『アサルトリリィBOUQUET』原作の尾花沢軒栄、源生哲雄プロデューサーが語るアニメの始まり【連載インタビューVol.5】

TVアニメ

2020年10月から放送がスタートし、先日全12話の放送を終えたTVアニメ『アサルトリリィBOUQUET』。本作は、1/12アクションドールシリーズ「アサルトリリィ」を原作としており、舞台化や小説化など多彩な展開を見せているメディアミックスプロジェクトだ。

今回AnimeRecorderでは、TVアニメを手掛けるメインスタッフへのインタビューを実施。最終回となる第5回目では、原作者の尾花沢軒栄氏、そしてプロデューサーを務めるTBSの源生哲雄氏に、アニメ化されるまでの道のりと、今後の展望について伺った。

モブキャラクターにも魂がある作品にしたかった

――本日はよろしくおねがいします。今回のインタビューでは『アサルトリリィ』がアニメ化されるまでを振り返っていただきたいのですが、そもそもこのコンテンツが生まれた経緯から教えていただけますか。

尾花沢氏:もっとも最初まで遡ると2005年のことですね。僕は、当時趣味でアマチュア原型師をやっていたんです。その当時、版権物ではないオリジナル作品しか参加できない展示即売会があって、そこに出展するため自分の作ったアクションフィギュアに設定と物語を付けたのが『アサルトリリィ』の前身である「私立・百合ヶ丘女学院物語」です。

その後、「AK-GARDEN」という立体物の展示即売会を立ち上げて、そこにドールを制作するAZONEも参加したんです。実は僕自身もかつてAZONEに在籍していて、その縁もあってアクションドールのコンテンツを立ち上げないかと持ちかけられ、いくつか提案したアイディアのひとつが百合ヶ丘女学院だったのです。

――設定を考えるときは、どんなところから着想を得たのですか?

尾花沢氏:まずはかわいい女の子と、その女の子が武器を持っていることがマストでした。これは単純に、私が武器を持つ女の子が好きからです(笑)。
あとはもうひとつ、やはりアクションフィギュア化する為、武器を持って戦う要素というのは必須かなと思っていました。

――源生さんは『アサルトリリィ』をどのタイミングで知ったのですか?

源生氏:原作の許諾をいただくために事務所にお伺いしたのが2016年ごろでしたかね…。尾花沢先生の友達の友達が当時私の部下でして、『アサルトリリィの』ノベライズを渡されて、本作品を知ることになりました。
それに加えて当時はシャフトの久保田さん(シャフト代表取締役社長・久保田光俊氏)とも漠然とですが「一緒になにかやりましょう」と話をしていました。先生からもシャフトさんで是非ともお願いしたいというお話をいただいておりましたので、いろいろな縁があって本格的に動き出したのです。

――ということは、その当時から『アサルトリリィ』がアニメに向いている感触が合ったのですね。

源生氏:月並みですが、今はファンの方々が違った推しのポイントを見つける時代です。その意味で『アサルトリリィ』はキャラクター数が多く、この時代との親和性が高いと感じていました。同時にこれはソーシャルゲームにも言えることで、ブシロードさん、そしてポケラボさんにも協力して頂き、ゲームをリリースできることも大きなポイントだと思います。それにゲーム化に関しては、尾花沢先生からの希望もありましたので。

尾花沢氏:僕は、もともとオープンワールドのゲームが好きで、『アサルトリリィ』の根幹となる設定や物語を作っていた時期ですと『フォールアウト3』とか好きだったんですよ。だから『アサルトリリィ』もオープンワールドのゲームにしたいなぁ、なんて妄想しながら、キャラクターを作っていました。

――その当時、アニメ化したいという思いはあったのですか?

尾花沢氏:もちろんありました。アニメとゲームはある意味コンテンツとしての頂点ですから、このキャラはこんな声優さんに演じてほしいとか、アニメ化したら戦闘シーンはこうなってほしいとか妄想してました。
先ほどもお話しましたがゲームにしたいという気持ちもありました、私の年代ですとゲームクリエイターって憧れの存在でしたし、スマートフォンアプリという形ですけど、それでも願いがかなったことはとても嬉しいですね。

――アニメに関しては、制作するにあたってどんな作風にしたいか、希望はあったのですか?

尾花沢氏:バトルものなので、まずはそこをしっかり描いてほしいとは伝えました。特にチャームの変形はこの作品の売りだと思っているので、アサルトリリィらしいバトルシーンを描いて欲しいという願望もあったので、シャフトさんにお願いできたことも嬉しかったですね。『ぱにぽにだっしゅ!』始め、僕が好きな作品をたくさん手掛けられているスタジオでしたから。

源生氏:私が初期の段階から考えていたのはやっぱり各キャラクターの重要性です。メインのキャラクターはもちろん、サブ、モブキャラクターにもしっかりとした人格があるような作品にしたいと思っていました。メインキャラクターだけでも結構な数なので難しさはありましたが、重要なポイントだと。
あとは原作の世界観にある美しさをどうやってアニメで表現するか…。これを実現するために、シャフトの久保田社長と相談し、佐伯監督にお願いしたんです。佐伯監督は『まほろまてぃっく』でご一緒させて頂いたのですがその頃から才能のある方で、でもなかなか脚光を浴びないというか…。もっと有名になってもいい方だといつも思っていました。それに加えて久保田さんからの強い推薦もあり、佐伯監督自身もスケジュールが空いていたということで、お願いする運びとなりました。

喧々諤々と話し合った百合の距離感

――次にストーリーは、どのように考えていきましたか?

源生氏:基本的なコンセプトとして、人気が出る作品は、ストーリーの主軸、幹になる部分が必ずしっかりしているんです。もちろん例外もありましが、しっかりしていないと、その場その場で茶化して終わりになってしまいますし、作品が長続きしません。このアニメは1話ごとに心に残る作品にしたかったので、かわいいキャラクターではありつつも、ストーリーボードをしっかり考えることが当初からの目標でした。

尾花沢氏:僕もシナリオ打ち合わせにはすべて立ち上あわせてもらって、いろいろと要望は出させてもらいました

源生氏:梨璃と夢結の距離感とか、喧々諤々としながら話し合ってましたよね(笑)。

尾花沢氏:そうでしたね。2人の距離感は理想的なものになっていると思いますし、
他のキャラについても様々議論したのを覚えています。

――そもそも、キャラクターたちはどのように生み出していったのでしょう。

尾花沢氏:アクションフィギュアの設定として最初に作ったのは夢結で、梨璃は結構あとでした。だからでしょうかね、僕の中では「夢結からお話が始まること」が多いんです。
次に2人以外のキャラクターですけど、僕はアニメですと『けいおん!』とかも好きなんですが、あの作品は脇を固めるクラスメートキャラの魅力がとても際立っていたと思うんです。そこを意識しながらまずは梨璃のクラスメートから、次にルームメイト、生徒会のメンバーという感じで派生キャラを生み出していきました。
その際、オープンワールドゲームのようにモブであっても一人のキャラクターとして主役たり得るようにというのも心掛けたつもりです。

それともうひとつは、自分のオリジナルで作っていた別の作品から引っ張ってきたキャラクターもいますね。
例えば高橋李依さんが演じる六角汐里は、僕が2005年当時作っていた「アサルトリリィとは別のファンタジー作品」で創作したキャラクターで、名前だけ変えて持ってきました。
他にもそういう感じのキャラが何人かいますね。

――アニメのキャラクターデザインはいかがでしたか?

尾花沢氏:素晴らしいの一言に尽きますよね。
キャラクターデザインの細居さんはノベライズの挿絵でもお世話になっていて、そのおかげもあって僕が求めるデザインをすべて分かってくれていたんです。シャフトさんの元で制作が始まったときも、僕が理想としている太ももにしてくれて…(笑)。それでいて、やりすぎではない絶妙なバランスに仕上げてくれました。

源生氏:私たちプロデュース側としても、以前から作品に関わられていました細居さんの起用はどうしても死守したかったです。4年前に初めてお会いした時、細居さんはシャフトさんには信頼する制作さんがいますと話されており、それが今、『アサルトリリィBOUQUET』のアニメPをやっている安田さんだったりします。

――ノベライズのころからの付き合いという話でしたが、どういったきっかけで知り合ったのでしょう。

尾花沢氏:細居さんを知ったのは『あいうら』という作品です。
僕も大好きな作品で、その後、確かコミティアだったかな?
細居さんがサークル出展されていたので、『アサルトリリィ』のキャラクターデザインやってもらえませんか」と頼んでみたら「アサルトリリィ持ってますよ」と言ってくれて(笑)。
昔から作品のことを知ってくれていた方なので不安はなかったですし、本当に満足しています。

――ではキャラクターデザインの次の段階、キャスティングについて、なにか考えていたことは?

尾花沢氏:これは同人あるあるだと思うんですけど、個人制作の段階から妄想でだれが声を担当しているか決めているんですよ(笑)。もちろん当時はアニメ化なんて一切決まっていませんでしたが、「もしアニメ化するなら」という妄想話を仲間同士でするものなんです。あのときから15年近く経って、若い声優さんが中心にはなりましたけど、それでもイメージ通りの声になりましたね。

源生氏:尾花沢先生の意見もお伺いしつつ、最終的にはシャフトさんでオーディションの声を佐伯監督含めてみんなで聞いて決めていきましたね。

――『アサルトリリィ』はアニメ以外にも、先ほど話題にも挙がったゲームや、舞台などの展開があります。このようなメディアミックスの共通点や、逆に差別化のポイントはどのように考えていきましたか。

尾花沢氏:どうしても異なる部分は出てくるものの、基本的にはひとつの作品になるよう意識しています。

源生氏:舞台には舞台クリエイター、アニメにはアニメのクリエイターがいて、ゲームにはゲームのクリエイター、それぞれが違った意思を持っていて表現したい方向性が違います。それぞれの作品設定に齟齬が生じないよう調整していた尾花沢先生が一番苦労したんじゃないかなぁ。すべてを合わせるのは難しいですが、ある程度は同じ方向を向いてもらう必要がありますからね。

――尾花沢さんは実際に放送されているアニメを見て、どんな感想でしたか?

尾花沢氏:実は僕、アニメは途中で切ることがよくあるんです。5話とか6話とか、中盤まで見ていてもちょっとしたきっかけで見なくなっちゃう。でも『アサルトリリィ』は自分が携わっていることを抜きにしても面白いし、ファンとして最終話まで見ていると思います。

――ではTVアニメを経て『アサルトリリィ』がどのように成長していくか、考えがあれば教えてください。

源生氏:アニメの後となると、まずは2021年1月に控えているスマートフォン向けゲームアプリ『アサルトリリィ Last Bullet』が第一の起点になるかと思います。2021年以降も舞台は控えていますので、こちらも独自の展開を見せていくと思います。

尾花沢氏:『アサルトリリィ』には一柳隊以外の舞台も存在するので、今後もいろいろな形で描いていきたい思いはあります。あとは僕の目標はいつまでも変わらず、いつかは『アサルトリリィ』でオープンワールドのゲームを作ってみたいです。そのためにもまずはアニメと、ソーシャルゲームが成功しないと難しいですし、しっかりと作っていきたいですね。

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