声優になるために必要なことは?専門学校や養成所などの選択肢と、今からできることを紹介

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TVアニメや映画など、多くの映像作品で欠かせない存在になっている声優。キャラクターに声を吹き込むだけでなく、ナレーションや音楽活動、CMへの出演など、活躍の場は年々増している。

そんな声優に憧れて、目指す人も増えている。2022年11月には「インボイス制度見直しを求める記者会見」が行われ、その中で声優という職業に就いている人は1万人を超えているとも伝えられた。その一方で、声優になれる人はやはり一握り。アニメなどの第一線で活躍できる人はさらに限られてくる。

本稿では、声優になるための方法、そして必要なスキルを解説していく。

そもそも声優とは?

声優の仕事内容は非常に多岐にわたる。まず、アニメや映画での声の演技が一般的な声優の仕事だ。また、ゲームにおける声優の仕事も重要。ゲーム内のキャラクターやナレーションの声を担当し、プレイヤーに臨場感や感情の伝える。ゲームと言ってもその内容は様々で、すべてのセリフを話すフルボイス、一部の音声を収録するパートボイスなど、収録の内容も作品によって異なる。

さらに、テレビ番組のナレーションやラジオ番組のパーソナリティとして活躍する声優も増えてきた。自身の声やトーク力を生かして、リスナーとのコミュニケーションを通して番組を盛り上げていく。番組の進行やゲストとの対話、リスナーからのメッセージ紹介など、アニメやゲームの収録とは違った能力が求められる。

向いている人、向いていない人

一般的に声優は、演技力はもちろん、感情表現が豊かであることが重要だと言われている。また、コミュニケーション能力の高さも重要な能力のひとつ。声優は演技を通じて他の声優やスタッフと協力し、チームで作品を作り上げるため、コミュニケーション能力が高く、協調性を持っている人は好まれる。さらに、普段の会話がそのまま演技に生かされることもある。

逆に話し方が下手で、表現力が乏しい人、演技力がない人は声優に向いていないことになるが、演技力はレッスンを通して成長する可能性がある。また、声優に必要なスキルは多岐にわたり、例えば英語などの外国語が話せるのならば、それは大きな武器になる。声や言葉に関する強みを活かすことが特に重要だ。

さらに、ドラマCDや海外吹き替え、歌手活動など、活躍の場は広がっている。

専門学校にオーディション、あるいは…? 声優になるための方法・なり方を紹介

プロの声優になるためには狭き門を突破する必要があるものの、その一方で多くの入り口が用意されている。一般的には専門学校が有名だが、現役の声優を見てみると、社会人を経験した人もいれば、アイドルや俳優など芸能界から転身したケース、アマチュアから事務所のオーデションを受けて合格した人もいる。

ここからは、声優になるための代表的な方法を5種類紹介する。

声優専門学校に通う

代表的な選択肢は、やはり声優の専門学校に通う方法だ。声優の専門学校はアミューズメントメディア総合学院、代々木アニメーション学院などが有名で、一般的に2年で修業を終える。

専門学校の魅力は、発声練習など基礎の部分から勉強ができるため、未経験者でも安心して入学できる点だ。願書の提出のみで、比較的簡単に入学できるのもポイントのひとつ。また、オーディション対策など、就職に向けたサポートも行ってくれるのは専門学校ならではの特徴と言える。

養成所に通う

声優の養成所とは、主に声優プロダクションが直接運営している養成学校のことを指す。プロダクション・エース演技研究所、日本ナレーション演技研究所、青二塾、81ACTOR’S STUDIOなどが有名な養成所として挙げられる。

専門学校との大きな違いは、講義の頻度と入所の難しさがある。専門学校は週5日通うことになるが、養成所は週に2~3日程度。空いた時間を他の学業やアルバイトに利用できるのは、養成所の魅力のひとつだ。

その反面、入所するにはオーディションを受け、合格する必要がある。願書だけで済む専門学校とは違うハードルの高さは、養成所を目指す上で注意したいところだ。また、オーディションに合格していることが前提の講義になるので、レッスンの内容は上級者向けに設定されている。

芸術大学に通う

一見遠回りにも見えるが、芸術大学から声優の道へ入っていく選択肢もある。芸術大学の場合、声優としてのレッスンのみを受けるわけではない。俳優やダンサーなど、演技に関するさまざまな職業に関する講義を受けることになる。また、実践的なレッスンだけでなく、演技に関する座学が多く取り入れられるのも特徴だ。

専門学校との違いは、卒業までに4年以上かかる点が挙げられる。その一方で、声優以外の演技に関する勉強ができるのは大きな強みと言えるだろう。

声優 e-Learning システムを活用する

盛り上がりを見せているのが、声優養成e-ラーニングシステム「SPOT」だ。“いつでも、どこでも、誰でも” 声優を目指すことができる、新しい声優への道として開発されたもので、2020年に開講すると、これまでに約400人が受講した。

自分の好きな時間にパソコンやスマホで現役声優とのマンツーマンレッスンを受けられるのが大きな魅力。費用も専門学校や養成所とは異なり格段にリーズナブルで、月で換算すると塾や習い事と同じ程度で受講できる。

しかし、プロの声優を排出した実績はまだまだ少ないのも事実。2023年冬季声優オーディションでは、預かり所属合格が2名、養成所合格・入学金免除が4名、そして養成所合格は該当者なしという結果になっている。まずはe-ラーニングを利用して基礎的なトレーニングを行い、その後養成所へ進むという選択肢もあるようだ。

オーディションを受ける

アニメの制作会社や声優事務所が、一般公募のオーディションで出演者を決めるケースもある。これに合格すれば、無名の新人であっても、アニメに出演したり、その主題歌を担当したりといった活動が可能になる。

一般オーディションの利点は、演技に関する知識がなくても確実に挑戦できる点だ。確かな技術と自信があれば、応募して見る価値は十分にある、ただし、専門学校に通っている学生や、過去に声優としてキャリアを積んでいる人が応募する可能性も考えられる。強力なライバルを相手にすることを考えると、未経験者にとっては難しい選択肢と言える。

中には、事務所に所属していないこと、未経験者を条件にしているオーディションもあるため、合格率を挙げたいなら狙ってみるのもいい。

今からできること

本格的なレッスンは専門学校や養成所に入ってから習得するケースが多いものの、入学前からできることも数多く存在する。

発声練習

声を使う職業にとって、基礎とも言える発声練習。特に、腹式呼吸を使った発声は声優や歌手、アナウンサーには必要不可欠だ。

腹式呼吸とは、肺の下にある横隔膜を上下させることによって肺を引っ張り、肺を縦に引き延ばすことで空気を入れて呼吸する方法。お腹をへこませたり、膨らませたりすることを意識することが大切だ。

腹式呼吸を行うことで、息がより長く続くようになり、長いセリフを話せるようになる。また、喉への負担も少ないことから声優を長く続けるためには常に意識していきたい。

音読

声優は与えられた台本に書いてあるセリフを丁寧に読み上げることが基本の仕事になる。それを普段から体に馴染ませるためにも、本の音読は有効なトレーニング方法のひとつ。発声の練習になるのはもちろん、小説であれば、キャラクターの感情を想像しながら音読すれば演技の練習にもつながる。

コミュニケーション

普段から何気ない会話をハキハキと行うことも、声優にとって重要な練習だ。相手の言葉にどんな反応をするか、こちらから話すときどんな表現をするか。これらを普段から意識して会話すると、仕事現場で活かされる機会も増えてくるはず。

また、会話のボキャブラリーを増やしておくと、アニメや映画だけでなく、ラジオパーソナリティなど活躍の場は増えていく。

収入、職場の環境は?

ここからはプロの声優としてのキャリアが始まってからの話になる。声優の給与は成果に対応した歩合制で支払われることがほとんどのため、どんな仕事を、どのくらい受けたかが重要になってくる。収入の仕組みや、働く環境についても見ていこう。

アニメに出演すると、どのくらいの収入になる?

アニメに出演した際の報酬は作品ごとで異なるものの、30分作品1話につき15,000円~45,000円と言われている。また、声優はスキルやキャリア、人気などに応じて報酬が変化するケースがある。新人から3年目までは「ジュニアランク」扱いで報酬も少ないが、4年目以降は徐々にランクが上がり、それに合わせて報酬も増えていく。
とはいえ、新人時代はアニメの仕事を受けることはなかなか難しい。アルバイト収入を足さないと、生活するのも厳しいという人は少なくない。

ゲームの場合は1文字単位で報酬が決まることが多い。ラジオパーソナリティは作品の知名度アップを目的とした場合が多いため、報酬も低めに設定されがちだ。意外と高めの報酬が設定されるのはナレーションの仕事。CMナレーションにもなると、新人であっても10万を超える金額になることも。

声優の働き方と環境

声優は会社員と違い、労働時間が決まっていない。時には夜遅い時間に収録することもあるし、休日にイベントの仕事が入ることもある。一回の収録は、30分アニメだと最低3時間程度、長いときは5~6時間になる。映画など2時間近くの作品になると、収録は10時間かかることもある。NGを出してしまったり、機材にトラブルがあったり、納期が迫っている場合は、さらに長時間の収録になることも。

こうなると気になるのは、休日はいつ取れるのか。これは所属事務所の方針によって大きく変わり、スケジュールを調整してくれる事務所、多くの仕事を詰め込む事務所の療法が存在する。専門学校から事務所へ入る場合は、労働環境についてもしっかりと調べておきたいところ。

声優業界の将来性

アニメをはじめ、声優が活躍する場所は年々増えており、テレビ番組やCM、雑誌などで取り上げられる機会も多くなった。さまざまなメディアで活躍できるチャンス、以前よりも拡大しているのは間違いない。また、一度スキルを身につければ、高齢になっても活躍の場があるのは魅力の一つと言える。

下積み時代に何を学び、どう過ごすかが重要

声優としてのキャリアは千差万別だが、共通して言えるのは、下積み時代に何を学び、どう過ごすかが重要なことだ。それだけに、学生時代にどこで学ぶか、その後どんな事務所に入るかは慎重に選んでいきたい。

そして、専門学校や事務所のサポートがあったとしても、最後にチャンスを掴めるかは本人次第。普段からトレーニングを欠かさず、知識を深め、そして小さい仕事でもしっかりと受けていくことが重要だ。

AnimeRecorder編集部
岸由真