異修羅

▼あらすじ

地平のすべてを恐怖させた魔王が打ち倒され、破滅に怯える必要がなくなった時代。
未来に夢を⾒ることができるようになった今、少⼥は理不尽な暴⼒の渦中にいた。

素晴らしかった景⾊はもはやなく、都市も、草花も、全てが燃えている。
⽣きながら解体されていく親友の苦悶の断末魔を聞きながら、少⼥は逃げ出した。
親しい誰かが死にゆくとき、⾃分が無⼒でいること以上の絶望があるだろうか。

しかし、少⼥の前にふらりと現れた⼀⼈の剣⼠が、絶望を、抗うことのできなかった理不尽を、たった⼀振りのなまくらで、いともたやすく斬り伏せてしまった。

「――柳⽣宗次朗。このオレが、地球最後の柳⽣だ」

この世界には、あらゆる“⼒”の頂点を極め、「最強」の名を戴く者たちがいる。
剣⼠もまた地平に蠢く無数の、“修羅”の⼀⼈。
魔王亡きこの世界で、なおも闘争を求める、その⼀⼈⽬に過ぎない。

――そうか、私はこの男が、“強者”が許せないんだ。

幾度も命を救われたにも関わらず、少⼥に芽⽣えた⾒当違いな感情。
しかし、すべてを失った少⼥には⾃分⾃⾝を⽀えていく理由が必要だった。

――この男を殺す。この世界には、それができる“強者”がいる。

理不尽な“強者”たちへの憎悪を⽀えに、少⼥は剣⼠と共に歩き出す。
「最強」を殺す旅路は、そうして始まりを告げた。

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