『特別編 響け!ユーフォニアム~アンサンブルコンテスト~』公開2日目舞台挨拶に原作者・武田綾乃、石原立也監督、小川太一副監督が登壇

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8月4日(金)より、全国劇場で上映中の『特別編 響け!ユーフォニアム~アンサンブルコンテスト~』について、公開2日目となる8月5日には新宿ピカデリーにてメインスタッフによる舞台挨拶が実施され、原作者の武田綾乃さん、監督の石原立也さん、副監督の小川太一さんが登壇し、貴重なトークを繰り広げた。

<以下、オフィシャルレポート>

まずは原作の短編集「響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のホントの話」に収録されたエピソード「アンサンブルコンテスト」が映像化されたことについて、自身も吹奏楽部に所属した経験のある武田さんが「アンコン(アンサンブルコンテスト)は吹奏楽部員の中ではかなりメジャーな大会なんですけど、あまり一般の方には知られていないので、アンコン編のアニメ化は史上初じゃないか」という驚きがあったと言い、「これで一般の方の知名度も上がって、吹奏楽部の子たちもうれしいんじゃないかな」と本作への期待を寄せました。その「アンサンブルコンテスト」が映像化に至った経緯を聞かれると、石原監督は「僕は忘れていることがいっぱいあるので……」と、小川副監督にバトンを渡します。

小川副監督によると企画が立ち上がったのは2年以上前で、もともとはシリーズ5周年を記念したドラマCD(「響け!ユーフォニアム」5th Anniversary Disc~きらめきパッセージ~)を制作した際に「アンサンブルコンテスト」も収録されるエピソードの候補に上がっていたそうですが、分量的にもボリュームがあり、なおかつ内容的にも映像化がふさわしいと判断して、このたびのアニメ化に至ったとのこと。時系列的にも2019年公開の「劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~」と2024年4月放送開始の「響け!ユーフォニアム3」のちょうど間に来る話ということで、映像化の企画が進んでいったとのことでした。

なお、この舞台挨拶に向けて事前にSNSでファンからの質問も募集していましたが、「今回のアンコン編以外に映像化候補になっていた話はありましたか?」という質問に対しては上記の話を踏まえて、小川副監督が「『響け!ユーフォニアム』では大人数での合奏ばかり描いてきたので、アンサンブルコンテストの少人数編成はまたカメラのフォーカスの仕方が違う、面白い見せ方ができるんじゃないかなと僕は思っていました」と答えます。「今回はつばめが登場するというところで、普通の部員にフォーカスを当てられたことに価値があったと思っています」と、作品の完成度に手応えも十分のようでした。

ここで今回の「アンサンブルコンテスト」を含むシリーズ全体を振り返る話になり、特に印象深いシリーズを聞かれた3人はそれぞれ「僕は『届けたいメロディ』(2017年公開)以外を選ぶわけにはいかないですね。初監督させてもらった作品ですし、それの元になっている『響け!ユーフォニアム2』(2016年放送)も印象に残っています。あすか先輩をもっと描きたいなと思ったりもするので」(小川)、「あえてひとつ選ぶとしたら『2』ですね。第1期のときは知らないことも多くて、ただがむしゃらにやっていたんですけど、『2』辺りで吹奏楽部の雰囲気とかも分かってきていたので、ちょうどやりやすい時期でした」(石原)、「私も『2』で、まずアニメの続きがあることに驚きがあって、うれしかったのと、今まで書いているなかで一番大変なキャラがあすかだったので、苦労したぶん映像になったときに鳥肌が立ったのが『2』でした」(武田)と答えていました。

また、アニメ化の企画が始動した時から10年近くの月日が流れているということで、この日は特別に石原監督が初期に取材した際に撮影した思い出の写真がスクリーンにて公開されました。アニメの舞台としてファンにはおなじみとなっている大吉山の様子を2014年6月5日に撮影したもので、「これは“あがた祭”の日に取材したときの写真です」と石原監督が説明すると、それを見た小川副監督も「10年も経つと宇治の景色もちょっとずつ変わっていたりしますよね」と感慨深げな様子。ところが何かを思い出したのか、「大吉山をせっかく登ってきたのに東屋の写っている写真が少なすぎます!」と石原監督に対して猛抗議。すると石原監督も「今『3』のコンテを描いていて、そのときに資料が足りないと文句を言われます」と応戦して、そんな二人の気の置けないやりとりからも制作現場の雰囲気のよさが伝わってきました。

こうして「アンサンブルコンテスト」の舞台挨拶に来ていても、頭の中には「3」のことしかないという石原監督。鋭意制作中の「3」に関しては小川副監督が「(シリーズ全体の)締めくくりというところで、僕らとしても気負っている部分があります。しっかり久美子の物語を終わらせてあげたいなという気持ちは大きいので、楽しみにしておいてほしいなと思います」と意気込みを語ってくれました。なお、この舞台挨拶の前日には原作シリーズの最新刊「飛び立つ君の背を見上げる」の文庫版が発売されたばかり。武田さんは「この本は『リズと青い鳥』を見て、インスパイアされて書いたような話です。皆さん夏紀好きだと思うので、ぜひ買ってください!」と会場のお客さんに向けてアピールしていました。

楽しい時間はあっという間に過ぎていき、イベントも終了の時間に。改めて登壇者の3名から「僕自身、1期の頃はあまり『響け!ユーフォニアム』に関わっていなくて、ここに副監督として立てていることが感慨深いです。ここまで続けてこられていることはファンの皆さんの声のおかげかなと思っていますので、京都アニメーションの総意として、ここで感謝を申し上げます」(小川)、「こうやって作品を10年近く続けてこられることは本当に稀だと思います。ここまでやってこられたのは皆さんのおかげなので、これからも『響け!ユーフォニアム』をどうかよろしくお願いします」(石原)、「アニメーションはもちろんですが、原作自体も応援してくださる方がいないと続いていないので、本当に得難い機会だなと思っています。これからも『響け!ユーフォニアム』シリーズは続いていきますので、応援していただけますと幸いです」(武田)というファンへの感謝の言葉があって、舞台挨拶は締めくくられました。

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会