アニメ業界で働く人の仕事内容は?アニメーターから未経験でもできる仕事まで一挙に紹介

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アニメ業界はTVアニメ、劇場アニメともに多くの作品が生み出され、2022年には世界の日本アニメ市場が2兆7422億円になった(日本動画協会調べ)。
アニメのクオリティも進化を続け、ひとつの作品に対して200人以上のスタッフが関わることも珍しくない。それが年間で300本以上も作られているのだから、業界を支えるスタッフの人数は年々多くなっている。

その業務内容は多岐にわたり、絵を描くアニメーターや物語を作る脚本家、あるいは特別な技術がなくてもできる職もある。本稿では、これらのアニメの制作にかかわる仕事の内容を見ていこう。

アニメを企画し、完成に導く人物

アニメを制作するには、まずは企画を立て、一歩目を踏み出すプロデューサーの存在が必要不可欠。そして、現場では監督や作画監督が指揮を取り、アニメを完成に導いていく。

プロデューサー

アニメ制作におけるプロデューサーの役割は作品ごとに異なる。一般的にはアニメの企画を立案し、スポンサー企業や制作会社などに提案することから始まり、予算管理やスタッフの選定、宣伝・マーケティングの管理も一手に引き受ける。制作全体を統括し、スムーズに制作が進むように調整し、最終的には作品の品質・収益を管理する責任がある立場だ。

アソシエイトプロデューサー

アソシエイトプロデューサーは、アニメ制作におけるプロデューサーのアシスタント的な役割を担うことが多い。プロデューサーと同様の業務を行いつつ、外部との交渉やコミュニケーションも担当。制作物のクオリティ向上やスムーズな進行が求められる。

監督

アニメ制作現場でのリーダーと言えるポジションが監督だ。アニメーション制作にあたって使用する脚本を確認、ときには自身で執筆もしてストーリーや世界観の骨格を作る。また、キャラクターデザインや色彩設定、音響制作などの指示を行う。アニメーション制作の進行状況を把握し、必要に応じて調整することも重要な仕事の一つだ。
作品によっては監督をサポートする助監督、あるいは監督より上の立場で作品全体を統括する総監督を据えるケースもある。

作画監督

作画監督は、キャラクターデザインをもとに、アニメーションの画面構成や動きの流れ、シーンのタッチなどを統括する役割を持つ。各話の演出やストーリー展開を踏まえ、アニメーションの画面構成を決定。キャラクターデザインを担当する人物との密なコミュニケーションを取りながら、アニメーションにおけるキャラクターの外見、表情、動きの方向性を決めるのも仕事の一つだ。
そして、原画の最終チェックも作画監督の重要な役割の一つ。アニメーションの完成度や一貫性、キャラクターや背景の描写など、多岐にわたる要素を確認しながら、最終的なチェックを行う。

絵コンテ

絵コンテは、アニメーションのシナリオに基づいて、各シーンの映像イメージを描くスタッフ。絵コンテは、アニメーション制作において重要な役割を担っており、アニメーションの流れやカメラワーク、キャラクターの動きや表情などを細かく設計することが求められる。
ただし、絵コンテの作業は監督をはじめ、アニメーション制作スタッフが共同で制作するケースも多い。

演出家

演出家は、絵コンテや原画をもとに、アニメーションの動きや演出を決め、調整するのが主な仕事になる。カット単位で指示を出すことで、アニメーション全体の統一感を出すことが求められる。

物語を生み出すシリーズ構成・脚本家

オリジナルアニメはもちろん、原作があるケースでも脚本家やシリーズ構成の力は必ず必要になる。ストーリー以外にも登場人物、台詞、演出などの構成を行うのが主な仕事だ。

シリーズ構成

シリーズ構成は、アニメーション制作においてストーリーの方向性や登場人物の設定などを考え、シリーズ全体の構成を決める役割を担っている。脚本の監督とも言える立場だ。
具体的には、物語の大筋を考え、エピソードの流れや登場人物の設定をまとめる。また、原作がある場合には、原作とアニメーションの差異を調整する役割も担っている。

脚本家

脚本家は、アニメ制作の基本となる脚本を執筆する。監督やプロデューサーの意見を聞き、その方針に従って、大まかなストーリーの流れを決めていく。原作がある場合は、どこまで映像化するかを考えるのも仕事の一つ。

アニメを彩るデザイナー

物語という骨格が決まったら、次はそこに登場するキャラクターや背景などを描くことになる。

キャラクターデザイン

キャラクターデザインは作中に登場する登場人物たちの外見をデザインするのが最大の仕事。大まかな見た目だけでなく、色、服装、アクセサリー、武器なども詳細に詰めていく。
アニメーション制作においてキャラクターのアニメーションについて、指示を出す役割がある。例えば、キャラクターの動きの細かい部分や表情、ポーズなどを指示し、アニメーション制作スタッフが正確にキャラクターを描けるようする。

美術監督

美術監督は、アニメの世界観を表現するために、背景や小道具などの美術設定を作成する。美術設定は、作品の色合いや雰囲気を決定する重要な要素であり、美術監督はデザインの方向性を決めるために監督や制作スタッフと協力する。
ときには背景美術の監督も行う。背景美術のクオリティやデザイン、色調などを確認し、制作スタッフに指示を出する。

色彩設計

色彩設計はその名の通り、アニメで描かれる人物や背景の色彩を調整するスタッフのこと。作品全体で統一された調和のとれた色彩になるように設定。ときにはストーリーの演出を考慮した色使いを判断していく。

プロップデザイン

プロップデザインは、キャラクターが身につける装飾品や、背景に登場する小物のデザインをまとめる仕事。キャラクターの性格や作品の世界観を考慮すること、またアニメーションとしての動かしやすさも考えながら制作していく。

アニメに動きをつけるアニメーター

アニメーターは、アニメーション制作において、キャラクターや背景などの画像を制作する重要な役割を担っている。そして、アニメーターは大きく分けて原画と動画の2種類が存在する。

なお、アニメーターの仕事内容をより詳しく知りたい人は、以下の記事もチェックしてほしい。ここで紹介している仕事内容に加え、日々の仕事の流れや環境についても解説している。

アニメ制作を支えるアニメーターの仕事内容とは? 目指す上で知っておきたい作業の流れ、必要なスキルを紹介

原画制作

アニメーターは、キャラクターや背景などの原画を描く。原画とは、アニメーションにおいて各シーンで必要な絵を描いたもので、キャラクターの表情や動作、背景の風景や道具などを描く。

動画制作

原画を元に、アニメーションに必要な動画を制作する。この際、キャラクターや背景を細かく動かして、アニメーションの流れを作り出す。原画から動画を作り出すことを「動画化」という。

撮影監督

撮影監督は、アニメ制作の最終工程である撮影を指揮するのが主な仕事になる。撮影とは、各制作部署が制作した素材をまとめて、実際に放送されるアニメーションにしていく作業を指す。細かいチェックやリテイクなどを挟みつつ、最終的な完成へと向かっていく。

映像作品には欠かせない音の仕事

アニメに限らず映像作品を作るうえでは「音」も欠かせない要素だ。音楽、効果音、声など、さまざまな音を巧みに組み込むことが求められる。

音楽

作中で流れるBGMを作曲するスタッフ。劇伴作家、作曲家としてクレジットされることもある。
アニメのシーンに合わせた音楽を制作し、ストーリーやキャラクターの雰囲気や感情を表現するのが仕事だ。監督をはじめとしたスタッフと連携し、ストーリーやキャラクターに合わせた音楽を制作。ときにはオープニングやエンディングに流れるテーマソングを制作することもある。

音響監督

音響監督は、アフレコや効果音のほか、BGMなどアニメーションに使われる「音」のすべてをディレクションする役割を担う。声優を選定したり、アフレコで演出を付けるのも音響監督の仕事だ。

音響効果

音響効果は、アニメのさまざまな場面に効果音を入れていくスタッフ。劇伴作家が制作したBGMとアニメーションを組み合わせる仕事を任されることもある。

声優

声優は、アニメに登場するキャラクターに声を吹き込む仕事。誰がどのキャラクターを担当するかは、オーディションによって決められるケースが多い。時には動物など人間以外の存在を演じるケースも。街中や学校内の雑踏を再現する「ガヤ録り」に参加することもある。

絵が描けなくてもできるアニメの仕事

ここまではアニメを制作するスタッフを紹介してきたが、作るだけではファンに届けることはできない。ここからは未経験の人でもできる、アニメを世に送り出す仕事を紹介する。

宣伝

宣伝スタッフは、作品を多くの人に知ってもらうため、数々の宣伝施策を打ち出すのが主な仕事だ。
メインビジュアルや公式サイト、PV(プロモーションビデオ)の制作にも携わるほか、雑誌やWEBの広告も担当する。キャストが出演する特番をセッティングするのも仕事の一つだ。

また、作品に関する情報コントロールもひとつの仕事と言える。キャストやスタッフを解禁するタイミングを決めるのだが、このときネタバレを回避するよう解禁内容を精査する。

宣伝は1人のスタッフがすべてを請け負うことは少ない。宣伝プロデューサーのもと、複数のスタッフがチームとなって行動する。

ライセンス

ライセンスを担当するスタッフは、アニメの権利(ライツ)を駆使し、国内での商品化や映像配信・番組販売などを行う。会社によってはアニメのキャラクターを世の中に広めるため、玩具商品、ステーショナリーグッズ、ゲームなどの商品へのライセンス許諾・監修業務を行う。

WEB制作

WEB制作は、アニメの情報をまとめた公式サイトなどを作成するスタッフを指す。サイトを新しく制作するだけでなく、WEBサイトのリニューアルやコンテンツを追加したり、実際にサイト上に表示させるためにHTML・CSSを用いてコードを作成する仕事が含まれる。

企画立案からグッズ販売まで…アニメにかかわる仕事は多岐にわたる

本稿で紹介したアニメにまつわる仕事はほんの一部にすぎない。作品によっては3DCGを駆使する仕事もあるし、専門の知識を要する場合もある。例えば、音楽をテーマにした作品なら楽器、戦争がテーマなら銃器…といった具合に、アニメとは直接関係ない知識がストーリーや設定に活かされることは珍しくない。

制作される作品数が爆発的に増えた現在、その現場に携わるチャンスも増えたと言っていいだろう。

AnimeRecorder編集部
岸由真