主人公のサラは恐れを知らない無邪気を持つ少女―Netflix『エデン』で初主演の高野麻里佳さんにインタビュー

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2021年5月27日より配信が始まる、Netflix オリジナルアニメシリーズ『エデン』。本作は、ロボットしかいない自然豊かな世界<エデン>を舞台に、2体のロボットに愛され育てられたサラが世界に隠された謎に立ち向かうSFファンタジーだ。

本作で主人公のサラを演じるのは高野麻里佳さん。高野さんといえば『デジモンアドベンチャー:』の太刀川ミミ役、『ウマ娘 プリティーダービー』のサイレンススズカ役などのメインキャラクターを演じてきたが、主演となると今回が初めてのこと。そんな高野さんは本作にどう向き合ったのか、インタビューで伺った。

目指したのは、ロボットたちの世界で描かれる”普通の少女らしさ”

――まず、『エデン』への出演が決まった時を振り返っていただけますか。

『エデン』との出会いは仮収録のキャストとして呼ばれたのが始まりで、演じながら本キャストとして選ばれるのかな、というドキドキ感が強かったのを覚えています。主人公を初めて演じさせていただくということでプレッシャーもありましたが、それ以上に責任感が芽生え、前向きな気持ちで役と向き合うことができました。

――主演という肩書は今回が初めてとのことですが、これまで演じてきたキャラクターと意識の違いはありましたか?

ただただ緊張しました(笑)。でもスタンスは変わらなかったと思います。主演でもモブでもその作品の一部だし、そのキャラクターを通して作品の世界をいかに見せていくかだけを常に意識しています。それに入江監督とは以前『灼熱の卓球娘』でご一緒したこともあったので、そういう意味でも心強かったですし、必要以上のプレッシャーを感じることはありませんでした。

――高野さんが演じた、サラというキャラクターに対してはどのような印象をお持ちですか?

私自身は台本を読んだとき、ロボットに育てられたとはいえ普通の少女だなと感じました。それが意外でもありましたし、真っすぐで天真爛漫に育ったサラを見ると「やっぱり子供はこうあるべきだよな」と考えさせられました。

それと危機的な状況を危機だと感じていない部分があって、傍から見るととても危うい行動を取るんですけど、恐れを知らず、なんでもできてしまう。これもまた少女らしさなんだと思います。ひょっとしたら、両親がロボットだから「こんなことをしたら人は傷ついてしまう」とか、人と接して覚えることができなかった影響なのかもしれませんね。

――そんなサラに共通点を感じたところはありますか?

私自身は共通する部分があまりないと思います。私はどちらかというと慎重で、周りの目を気にしちゃうタイプなんです(笑)。サラは自分のやりたいこと、興味のあることに真っ直ぐ突き進むタイプなので、憧れを感じます。

――共通点がないとなると、演じることに難しさもあったのでは?

確かに、普通の少女らしさを出すにはどうしたらいいだろうとは考えました。サラが真っ直ぐな女の子に育ったのは、ロボットの両親がまるで人間のように接したからだと思うんです。だからサラ個人だけでなく、作品の世界全体を見ながらイメージしていきました。

――実際に演じるとき、監督やスタッフからなにかディレクションを受けましたか?

今回はプレスコ収録で、映像が出来上がる前だったこともあってアクションシーンの動きは細かく教えてもらいました。だけど役柄としてのディレクションはほとんどなくて、台本を読んだときのファーストインプレッションと、監督とのフィーリングがバッチリ合ったのかなと思います。

――作中ではサラの成長も描かれますが、そこで意識したことはありますか?

赤ん坊のころから演じましたし、年齢感は確かに意識したところです。一番難しかったのは大人になる一歩手前の年齢層ですね。子供ではないけど、大人にもなりきれてない少女を演じるために声の質感はもちろん、発声にも気を使いました。

――演じ方だけでなく、声の出し方にも違いがあると。

例えば子供の場合は体が小さいので、息が浅くなるんです。その浅い息を目一杯使って声を張り上げるのが、私なりの子供の演じ方です。なので、普段から子供はどうやって声を出しているのかをチェックしたり(笑)。日頃のインプットが、この作品で引き出せたんじゃないかと思います。

――ロボットに育てられたという設定は、演じ方に影響ありましたか?

恐れを知らない無邪気さ、みたいなものは意識しました。人と接したことがないから、人が傷つくこともついつい口走ってしまうような無邪気さですね。でもそういう一面は、子供の頃は誰もが持っているものだと思うんです。ちっちゃいころは「自分が最強!」と思っちゃって、誰かを傷つけたあとでようやく気づいたり、あるじゃないですか。

だから意識したことというと、ストーリーや設定に左右されず、あくまでも普通の少女、普通の子供であることです。現実の子供と同じように人を傷つけてしまうし、そこから学ぶこともできる。基本になる部分は、どこにでもいる女の子でした。

――高野さんがSF作品に出演するのは決して多くないと思います。このジャンルに対する印象はいかがですか?

SFと聞くとどうしても難しいイメージが先行してしまって、知識がないと楽しめない、苦手意識みたいなものがありました。ただ、『エデン』と出会ってから印象がガラッと変わりました。登場するロボットは温かい気持ちにさせてくれるし、見ていて微笑ましくなる作品です。

――『エデン』では伊藤健太郎さんや氷上恭子さん、山寺宏一さんと共演していますが、収録時の様子はいかがでしたか?

氷上さんが皆さんにお菓子を配っていて、本当にお母さんみたいだなって(笑)。あと、山寺さんが1シーンだけ別収録の箇所があって、私も後ろから見学させてもらったのですが、山寺さんは自分の水筒で飲みながら収録していたんです。それがすごく繊細な演技で、「なんてプロフェッショナルなんだろう」と驚かされました。私では実際に水を飲んでも自然な音を出せないと思いますし、素敵でした。

――今回は映像より先に声を収録するプレスコ収録とのことですが、難しさは感じましたか?

すごく難しかったのは、話し相手であるロボットがどれくらい大きいのか分からなかったことです。人間と違う大きさであることは想像できますが、どのくらいの声量にすればいいのか、あとは話しかけ方とかは手探りの状態でした。

――話しかけ方というと?

『エデン』に登場するロボットは常に一定のトーンで喋るので、サラもそれに影響され、真似たほうがいいのか、それともあくまで人間らしく振る舞うべきなのか、その塩梅も細かく調整していました。

――高野さんが印象に残っているシーンはありますか?

ロボットがお休みするときに「よい充電を」と声をかけるのがとてもかわいらしくて印象に残っています。ロボットならではの言葉であると同時に、ロボットだからこその愛情も感じましたね。
あとはなんといってもサラが赤ん坊のころ。ゲップとか、おしめを替えたりとか、ロボットと人間ではこうも感じ方が違うのかと驚きましたし、あの場にいる全員に愛着が湧く一幕でした。

――本作では絆がテーマになっていますが、実生活で絆を感じた瞬間はありますか?

自分の祖父が応援隊長で、雑誌に私が出ていれば付箋を貼って保存してくれるし、写真集のポスターを額縁に入れて客間に飾っているんです(笑)。私自身は恥ずかしいんですけど、祖父のことはとても誇らしいです。自慢に思ってくれるのはとても温かいし、家族の絆というのは感じますね。

――家族に支えられているというのは、『エデン』の世界観に通じるものがありますね。

もともと声優を目指したきっかけが小学生のころ、母に音読を褒められたからなんです。学校の宿題で、そこまで気持ちを込めなくても良かったはずなんですけど(笑)。でも、当時から聞く人に物語を楽しませようとする気持ちはあったのだと思います。母の「上手いね」「もっと聞かせて」という優しい言葉を今も覚えていて、それは今でも私の原動力です。

――2021年はソロアーティストデビュー、『エデン』での初主演と大きなトピックが続いています。2021年のここまでの感想と、今後に向けた意気込みなどがあれば教えて下さい。

『エデン』の収録自体は2017年から2018年にかけてだったので、満を持しての公開になりますね。アーティストデビューも声優デビュー7年目で満を持してだったので、奇跡的に噛み合ったのは驚きました。これから先は、支えてくれた皆さんに恩返しができるようにしていきたいです。

Netflixオリジナルアニメシリーズ『エデン
5月27日(木)より全世界独占配信

《STORY》
ロボットだけが暮らす世界「エデン」。農業用ロボット E92 と A37 はある日、サラという人間の赤ちゃんが入ったカプセルを偶然発見し眠りから目覚めさせてしまう。人が悪とされている世界でサラが危険だと考えた 2 体は、エデンの外で密かに育てていく。成長したサラは、ある日遠くから自分を呼ぶ声に気づく。それはあのロボットしかいないはずの「エデン」からだった─。

【スタッフ】
監督:入江泰浩(「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST」)
キャラクターデザイン:川元利浩(「カウボーイビバップ」)
脚本:うえのきみこ(「王室教師ハイネ」「クレヨンしんちゃんオラの引越し物語 サボテン大襲撃」)
コンセプトデザイン:クリストフ・フェレラ(「ひるね姫 ~知らないワタシの物語~」クリーチャーデザイン)
アートディレクター:クローバー・シェ(「上海バットマン」)
音楽:ケビン・ペンキン(「メイドインアビス」「盾の勇者の成り上がり」)
/プロデューサー:ジャスティン・リーチ(「イノセンス」)
アニメーション制作:CGCG

【キャスト】
サラ:高野麻里佳
E92:伊藤健太郎
A37:氷上恭子
ゼロ:山寺宏一