『ARIA The BENEDIZIONE』は最終章だけど、終わりじゃない――姫屋キャストとして作品に寄り添った斎藤千和、皆川純子、中原麻衣にインタビュー

インタビュー

2021年12月3日(金)の公開を予定している『ARIA The BENEDIZIONE』。本作は『あまんちゅ!』の作者としても知られる天野こずえが描いた未来形ヒーリングコミック「ARIA」シリーズを原作とする劇場アニメで、2015年から始まった「蒼のカーテンコール」の最終章だ。

本作で描かれるのは、藍華・S・グランチェスタや晃・E・フェラーリ、あずさ・B・マクラーレンが所属する姫屋の物語。今回は、そんな3人のキャラクターを演じる斎藤千和さん、皆川純子さん、中原麻衣さんにインタビューを実施。作品に対する想いを語ってもらった。

あずさと藍華の絆がすごく伝わる作品

――今回の『ARIA The BENEDIZIONE』は蒼のカーテンコール最終章という位置づけですが、制作が決まったときはどんなお気持ちでしたか?

斎藤さん:『ARIA The CREPUSCOLO』を収録したころには次回作品のことを聞いていて、その後、舞台挨拶のタイミングでスタッフの方に「次の収録はすぐですよ」と言われました(笑)。「姫屋のエピソードはないのかな?」と思っていたので、「やっときた!」という喜びのほうが強かったですね。

皆川さん:私は姫屋のエピソードはやらないと思っていました。私なりに姫屋は充分描かれたと思っていたんですけど、まだまだ描けるエピソードはたくさんありましたね(笑)。少なくとも当時は『ARIA The AVVENIRE』が本当に最後だと思っていましたので、『CREPUSCOLO』の話を聞いたときも驚いたのを覚えています。そこからさらに、『BENEDIZIONE』で姫屋まで描いてくれるなんて、思ってもみませんでした。やらないと思っていた分、知ったときの喜びも強かったですね。

中原さん:私は『AVVENIRE』からの参加で、あれよあれよと『CREPUSCOLO』『BENEDIZIONE』へと話が進んでいきました。「次は姫屋の話をやるよ」と教えてくれたのはなぜか茅野ちゃん(茅野愛衣さん)で、意外なところからの情報に驚いたのが印象的でした(笑)。

――喜びや驚きと同時に、最終章であることの寂しさなどはありませんでしたか?

斎藤さん:そこはあまり考えなかったです。今回で最終章ですけど、私の中で終わらないイメージが凄くあって…。続編がなかったとしても、『ARIA』の世界はずっと続いていくような、そんな気がするから寂しくはないです。むしろ「やっと姫屋の話が見られる!」と喜んでばかりでした(笑)。

皆川さん:「きれいに締めくくろう!」みたいな気持ちというより、本当にいつも通りの収録でしたよね。ずっと続いている作品の中のひとつの物語を、いつも通り大切に演じたという感じです。最終章だけど、終わりではないんです。

中原さん:私はお二人に比べると『ARIA』の参加歴が短いので、素直に寂しかったです(笑)。「もっとやりたい!」という気持ちがすごくありました。このシリーズはキャストもスタッフも、長いこと同じメンバーで作っているので、絆が強いんです。その輪の中にようやく慣れてきたタイミングだったので…寂しい!

――台本を読んだときの第一印象はいかがでしたか?

皆川さん:姫屋を描く以上、昇格試験のエピソードは間違いなくやるだろうなと思っていました。それを分かっていても、台本を読んだときは「これは相当なエネルギーが必要だな」と感じました。TVアニメの中にこのエピソードが挟まるなら、毎週収録しているので流れの中で収録できますが、劇場版の場合は久しぶりに演じる上に、いきなり熱量を上げなければいけません。そこはプレッシャーを感じましたね。あと、どうやって泣かないように演じればいいかなとも考えました(笑)。

斎藤さん:読んだときにこれは泣いちゃうなって全員思ったんじゃないですかね(笑)。長く演じてきただけに思い入れも強いですし、「昇格試験をちゃんと描きたい」とは、以前から心の片隅にあり、その願いが叶った喜びはありましたね。藍華の昇格試験は、他のキャラクターとは違ったプレッシャーがあるはずなので、今まであまり見られなかった藍華の暗い一面も少し見えます。「そうだよね、思春期だしこうなるよね」と納得しながら台本を読みました。ずっと演じてきた私でも知らない藍華を知ることができました。

中原さん:私はやっぱりあずさの目線で作品を見ることが多く、後輩の立場としては、憧れている人たちの新しい一面が見られたのは面白かったです。藍華と晃の物語を一番いい位置で見せてもらっているんだと思います。

――演じる上でこれまでとの違い、注意したことはありましたか?

皆川さん:これまで以上に熱い思いを込められるように、とは考えました。晃はもともと熱い人ですけど、今作で藍華やあずさに対して「これほどまでか」という程の熱い思いを持っていたんだと感じました。なので、この熱量をしっかり届けられるようにと思いましたが、力が入りすぎると空回りしてしまうので、サトジュン監督に言われた通り、あくまでもフラットにいこうと心がけました。

斎藤さん:『BENEDIZIONE』の収録を通して、藍華のことをより深く理解できました。これまで空白だった彼女の部分を埋められた気がします。演じているうちに「なるほどね」と唸らされたり。演じる前から違いを出そうと意気込んだというより、演じ終わったときに気づいたら理解が深まっていたんです。
今回は純子さんと一緒にアフレコができたのも大きかったです。晃はキャラクターが完成された状態なので、私はそんな晃に支えられながら、今までとはちょっと違う藍華の姿が表現できたのかと思います。

中原さん:あずさは…今まで通りだったと思います(笑)。

斎藤さん:一番ブレないキャラクターだからね(笑)

中原さん:いつも不機嫌で、でも先輩のことを思っているのは変わらないですよね。後輩感はどんなときでも忘れないことで、不機嫌な中にも藍華への好きが溢れてる。この個性は確かにブレてないですね。

――本作では藍華の姿が印象的に描かれていますが、皆さんの目にはどのように映りましたか。

皆川さん:藍華はいくつになってもかわいい!本当にかわいい子。晃にとって大切な人物であることは間違いなく、私自身、晃の気持ちはとても理解できます。晃が見る藍華と、私自身が見る藍華は、どこか重なる部分があるかもしれません。

斎藤さん:これまでの劇場シリーズだと、藍華の出番はとても多いわけではありませんでした。それだけに自分の出番のときには、より気合を入れたりもしていました。
しかし今回、出番が増えてくると冷静に見えてくるものもあって、藍華は自分の中にいるキャラクターなんだと、強く思えるようになりました。だからなのか、今回のアフレコで泣かなかったんです。もっと、収録ができないくらい泣いちゃうと思ってたのに(笑)。多分、もはや一般的な「感情移入」とは別のレベルで、自然に自分の中に藍華が存在しているからかなと思いました。

皆川さん:私も今回自然に晃になれたような気がしてます。うまく言えないんですが、晃の気持ちに自然にシンクロしていった感じというか。

中原さん:後輩という立場から見ていると、藍華は充分に完璧なんです。でも今回のエピソードを見て、新たな一面を知ったことで親近感が湧きました。あずさは威勢のいい言葉の中にも不安が垣間見える性格なので、ひょっとしたら今回の藍華を見て、少し安心した側面があるかもしれません。

――これまでの『ARIA』シリーズを振り返ると、どんな印象ですか?

斎藤さん:16年演じてきた中で、作品の愛し方とキャラクターの愛し方は変わった感覚があります。ずっと好きなのは間違いないけど、年月を重ねると見方が変わって、先輩たちの気持ちも分かるようになってきて。だから、16年前の自分だからできた演技、16年たった今だからできる演技の両方が『ARIA』には詰まっていると思うんです。

皆川さん:見方は変わっても、全員憧れの人物なのは変わらないですよね。登場人物はみんな魅力的で、発言の一つ一つに共感して、それはTVシリーズから今までずっと同じです。

――最後に、本作を期待するファンに向けて、見どころを教えてください。

中原さん:ネタバレになるので深くは言えませんが、あずさと藍華の絆がすごく伝わるシーンがあるので、そこはぜひ注目してもらいたいです。あと、晃が本当にイケメンなので、期待してもらえたらと思います(笑)。

皆川さん:藍華の昇格試験が実に姫屋らしくて、楽しんでいただけると思います。いつの時代もかっこいい姫屋のウンディーネたちをご覧あれ!そして「受け継いでいく」ということを改めて考えさせられる作品だと思いました。

斎藤さん:姫屋って、ARIAカンパニーやオレンジぷらねっとと比べると関係性が少しドライにみえる方もいるかと思うんです。だけどこの作品を見たら、むしろ絆が深いからこそのあの雰囲気だったんだなと感じていただけると思います。そんな晃と藍華の関係に、一歩踏み込もうとするあずさの姿。3人の深いつながりが分かる本当に素敵なお話です。

公式サイト 公式Twitter 作品概要
©2021 天野こずえ/マッグガーデン・ARIAカンパニー