『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』主演の大貫勇輔にインタビュー。参考にした「僕だけがいない街」、そして宮野真守への尊敬

TVアニメ

フジテレビ“ノイタミナ”ほか各局にて4月9日(木)から放送がスタートする『富豪刑事Balance:UNLIMITED』。
1970年代に刊行された筒井康隆氏の小説『富豪刑事』(新潮文庫刊)を原作にしたTVアニメで、現代を舞台に新たなストーリー・新たなキャラクターによってより華やかに、より大胆に生まれ変わった作品だ。

非常に知名度の高い作品が原作であること、また『ソードアート・オンライン』『僕だけがいない街』などを手掛けた伊藤智彦氏が監督を務めることでも話題を集めているが、今回注目するのは、主役の神戸大助役大貫勇輔だ。大助は大富豪「神戸家」の御曹司であり、有り余る財力と最新のテクノロジーを駆使して、様々な事件を半ば乱暴に解決していく。

大貫さんはダンサーとしてキャリアを始めると、ミュージカルや舞台、TVドラマと活躍の場を広げ、いよいよ『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』でTVアニメのフィールドにも乗り出す。

放送を直前に控えた3月、大貫さんにインタビューする機会が得られた。この作品に対してどのような思いを抱いているのか、アニメに出演する経験は大貫さんになにをもたらすのか、共演する加藤春役・宮野真守さんへの思い、さまざまな質問をぶつけてきた。

声優の世界で見つけた、新たな発見

――大貫さんは映画『キャッツ』の吹き替えを担当した経験こそありますが、アニメへの出演は今回が初めてですよね。出演が決まったときはどんなお気持ちでしたか?

大貫さん:『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』への出演はオーディションを受けて、決まりました。僕は元々ダンサーで、そこから舞台やドラマにも出演させていただくようになったのですが、声だけの演技というものにも非常に興味がありました。なので、オーディションの話が舞い込んできたときにはすぐに「ぜひチャレンジしたい」とお願いしましたね。

オーディションを受けるからには役を勝ち取りたいですから、声優としてのレッスンも受けに行きました。レッスンでは僕が知らなかったテクニックや発見がたくさんあって、本当に勉強になりました。その後『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』出演が決まったときも、不安な気持ちより楽しみな気持ちのほうが遥かに強かったです。

――大貫さんは舞台やドラマで活躍していますが、それでも新しい発見があったと。

大貫さん:舞台の場合は頬のあたりにマイクを固定していることが多く、常に安定して声を拾ってくれます。逆に声優の場合は、マイクの周りを移動して、声を吹き込む位置を変えることができるんです。立つ位置によって声の聞こえ方が変わるなんて今までは考えたこともなかったです。あとは拳に力を入れて声を出すと、自然と力のこもった雰囲気が出せたり。

中にはこれまでも無意識のうちにできていたこともあります。でも、それを言語化して、意識できるようになったのはとても面白い発見でした。

――原作はあれどオリジナルのアニメということで、人物像を掴むのに苦労したのではないでしょうか。

大貫さん:台本にキャラクターの設定や性格がすべて細かく書かれていたんです。台本を読んだだけで基本的な情報が頭に入る仕組みになっていたのは驚きましたね。

――伊藤監督に対してはどのような印象をお持ちですか?

大貫さん:的確にディレクションしてくださる方という印象はありますね。オーディションのときも自分が想定した雰囲気以外にもいろいろな喋り方を指示されたんですけど、迷ってしまう瞬間はまったくありませんでした。それは本番の収録でも同じで、ただ単に「声のトーンを下げてください」ではなく、今の大助がどんな心情で、なにを考えているのかなど、指示の中に存在する意味まで丁寧に説明してくれます。なので僕も「だから声のトーンを下げるのか」と気付きながら収録できています。

――声だけの演技を行ってみての感想はいかがでしたか。

大貫さん:正直すごく難しさを感じました。今までは身振りも含めて自由に演技したり、歌ったりすることができたのですが、アニメだと、声の中に表と裏の両方の感情を詰め込まなければいけません。最近は自分自身だんだんと慣れてきたのか、難しさより楽しさのほうが上回るようになってきました。

あと、『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』への出演が決まったとき、勉強も兼ねていろいろなアニメを見るようにしたんです。そのときも多くの発見があり、演技の際には役立ったと思います。

――発見というと?

大貫さん:以前は登場人物の表情がもっと動いている印象がありましたが、あらためてじっくりと見てみると、意外と止まっている瞬間も多かったのです。なぜ動いているように見えたかというと、声優の演技によって、より豊かな表現になっていたからなんです。声優のすごさをあらためて感じると同時に、僕自身もキャラクターに“生きてる感”を出せるかが大事なポイントだと思いました。

――アフレコ現場には“生きてる感”を出す声優さんが多くいると思います。

大貫さん:皆さんすごすぎて、毎回聞き入ってしまいますし、ちょっと落ち込みそうになりますね(笑)。でも『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』を素晴らしい作品にするためにも、失敗を恐れず、挑戦心を失わずにトライを繰り返しているところです。

――ちなみに、アニメに出演するにあたって、参考にしたアニメはありますか?

大貫さん:かつて伊藤監督が手掛けた『僕だけがいない街』です。原作が好きで読んでいたのもありますし、それに主演の2人が満島真之介さんと土屋太鳳さんで、他のキャストは声優という、僕の立ち位置と似ている部分がありましたから。

僕は声優の方々のスキルを日々勉強し盗む気持ちで努力しながら、”俳優・大貫勇輔にしかない声”を大事にして臨んでいます。

演技で気をつけたのは「言葉の受け止め方」

――あらためて、『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』にはどのような面白さがあると思いますか?

大貫さん:筒井先生が手掛けた小説は1970年代の作品ですが、アニメは現代が舞台で、捜査をするときにはさまざまなガジェットを駆使します。これはアニメならではの面白さだと思いますし、僕が演じた大助の格好よさにもつながっています。あとは菅野祐悟さんが手がける音楽もとても素晴らしいです。スピード感のある展開に音楽が乗るとテンションが上がりますし、楽しみながら収録しています。

――大助に対しては、具体的にどんなところに格好よさを感じたのでしょうか。

大貫さん:ガジェットを使いこなす姿はもちろん、タイトルにもある通りとにかく大富豪で、驚くくらいの大金をさらっと出してみせるところも格好いいですよね。でも、格好よさだけではなくて、究極のマイペースというか、宮野さんが演じるバディの加藤からなにを言われても自分のテンポで物事を進めていくんです。浮世離れというか天然というか、そんな一面にはかわいさも感じますね。ギャップ萌えとでも言うんですかね。

――では、演技でも格好よさの中にあるかわいらしさも意識したのですか?

大貫さん:いや、そこは自然体でしたね。というのも、大助の持つかわいらしさは意図せずにじみ出てくるタイプで、僕としてはいつも通りの演技をしていて、結果的にかわいく見えてしまうんです。

――プロモーション映像を見る限り、感情の振れ幅があまりないキャラクターという印象を受けました。

大貫さん:どのくらい感情を表に出すか、度合いを探るのは苦労しました。伊藤監督には「ここはもう少し感情を出していいよ」とか、かなり細かく指示をいただきながら、微調整を繰り返して収録しています。僕は自分自身の声の演技に対して、「優しくなりがち」と思っているので、「もっとクールに」とは意識しています。

――伊藤監督からは、演技に対する指示や要望はあったのでしょうか。

大貫さん:「大貫君のままでいて」と言われたのは覚えています。そう言っていただいたのはとても嬉しかった反面、僕と大助の性格はまったく逆なんです。僕は一見「クールな人」と思われがちですが、実際は喋るのが大好きですから(笑)。だから演技のときは、自分の声を残しつつ、話し相手から投げかけられた言葉の受け止め方は意識しています。

――受け止め方ですか。

大貫さん:アニメに限らず芝居はほかの登場人物との言葉のキャッチボールです。投げ方はもちろん、相手からのボールの受け方も意識的に変化をつけるイメージです。

――なるほど。アニメの中で言葉のキャッチボールをする機会が多い宮野さんに対してはどのような印象をお持ちですか?

大貫さん:僕が宮野さんを初めて知ったのは「DEATH NOTE」の夜神月を見たときでした。当時、夜神月の声が素敵だなと思って初めて声優の方の名前を調べたんです。それで宮野さんの名前を知り、バラエティ番組に出演しているところも拝見して、いつしかファンになっていましたね。そんな宮野さんと共演できるのは本当に嬉しかったです。

宮野さんは声優を軸にしながら音楽やミュージカルの世界でも活躍していて、それはダンサーから舞台や声優に挑戦した僕の姿と分野は違えど重なる部分があります。そのおかげもあって、宮野さんのアドバイスは共感できる点が多くて、お話をしているだけで刺激を受けています。

――アフレコ現場の雰囲気はいかがですか? たくさんの声優の中に入るのは初めてのことですよね。

大貫さん:最初は本当に緊張していましたけど、宮野さんが気さくに話しかけてくれて、すぐに緊張は和らぎました。収録現場では聞き馴染みのない専門用語を使う機会もあるんですけど、そんなときも宮野さんが優しく教えてくれて、感謝しかないです。

宮野さんを中心にとても和やかな雰囲気ではあるんですけど、本番になると途端にピリッとした空気が流れて、メリハリの効いた良い現場だと思います。

――実際に演技をしてみて、舞台やテレビドラマとの違いは感じましたか?

大貫さん:息の量、息のニュアンスが違いますね。大助は普段の自分の声より低いイメージを持っているので、そこに声を持っていきつつ、どれくらいの息を混ぜるかを意識しています。例えばセリフを言う直前の息を吸う音、言い終わったときの息づかいとか。ここまで息に意識を持つようになったのは今回のアフレコに参加してからです。

――ダンサーや舞台俳優としての活動が、声優の演技に活きた部分はありますか?

大貫さん:声って、マイクの前で顔の位置を動かすだけでバウンスするんです。映像のキャラクターと似た動きをすると声の距離感も最適になり、同じ息づかいになります。僕はこれまで体全体を使った演技をしてきましたので、この経験は充分に活かせたと思います。

とはいえ、アフレコ現場で体を動かすのはほかの皆さんも当然のように行っていて、やはりプロの方々はすごいと感じましたね。ものを食べる演技とか、携帯電話を肩に挟んだときの声とか、目の前で見られて嬉しかったです。

――逆にアニメに出演した経験が、今後の舞台俳優などほかの分野で生きる可能性は感じますか?

大貫さん:可能性というより、もうすでに活かせています。声優としてのレッスンをしているタイミングで舞台にも出演していて、実際に息づかいを試せたんです。すると息の度合いだけで些細な感情の変化を表現するのは舞台上でも有効で、今までとの違いを出せた手応えがあります。これは今後も、多くの場面で使えるテクニックです。それに、俳優が持つ演技の面白さをアニメで活かせる機会はまだまだあると信じています。

――最後に、これからご覧になる方へのメッセージをお願いします。

大貫さん:ストーリーに関してまだまだ謎の部分が多いと思います。実は僕も同じで、台本をいただくたびに新しい発見と驚きがあるんです。その中にガジェットの格好よさがあり、お金で解決していく爽快感、くすっと笑える会話劇と、たくさんの魅力が詰まっている作品です。それらすべての要素が織り成すスピード感にはぜひ注目してご覧いただきたいです。

『富豪刑事Balance:UNLIMITED』

放送情報

フジテレビ“ノイタミナ”ほか各局にて4月9日(木) 25時10分より放送開始
※レギュラー放送は24時55分~

【配信情報】
FOD 4月9日(木)より28:00~
dアニメストア 4月9日(木)より28:00~
dアニメストア for Prime Video 4月9日(木)より28:00~
GYAO! 4月12日(日)より12:00~
Video Market 4月12日(日)より12:00~
DMM.com 4月12日(日)より12:00~
music.jp 4月12日(日)より12:00~
Netflix 4月12日(日)より12:00~
dTV 4月12日(日)より12:00~
ひかりTV 4月12日(日)より12:00~
バンダイチャンネル 4月12日(日)より12:00~
J:COMメガパック 4月12日(日)より12:00~
ビデオパス 4月12日(日)より12:00~
U-NEXT 4月12日(日)より12:00~
アニメ放題 4月12日(日)より12:00~
Amazonプライム・ビデオ 4月12日(日)より12:00~
Tver 4月12日(日)より12:00~
ニコニコチャンネル 4月12日(日)より12:00~
ニコニコ生放送 4月12日(日)より23:00~

スタッフ
原作:筒井康隆『富豪刑事』(新潮文庫刊)
ストーリー原案:TEAM B.U.L
監督:伊藤智彦
シリーズ構成・脚本:岸本 卓
キャラクターデザイン:佐々木啓悟
サブキャラクターデザイン:田辺謙司
美術設定:藤瀬智康/曽野由大/末武康光
美術監督:佐藤 勝/柏村明香
色彩設計:佐々木 梓
メカデザイン:寺尾洋之
CG監督:那須信司
撮影監督:青嶋俊明
編集:西山 茂
音楽:菅野祐悟
音響監督:岩浪美和
音響制作:ソニルード
スタイリングアドバイザー:高橋 毅
ガジェットコーディネート:ギズモード・ジャパン
アニメーション制作:CloverWorks

キャスト
神戸大助:大貫勇輔
加藤 春:宮野真守
清水幸宏:塩屋浩三
仲本長介:神谷 明
亀井新之助:熊谷健太郎
佐伯まほろ:上田麗奈
湯本鉄平:高橋伸也
武井克弘:小山力也
星野 涼:榎木淳弥
???:坂本真綾

公式サイト 公式Twitter
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