う面もあります。山田は自分の内側に世界が広がっていて、その世界の中でいろいろな事を考えているタイプ。茜は「別れ際に笑える人」というのが第一印象でした。アニメでも断片的に出てきますが、寂しさや辛さを笑顔に変えられる人ですよね。

――そのほかのサブキャラクター、例えば瑛太や瑠奈、鴨田さんはいかがですか。

個人的に印象的なのは瑠奈ですね。瑠奈は茜の個性を引き出す上でも良いキャラクターをしていると思うし、自分を見せる窓口が狭いだけで、とてもかわいい一面を持っていると思うんです。
最初の印象だけだと、まるで敵キャラのように感じるのですが、そこで止まらず、愛されるキャラクターになってほしいと思いながら描きました。

会話のリズムを引き出すための工夫

――監督以外のスタッフはどのように決まっていったのでしょう。

マッドハウス内でのチームはある程度決まっていて、今回もそれに従った形です。美術監督の清水さん(清水友幸氏)はとても瑞々しい世界を描いてくださる方ですし、キャラクターデザインの濱田はやわらかい画を描く人で、作品に合うと確信していたし、実際彼が描いた最初のデザインでほぼOKを出しましたから。……ただ、本当に無口で、山田くらいとっつきにくい人ですけどね。

――(笑)。基本的に原作のストーリーや演出がベースになっていると思いますが、スタッフから出てきたアイディアが活かされた部分はあるのでしょうか?

可能な限りテンポよく話を進めていきたいので、説明を極力省くように意識しています。「ここはどこなのか」という場所の説明はほとんどせず、象徴的なものをドンッと出して理解してもらう。例えば第1話だと、居酒屋のシーンでは看板やビールをポンポンと出して、ここが居酒屋であることを説明しているんです。

――実際にアニメを見て印象的だったのが、セリフを文字でも表現しているところです。時には口に出すセリフと文字が別の内容であるケースもありました。

それも会話のテンポを意識した結果です。すべてを喋らせたら冗長になってしまうところを文字に置き換えることでリズムを崩さず、それでいて面白い感情の変化は逃さないようになっています。
原作を読んでいても面白いセリフはたくさんあるのですが、それをすべて詰め込むのは難しい。見ている方に、会話の魅力を全て味わってもらうためのアイディアでした。中には声の会話と文字の会話、まったく違った内容で進むこともあるんです。

――文字といえば、ネットゲームでは定番のチャットも作中で描かれています。

文字情報になりがちなチャットをテンポよく見せるのも意識したところです。作中だと茜がメッセージを送っても、何分も返信が来ない場面があります。でも本当に2分待たせるわけにもいかないし、しかしすべてを省くと茜の焦りや怒りを表現できないし、そのバランスですよね。その間にお茶を淹れるなど、時間経過を描く工夫をいろいろと試しました。

――この作品の場合、現実世界に加えてゲーム内の世界も描かれます。2つの描き方で違いはありましたか?

音楽は意識しましたね。ゲームの中にいるときは中世の外国のような雰囲気で、現実世界だともっとふわふわした、柔らかいイメージが持てるようにしています。背景に関しても、ゲーム内は木々を細かくリアルに描くなど、違いを演出しました。

そしてキャラクターも、ゲーム内だと低い等身になりますから、当然動き方も変わりますよね。これは本編だけでなくアイキャッチも同じです。アイキャッチにはゲーム内のアバターが登場しますが、元気に動き回る様子は現実世界だと不自然でも、アバターだとそれがむしろ自然になるんです。

――アニメを見るときにはアイキャッチにも注目したほうがよさそうですね。

本編にはない遊び心を出せるし、前後の流れも気にしなくていいので楽しいですよ。

――キャスト陣に関しては決める際のポイントはあったのですか?

茜はコロコロと表情が変わる人なので、どこを切り取っても嫌われない声、特に女性に嫌われない声を重視しました。水瀬いのりさんであれば引き出しも多く、理想の茜を演じてくれると思い決定しました。
山田に関しては…内山昂輝さん一択でしたね(笑)。ましろ先生も内山さんがイメージ通りだったみたいですし、SNSの反応を見ても「ピッタリ」という声が多かったので完璧です。

――水瀬さんというと年下の女の子を演じるイメージも強く、今回のような山田から見て年上の女性を演じるのは珍しいですよね。

確かにそうかもしれませんね。だけど、そのイメージも含めて絶妙な演技を見せてくれていると思います。茜は年上の存在でもありますが、それと同時に子供っぽい一面もあります。お姉さん感とあどけなさを両立できているので、水瀬さんにお願いするのは正解でした。

――そういえば、浅香監督はオープニングテーマの絵コンテも担当されていますが、こちらはどのように制作したのでしょうか。

原作で象徴的に使われていたものは積極的に利用したいと考えました。ドット絵もそうですし、山田の杖、パラディンの剣などですね。
悩んだのはキャラクターの動かし方ですね。山田と茜の2人が出てきますが、イメージを崩さないために山田はあまり動かすことができない。山田だけでどんな見せ場を作れるか、考えることは多かったです。

――では、あらためて本作でどんなところに注目してほしいか、監督なりのポイントがあれば教えてください。

この作品は山田と茜を中心にストーリーが進むのですが、サブキャラクターにも注目してほしいですね。第5話に出てくるメガネの男とか、ゲームに出てくる敵キャラとか、細かいところにも面白さが詰まっています。

――ありがとうございました。

放送情報

■地上波放送情報
・TOKYO MX 4月1日(土)より 毎週土曜24:30~
・とちぎテレビ 4月1日(土)より 毎週土曜24:30~
・群馬テレビ 4月1日(土)より 毎週土曜24:30~
・BS11 4月1日(土)より 毎週土曜24:30~
・北海道放送 4月1日(土)より 毎週土曜25:58~
・静岡放送 4月1日(土)より 毎週土曜26:13~
・RKB毎日放送 4月1日(土)より 毎週土曜26:30~
・CBCテレビ 4月1日(土)より 毎週土曜26:39~
・MBS 4月1日(土)より 毎週土曜27:38~
※放送日時は編成の都合等により変更となる場合もございます。予めご了承下さい。

■その他放送情報
・AT-X 4月2日(日)22:30~(再放送:毎週木曜28:30~/日曜7:30~)

■配信情報
dアニメストア、ABEMAにて4月1日より毎週土曜24時30分~地上波同時配信!
ほか各配信サービスでも4月4日火曜12:00より順次配信開始!
・dアニメストア 4月1日(土)24:30~
・dアニメストア ニコニコ支店 4月1日(土)24:30~
・dアニメストア for Prime Video 4月1日(土)24:30~
・ABEMA 4月1日(土)24:30~
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・アニメ放題 4月4日(火)12:00~
・バンダイチャンネル 4月4日(火)12:00~
・Hulu 4月4日(火)12:00~
・DMM TV 4月4日(火)12:00~
・FOD 4月4日(火)12:00~
・Amazon Prime Video 4月4日(火)12:00~
・ニコニコ 4月4日(火)12:00~
・TELASA(見放題プラン) 4月4日(火)24:00~
・J:COMオンデマンドメガパック 4月4日(火)24:00~
・auスマートパスプレミアム 4月4日(火)24:00~
・milplus見放題パックプライム 4月4日(火)24:00~

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©ましろ/COMICSMART INC./山田くんとLv999の製作委員会