映画『化け猫あんずちゃん』AnimeJapan 2024「クリエイションステージ」に久野遥子・山下敦弘のW監督が登場

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3月23日(土)のAnimeJapan 2024「クリエイションステージ」に、本作より久野遥子監督、山下敦弘監督、近藤慶一プロデューサーが登壇した。
今年のAnimeJapanより新設された「クリエイションステージ」。アニメ業界で活躍する「クリエイター」が登壇する本ステージで、俳優・森山未來を起用した“ロトスコープ”のアニメーション技術や日仏合作についてなどを語った。

いましろたかしによるカルト的人気を誇る漫画「化け猫あんずちゃん」。本作の映画化について「10年ほど前に山下監督の『苦役列車』の助監督をしていて、事務所に『化け猫あんずちゃん』のコミックスが置いてあり、今までに読んだことのない漫画だなと思いました。翌日、なぜ事務所に置いてあったのかを山下監督に聞いたら『誰かの目に止まればいいなと思って僕が置いたんだよ』と言っていて、それ以来、映像化できたら面白いなと漠然に思っていました」と近藤プロデューサーが企画の経緯について解説。
もともと原作漫画のファンだという久野監督は、「世の中の塩辛い部分を描いている一方で、弱さそのものは認めて愛おしく思っているような漫画で、そういった塩辛さと優しさが両方ある漫画は珍しいなと思いました。コミックボンボンで連載されていたので、子供向けになっている一方で、厳しい部分もしっかり描かれていて、不思議なバランスがすごく魅力的な漫画だと思っています」とその魅力を語り、山下監督は「いましろたかしさんの大ファンで『ハードコア』も実写化しています。どの漫画も好きなのですが、『化け猫あんずちゃん』に関しては子供向けに描いたというのもあるかもしれないですが、一番映像化しやすい作品だなと思い、ずっと映画化したいなと思っていました」とかねてより映像化を狙っていた思いを明かす。

ロトスコープという、実写の映像をもとにアニメ化する手法で作られた『化け猫あんずちゃん』。あんずちゃん役に俳優・森山未來を起用した実写パートの撮影にあたって山下監督は「お芝居をアニメっぽくしようとかは考えていなかったので、通常の実写映画の撮影と基本は変わりませんでした。森山くんは俳優としても素晴らしいのですが、ダンサーとしても素晴らしく、身体能力がすごい方なので、原作にはない猫的な動きを森山くんだったら色々相談できるかなと思っていました」、久野監督は「実写を単純に絵にするだけだと、リアルになりすぎてしまい、大きな表情でもなんとなく小さく感じる表情になってしまったりします。なので、アニメにした時に役者さんの熱量を下げないように、実写と絵のテンションを同じようにすることを一番大事にしました。森山さんは身体能力がすごいので、猫みたいな動き、足で耳を掻く動きとかも実際にやってくださいました」と共に森山を大絶賛!森山の確かな演技力と身体能力がいかにあんずちゃんに活かされているのかへの期待を煽る。

また、日仏合作となった本作について「フランスのMIYUプロダクションから久野さんへ作品作りのオファーがあり、久野さんが『化け猫あんずちゃん』を作りたいと逆プレゼンをしてくれました。そして改めて僕が企画書をお送りして、この映画を一緒に作ろうとなりました。今回は、色彩周りや背景をフランスの方で作業してもらいました。出資だけではなく、せっかく一緒に作品を作るのならちゃんと大事な部分を担ってもらおうとなりました」と近藤プロデューサーが経緯と役割分担を、「MIYUプロダクションにはカラーボードを作っていただきました。美術監督の方が、ポスト印象派の画家・ボナールの絵がイメージにあると言っていて、絵画的なバランスや、柔らかい感じ、印象派的な光の感じがとてもあんずちゃんの世界にあっていたと思います。紫と黄色が画面のなかで大事にされているようで、それが私としてはフランスっぽい色味に感じられて、日本の風景でありながら、ヨーロッパっぽくなっています。日本には日本の美術の良さがあると思いますが、これはフランスのスタッフにしか出せない世界で、見るたびに楽しくてしょうがなかったです」とフランスらしい独特の色彩で描かれた本作の魅力を久野監督が解説する。

トークセッションの最後には、近藤プロデューサー「久野節、山下節が炸裂している映画ということが伝わったかなと思います。7月の公開を楽しみにしていただければと思います」、山下監督「アニメの監督をするのは初めてで、参加させてもらえてとても良かったと思っているのと、すごい作品ができちゃったなと思っています。一本の映画としての強度がすごく強い作品だと感じているので、大きいスクリーンで観ていただきたいです」、久野監督「普通にアニメを作っていると、どうしても一人の頭の中で考えただけのことに頼らないといけないことがあるのですが、今回は役者さんの息使いがあって、山下さんがそれを撮影し、それが絵になって、そういう多層的というかいろんな色が混ざっていて、本当に見たことが作品になっていると思います」とそれぞれ映画『化け猫あんずちゃん』への期待を魅力をアピールし、イベントは終了となった。

いましろたかし・講談社/化け猫あんずちゃん製作委員会