『ルプなな』従者オリヴァーを演じる土岐隼一さんにインタビュー!「悪役令嬢もの」だけど、その枠に囚われない作品

TVアニメ

2024年1月7日(日)から放送がスタートするTVアニメ『ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する』(ルプなな)。「オーバーラップノベルスf」より刊行中の小説を原作としており、20歳で命を落としては5年前の婚約破棄の瞬間に戻ってしまうリーシェが、7回目の人生で過去に自分を殺した元敵国の皇太子・アルノルトにプロポーズされるという壮大な物語が描かれる。

制作は『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』や『骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中』を手掛けるスタジオKAIと、HORNETSによる共同制作。メインキャストにはリーシェ役に長谷川育美さん、アルノルト役に島﨑信長さんが決定している。

そして、アルノルトを支える従者・オリヴァーを演じるのが土岐隼一さんだ。土岐さんは声優として出演するだけでなく、オープニングテーマも担当しており、オリヴァーと同じようにさまざまな面で作品を支えている存在と言えるだろう。
今回はそんな土岐さんにインタビューを実施。作品とキャラクターについて、そしてオープニングテーマに起用される楽曲について伺った。

志高く、意志の強さが感じられる作品

――本日はよろしくお願いします。まず、原作に対する印象はいかがでしたか?

何度も何度も同じ人生を繰り返してしまう、世界が流転してしまうストーリーは、今の時代だと少なくはないと思うんですよ。
だけど、ここまで主人公が確固たる意思を持ち、能動的に抗っている作品は珍しいんじゃないですかね。

タイトルだけを見ると、ちょっとクスッと笑ってしまいますけど、蓋を開けてみるととても志高い登場人物ばかりで、時代の荒波に対して、たった一人全力で抗っていく、リーシェという女性の意思の強さが終始感じられる、とても奥行きの深い作品だと感じました。

――確かに、タイトルだけだとコメディ寄りに思いますよね。

それこそ僕が演じるオリヴァーとリーシェが話すときも、なにかもっと真意があるんじゃないかと勘ぐってしまうというか、シリアスで奥深い機微が感じられますよね。
7回もループを繰り返しているのもあると思うんですけど、本当に用心深いというか、思慮深いというか…。

作品には原作者の方の人間性がキャラクターに乗って、作風にも反映されると思うんです。そういう意味ではとても含蓄のある方が手掛けているんだろうなと。
例えばオリヴァーの場合はアルノルトの従者という、いわゆるサブキャラクターの立ち位置ですけど、人となりやバックボーンの情報量がすごく多いんです。そこからも、これを描いた方は、いろいろな経験をしてきたんだろうなと、読みながら考えていました。

――では、土岐さんが演じるオリヴァーというキャラクターに対してはどんな魅力を感じましたか。

どんな人でも嫌わず、波長を合わせるのが上手な人というのが第一印象でした。かつて目指しているものを諦めていたときに、アルノルトに拾ってもらい、そのときに抱いた「この人には一生付き従おう」という覚悟を、10年近く初志貫徹で貫いているのは、意志の強さと優しさ、両方を持ち合わせているからだと思います。同時に、ちょっとドSなところもありますよね(笑)。

無関係の人から見たら優しい人、関係者になるとちょっと怖い人、本当に親密な関係の人からはとても優しい人。という具合に、関係性によってどう思われているか、はっきり変わってくる人なんじゃないですかね。

――主人であるアルノルトとは、特に深い信頼関係がありますよね。

アルノルトのレベルになってくると、どんな仕事でもできる人という印象。だけどその周囲にいる人からすると、本心が分からない部分もあると思います。そしてもっと大きな枠で見ると、めちゃくちゃいい人。マトリョシカみたいにたくさんの層がある感じはしますね。

――そんなオリヴァーを演じる上で、意識した点はありますか?

言葉の使い方ですね。オリヴァーは角を立てない優しい言葉を使いますけど、ひょっとしたら真意は別にあるかもしれない。実際のところ彼はなにを思ってこの言葉を発したのかな、というのは役づくりする上で意識したところです。

あとは切り替えの素早さも意識しました。たとえ笑い話をしていても、アルノルトから上司としての命令が下れば、一瞬で仕事モードに切り替わります。一瞬で切り替えられるから、アルノルトの信頼を得られているんだと思うんです。

――オリヴァーはあまり感情を表に出さないキャラで、だからこそ些細な変化や会話の間も大事になってきそうですよね。

そうですね。ディレクターさんは「平面的なアニメにしたくない」とおっしゃっていて、つまり、すごくリアルなドラマ、人間関係を繊細に描きたいということでした。そうなると、やっぱり芝居の方向もセリフをただ読み上げるのではなく、ちょっとした言葉遣いの違い、時間の使い方も細かくチェックしました。

――オリヴァーのキャラクターデザイン、見た目に関してはどんな印象がありましたか?

第一印象は…目が怖いな(笑)。優しいんですよ? 優しいんですけど、笑顔の奥にはいろいろな感情が渦巻いているんだろうなと、直感で分かる目をしていますよね。
こんな表情の人を目の前にしたら、良い関係を築かなければいけない、この人を敵に回してはいけないと、僕ならそう思います。

『ルプなな』がほかの「悪役令嬢もの」と少し違うところは…

――従者であるオリヴァーを演じる土岐さん視点で、主人公のリーシェやアルノルトはどのように映りましたか?

全体に言えることとして、みんな強く生きていますよね。アルノルトもリーシェもとても大きな目的を持って生きています。
ときには、それまでとは全然違う行動に出て、破天荒に感じることもあると思います。だけどそれは、目的のためにさまざまな可能性を探っているからなんです。それこそリーシェの場合は、7回目の人生を今度こそ生きたい、死にたくない思いがあるからこそ、「たとえすべての人間を敵に回しても」といった感覚で頑張れるんです。いろんなことを試したり、挑戦したりしているけど、大きな目的自体は一切ブレてないんですよね。

――だからこそ、オリヴァーは2人の大きな目的に振り回されるという。

立場としてはそうですよね(笑)。でも、多分オリヴァーもオリヴァーで、アルノルトに言われたことをひとつずつこなしていけば、理想の形に近づくと信じているんですよ。すべて意味のあることだから、純然たる従者として応えようとする、この姿勢もまたブレてないんですよね。

――アフレコに関しては、リーシェ役の長谷川育美さん、アルノルト役の島﨑信長さんと同時に収録したのですか?

アフレコはコロナ禍のタイミングで、分割収録ではありました。だけどできる限りアルノルトやリーシェ、オリヴァーといった同じ国のキャラクターはチームとして動こうということで、一緒に収録することができました。

――ということは、アフレコ時から他キャラクターのボイスも肌で感じていたと。キャストの皆さんの声や演技はイメージ通りでしたか?

それはもちろん! その中でも、やっぱり信長さんはすごいなと思いました。台本に書かれている文章をそのまま使うのではなく、「この時代、この世界観なら違う言い方をするのでは」と、一つ一つの言葉に意味をもたせるんです。
信長さん自身のセリフだけでなく、僕のセリフも「こういう言い回しのほうが雰囲気を感じさせやすいよ」と教えていただくこともあって、最初から最後までインスパイアを受けながらの収録でした。

――ちなみに、この作品は「悪役令嬢もの」というジャンルになりますよね。このジャンル自体に対する印象はなにかありますか?

僕、「悪役令嬢もの」って好きなんですよ。まず、「悪役令嬢もの」がジャンルとして定着しているのが面白いですよね(笑)
その中でも『ルプなな』はちょっと違うと思っています。多くの作品は悪役令嬢が「見返してやろう」「自分がヒロインになってやる」とグイグイ前に出てくるじゃないですか。だけど『ルプなな』はまったくの逆。リーシェは自分が無事に生きることが第一の目的だから、一歩下がった、安全なところから見守っているんですよね。アルノルトを出し抜こうではなく、支えようとするマインドは、この作品ならではだと思います。
結果的に、悪役令嬢とは思えないイレギュラーな行動が、登場人物たちに影響を与えていくんだと思います。

ひょっとしたら、「悪役令嬢もの」と呼ばれるすべての作品で、悪役令嬢のマインドはそれぞれ違うのかもしれません。ジャンルは同じでも違いがはっきりしてるから、見ていて飽きないんでしょうね。

オープニングテーマは『ルプなな』のコンセプトを第一にした楽曲

――土岐さんは本作で、オープニングテーマ「Another Birthday」も担当していますよね。こちらはどんな曲に仕上がっていますか?

今回はアニメ制作チームから「こういう楽曲にしたい」という提案を受けながらの楽曲制作でした。僕という人間以上に、『ルプなな』の世界に100%シンクロできるような楽曲を作ることを念頭に置いて、結果的に今までにはない、キラキラとした、でも壮大な世界観を持っている楽曲になりました。

最初にアニメ制作チームからイメージする曲として提案されていたのは、藤井フミヤさんの「True Love」だったんですよ。そんなファーストインプレッションを噛み砕いて、どこを踏襲して、どこを新しくして、そして僕はどう歌うか。実際の収録中も、ああでもない、こうでもないと言い合いながら仕上げていきました。

――『ルプなな』という作品のコンセプトを第一にした楽曲なんですね。

もちろん、今まで歌わせていただいたアニメ主題歌も、作品の一部になれるよう歌ってきました。それは今回も同じですけど、アニメを制作する方々の思いも感じられるのは、今まで以上だと思います。

――レコーディングの際、歌い方ではなにか意識しましたか?

僕自身よりも、作曲者の方々からの「こう歌ってほしい」という要望にインスパイアされたかもしれないです。より作品に溶け込めるように試行錯誤しながら歌いました。
ですが、あまり作品の世界観やキャラに寄ってしまうとキャラソンになってしまうので、少し僕の風味をも出せるよう努力をしました。

――キャラソンにはならないように…というバランスは難しそうですね…。

僕がソロアーティストとしてデビューしたのが5年前で、これまでたくさんの楽曲で、たくさんの経験をさせていただきました。ひょっとしたら、1年目の僕だったら余裕がなくて、作品とのバランスは考えられなかったかもしれないです。5年経ったからこそ、いろいろな工夫ができるようになったんだと思います。

アフレコ時は、オープニング楽曲が流れるケースもあったんです。それを聞いたとき、自分自身で「今までと全然違う」と感じられたし、現場でご一緒した濱野大輝さんからも「これ歌ってるの土岐君? 普段とちょっと違うね」と言っていただいだんです。5年間で成長したというより、新しい自分を発見できたみたいな気持ちで、本当に嬉しかったですね。

――土岐さん自身も、音楽チームとしても手応えがあったみたいですね。

手応えはみんな感じていると思います。ただ、チーム内で今話題になっているのが、「ライブではどこで歌おう…」ということです。
あくまで笑い話の一種ですけど、セットリストの中で、どの順番でこの曲を入れて歌うとしっくりくるのか、すごく悩ましい(笑)。

良い曲なのは間違いないですけど、ライブの中で「Another Birthday」が流れたら、みなさん「お!?」ってなるかなって。僕もライブにどう組み込むのか、ファンの皆さんはどう感じるのか、楽しみにしているところです。

――それでは、放送を楽しみにしているファンに向けて、注目してもらいたいポイントがあれば教えてください。

「悪役令嬢もの」というジャンルではありますが、その枠に囚われず、さまざまな楽しみ方がある作品だと思います。
それぞれのキャラクターの魅力的な部分、その魅力的な人間同士が織りなす複雑な関係性、リーシェとアルノルトの強い意志、意志が強いからこそ起きてしまうすれ違い…。そのまま見るのも楽しいし、オリヴァーから見たらどう写っているのか、他のキャラクターはどう見ているのか、たくさんの世界観があり、奥行きのある作品です。

劇伴やアニメーションの演出、僕たちの芝居で、壮大で繊細な世界が表現されています。すべての要素が『ルプなな』にマッチしているので、原作を知らない人はぜひ第1話から見ていただいて、魅力を知っていただければと思います。そして原作を知る人は、あの世界観がどこまで表現できているか、ぜひ確かめてください。

――ありがとうございました。

放送情報

TOKYO MX 1 月 7 日(日)より毎週日曜 24:00~
AT-X 1 月 7 日(日)より毎週日曜 23:00~ ※リピート放送:毎週木曜 29:00~/毎週日曜 8:00~
BS11 1 月 7 日(日)より毎週日曜 24:30~

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©雨川透子・オーバーラップ/ループ 7 回目製作委員会