『魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?』小林裕介さん、市ノ瀬加那さんにインタビュー。「ラブコメ要素を濃縮した作品」

TVアニメ

2024年4月よりTOKYO MX、MBS、BS朝日にて放送開始予定のTVアニメ『魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?』。本作は、2017年よりHJ文庫にて刊行がスタートした、異世界ファンタジー×王道ラブコメ。作りこまれた世界観やキャラクター、進展を見守りたくなるような共感性の高いラブコメ要素が高い支持を受けている作品だ。

今回、本作で人々に恐れられる魔術師・ザガンを演じる小林裕介さん、ザガンに競り落とされたエルフ・ネフィを演じる市ノ瀬加那さんにインタビューを実施。ファンタジー世界でのラブコメをどのように表現したのか、さまざまな質問をぶつけた。

ラブコメや家族愛…他のファンタジー作品にはない広がり

――本日はよろしくお願いします。まず、原作を読んでみての印象はいかがでしたか?

小林さん:最初にタイトルを見たときから直感的に「ラブコメかな」と思いまして、実際読んでみたらラブコメは充分にあり、想像通りの面白さでした。それ以上に僕が面白いと思ったのが、ザガンが徐々に魔王となっていき、その過程でさまざまな問題や、戦いが巻き起こるんです。その合間にラブコメや、家族愛のストーリーも展開していく、ファンタジー作品だけど、なかなか他にはない広がりを見せてくれる作品だと感じました。

市ノ瀬さん:原作はオーディションのときに読ませていただいて、ザガンというキャラクターのモノローグとセリフのちぐはぐ具合が面白くて(笑)。本当思っていることを上手く表現できない、不器用なところがとても愛らしいキャラクターだと感じました。ネフィとのやり取りは緊張感の中に初々しさもありますよね。

――ファンタジー作品であると同時に、かなりラブコメ要素も強い作品ですよね。

市ノ瀬さん:そうですね、第1話のアフレコでは、音響監督や監督の方に、「ギャグとシリアスの切り替えが大事な作品」と言われたのは覚えています。
シリアスになるときは、私自身もネフィの過去に向き合います。だけどコメディ要素も突然挟まってくるので、その幅は広いですね。

小林さん:僕は監督から、「もっと面白くしていいよ」と言われました。

小林さん:モノローグと相手に伝えるセリフの切り替えをはっきりして、ギャグのときはギャグにしていいと。あとはシリアスな場面でも、「かっこよくしなくていい」と言われたのを覚えています。
僕は最初、シリアスな場面では低音を頑張って出さなければと思っていたんです。しかし実際は、かっこよさよりもちょっと影がある感じを出してほしいと。そこは全話通して守るように意識しました。

――作品のストーリーや世界観にはどんな魅力を感じましたか?

小林さん:ラボコメ要素が多いものの、実は世界の危機が迫っており、さらに「そもそも魔王とはなんなのか」といった布石も随所に散りばめられていて、謎が多い世界観ですよね。
あとは、オークションに出されている奴隷などはファンタジー世界によくある設定ではありますが、そのひとつひとつに細かい設定が含まれているんです。それが作品の奥深さに繋がっていると同時に、原作者の方の遊び心も感じれられていいですね。

市ノ瀬さん:私がまず思ったのが、登場人物一人ひとりがすごく温かく、ひとつのやり取りがとても丁寧に感じられるんです。
「こういう人たちが周りにいたら楽しいだろうな」と思わせてくれる世界観で、もちろん重たい設定や、シリアスな展開はありますけど、それ以上に日常の温かさが強調された作品だと思います。

――小林さんが演じるザガンは、心情と実際の言動のギャップがあるキャラクターじゃないですか。このギャップに関して、演じ分けはどのように考えていましたか?

小林さん:ザガンは人付き合いをまったくしてこなかったがゆえに出てくる不器用な面であり、モノローグの部分はすべてを取っ払った本来にあるべきザガンの姿だと考えています。
きっと人見知りを発揮して戸惑ってしまう心の声というのが、本作におけるモノローグなんです。

だから、モノローグこそ、あまり縛られないなるべく自然な演技を心がけました。その分、人と話すときはキリッと声をしっかりと出せれば、コントラストができるかなと。
ただ本当に大変だったのは、モノローグとオンの芝居を別々で録らず、ひとつの流れで収録したんです。それは…「鬼だな」と思いました(笑)。
音響監督の山田さん(山田 陽氏)とは初めて仕事をさせていただいたので、普段もこうなのか、それとも面白がっているのかは分かりませんけど(笑)。演じていて、役者力を試されているなと感じました。

――市ノ瀬さんは、小林さんの声が付いたザガンにどんな印象を持ちましたか?

市ノ瀬さん:まず、小林さんが低い声のキャラクターを演じているのがすごく新鮮だったので、「こういう小林さんのお芝居もいいな」というのが第一印象でした。
コミカルな面でも、真剣でかっこいい面でもだったりのザガンの良さ声に乗せているので、私自身も演じていてとても安心感がありました。

――そんな市ノ瀬さんが演じるネフィはピュアで、思ったことを全部言葉にするタイプじゃないですよね。なにか演じる上でのアプローチは考えましたか?

市ノ瀬さん:演じる際にハードルが高いな…と感じることがあって、原作ではネフィの声に対して「なんて可愛い声なんだ」「鈴を転がすような声だ」といった描写が何度か出てくるんです。
それも事前に読んでいたので、最初のころは「鈴ってどういう声なんだろう」と思いながら演じていました(笑)。

アフレコを進めていくうちに、自分自身でもネフィのかわいらしい部分を徐々に知ることができて、その中で自然と出来上がった声という感覚があります。
ネフィは過去にオークションに出されている、思い人生を背負うキャラクターで、それがザガンといることによって本来の素直な感情を取り戻していくんです。ザガンと話した内容とか、してもらった行動とか、ひとつひとつに新鮮味を感じるお芝居を意識しました。

小林さん:「鈴を転がすような声」という一文は、まさに市ノ瀬さんのことだと思いましたよ(笑)。

市ノ瀬さん:いやいやいや…ありがとうございます(笑)。

小林さん:これまでも共演することは何度かありましたけど、声の柔らかさ、透明感はずば抜けている方なので、ネフィにもぴったりだと思いました。ネフィが徐々に心を開いてくれる様子も手に取るように分かって…庇護欲みたいなものが芽生えますよね。

ザガンとネフィ、2人の距離感にも注目

――ザガンとネフィの掛け合いという点では、なにか意識されましたか?

小林さん:見た目以上に距離感を近づける演技は意識しました。というのも、相手が遠くから声を張り上げていたら、こちらも大きな声で返事をするじゃないですか。だけどネフィは基本的に声がか弱く、実際の距離感での話し方だとチグハグになってしまうと思ったんです。
なので、アニメ上の嘘をつくとでも言うんですかね。ちょっと声の音量を下げて、本当に相手が目の前にいるような喋り方にしたんです。

市ノ瀬さん:他のキャストの方々と一緒に収録すると、小林さんと離れたマイクになってしまう場面もあるんです。そうなると掛け合いも難しく感じるので、そんなときでも普段と同じ距離感で、隣りにいるような演技を心がけました。

――ザガンやネフィの行動、セリフで共感できる部分はありましたか?

市ノ瀬さん:私、実はザガンのほうに共感敵るんです。それこそモノローグと実際に喋ることが違うのって、私もそうなんですよ。緊張しているときについつい考えていることとは違うなにかを口走ってしまったり、微妙なニュアンスの違いで相手に伝わらなかったりといった経験があるので、「私みたいに不器用なんだな」と思いながら見ていました(笑)。

小林さん:それだと僕はネフィのほうが近いかも(笑)。自分では裏表なく素直に言葉にするタイプだと思ってます。
あと、周りの人が言うには怒ると怖いらしくて…(笑)。ネフィもザガンが傷ついたときには怒るじゃないですか。ひょっとしたら、そこも近い部分があるのかも。

――ちなみに、本編の映像を実際に見ての感想はいかがでしたか?

小林さん:やっぱりネフィがかわいいですよね。

市ノ瀬さん:ネフィは耳が動くシーンが度々あって、それは特にかわいいです。

小林さん:ギャグシーンの表情が思った以上にギャグ顔なのも印象的でした。僕たちもギャグとシリアスのメリハリは気にしながらの演技でしたけど、それはアニメーションも同じでしたね。

市ノ瀬さん:確かに、実際見ていても、ここまでコメディに振り切るものなんだってちょっと驚きはありましたよね。

小林さん: バルバロス役の谷山紀章さんは、ある意味、「このくらいやっていいんだぜ」と僕たちに示してくれましたね。「ギャグのときはそこまで振り切るのか」と毎回驚かされて、だけど全部OKになって、すごい作品だなって(笑)。

市ノ瀬さん:たぶん、原作を知っている人もバルバロスには驚くと思います。

――最後に、作品を楽しみにしているファンへ一言お願いします。

小林さん:今回の作品は、ラブコメの要素がすごく濃縮されているので、それを見てニヤニヤしてもらいたいなと思います。ストーリーが進むと、そんなニヤニヤの要素どんどん分散して、新しく登場するキャラクターたちもかわいらしく見えてくるんです。いろんなニヤニヤを体験できるアニメだと思いますし、ファンタジー作品としての冒険を楽しみたい方にとってもおすすめできる作品です。

市ノ瀬さん:ザガンとネフィの心の距離の縮まり方がすごく素敵な作品なので、2人のやり取りをじっくりと楽しんでもらえたらと思います。
現実では味わえないようなキュンとする出来事が詰まっていて、心が温かくなるし、ちょっとムズムズするところも楽しんでもらえたら嬉しいです。

 

©手島史詞・ホビージャパン/まどめ製作委員会