『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』塩谷直義監督のインタビューが到着。「“システムに抗う人間に光を照らす”ことを意識

Blu-ray/DVD

7月15日(水)の「PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR」Blu-ray & DVD発売に先駆けて、3週に渡って連続インタビューが公開される。

第1弾は、「PSYCHO-PASS サイコパス」シリーズの監督を務める塩谷直義のオフィシャルインタビューが到着。企画の成り立ちや、主人公2人のキャラクターについて、音響作業やアフレコ収録の様子など、作品全体に渡る貴重なインタビューとなっている。

塩谷直義(監督)オフィシャルインタビュー

――「PSYCHO-PASS サイコパス 3(以下、PP3)」の完結を飾る「PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR(以下、PP3FI)」。「PSYCHO-PASS サイコパス」第三期となるTVシリーズは新人監視官・慎導灼と炯・ミハイル・イグナトフの物語となっていましたが、主人公を一新するというアイデアはどこから出てきたものなのでしょうか。あらためて企画の成り立ちからお聞かせください。

塩谷直義(以下、塩谷) 「劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス」(2015年公開)を公開しているころ、「次の展開について考えよう」とプロデューサー陣と話をしたんです。そうしたら「「PSYCHO-PASS サイコパス」シリーズは飛躍するタイミングじゃないか。新しいシリーズは、公安局の人間じゃなくても良い、それこそ少年探偵団でも良い」という話が出て。最初は戸惑ったんですけど、もしかしたらそれくらい発想を広げて、シリーズの最新作を考えるタイミングなんだなとも思ったんです。そこで第三期は主人公を新しくするという大きな舵を切ることにしました。新しい主人公を出す以上、これまでの第一期や第二期とは、時間軸を別にした作品にするべきだろうと。あわせて前作の劇場版と次のシーズンの間をつなぐ、「PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System(以下、PPSS)」を作りたいとプロデューサー陣に提案したんです。

――それで「PPSS」三作が、「PP3」の前に制作されたんですね。

塩谷 「PPSS」は制作現場としては「PP3」のテストケースでもありました。「PP3」は実写の海外ドラマを意識して、人間ドラマを深く掘り下げて描こうと各話一時間のフォーマットに挑戦する作品でもあったんです。「PPSS」は各それぞれ約60分の作品でしたが、1話30分枠のTVアニメを2話分作るのとは、作り方が全然違います。1時間の中で起承転結の山を作り上げる必要がありましたし、制作現場の負担も全然大きい。おかげで「PPSS」はかなりの制作期間を費やしましたし、そういうテストケースを挟みながらも、TVシリーズとして現場を動かすのは、やりがいはありながらも大変でした。

――今回、慎導灼と炯・ミハイル・イグナトフのバディをどう描こうと考えていましたか。

塩谷 いろんな意味で、でこぼこコンビにしたかったというのがひとつあります。灼は、戦闘能力がなさそうな非力な人物に見えてほしくて、身長も「PP」シリーズの中では低めの168センチ、対する炯は182センチなんですね。外見的にも、内面的にも対照的なバディを意識していました。灼が寝泊まりしている自宅ガレージには、いつも同じシャツがあって服装には無頓着。髪型も天然パーマなのか寝癖かわからないボサボサ頭で、何かに集中する力があるぶん、ほかのことが見えていないキャラクターにしたかったんです。一方、炯は生まれた国とは違う日本に来ていて、人種差別という不当な扱いを受けている。冷静沈着に見えるけれども実は抑制しているだけで、心には不満を溜め込んでしまうタイプ。そんな炯と灼が過去の共通した事件に縛られている。「PP3」は正反対の二人が支え合っていく物語なんです。

――「PP3」では音響作業はいかがでしたか。

塩谷 経済編、政治編、宗教編の三部構成にしたこともあり、音響スタッフからは「一本ごとが劇場版みたいだね」と言われていました。3つのテーマで構成を立てて、60分フォーマットだからこそできる音響の構成にこだわることができたと思っています。音響チームの方々には、厳しいスケジュールの中でも素晴らしい仕上がりにしていただきました。

――梶裕貴さん(慎導灼 役)や中村悠一さん(炯・ミハイル・イグナトフ役)との収録で印象的だったことはありますか。

塩谷 灼役も炯役もオーディションして、50人以上の方の中から選ばせていただきましたが、アフレコ収録してすぐ「お二人にお願いしてよかった」と感じました。「PP」シリーズでは、役者さんに「(収録前に)知る必要のないことは知らせない」というスタンスで収録をしているんです。でも今回、灼に関しては、置かれている環境が複雑だった事もあり、梶さんには少しだけ灼の過去についてお話しました。収録を経て、お二人にしかできないキャラクターになったと思います。梶さんが灼を演じたことでミステリアスな印象がより深くなりましたし、中村さんのお芝居のニュアンスを聞いて、「実直さがありつつも、抱えた問題を内面に溜め込む」炯自身の生い立ちがとても感じられて、イメージした通りで素晴らしかったです。

――「PP3FI」をどのように楽しんでほしいと思っていますか。

塩谷 「PP3FI」は“時間に制約のある、一か所内でのライブアクション”としてお話を作りたかったんです。「襲撃された公安局ビル」という分断された陸の孤島的な箱の中で、これまで自分の手を汚さずに計算だけで犯罪を起こしてきた梓澤廣一と、灼や炯たちがどう戦っていくのか。警備が一番強固で安全な場所である公安局ビルをあえて襲撃するとい
うことを、アクション面でも見せたいと思っていました。また、灼という一人の人間の過去がシビュラとどう繋がっていくのか。「人間とシステムの関係」はこれまでの「PP」シリーズで通底するテーマですが、“システムに抗う人間に光を照らす”ことを今回も意識しています。そして静火にも彼なりの語らない正義があって、それも描かれていくことになります。「PP3」の完結編として、ぜひ楽しんでいただけると嬉しいです。

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