「Fate/stay night[Heaven’s Feel]」II.lost butterflyのBlu-ray&DVD発売に先駆けて、 劇場上映版からさらに250カット以上をブラッシュアップしたBlu-ray&DVD収録用映像「ビデオマスター版」を、 映画館の大スクリーンと高音質の音響で上映するというイベントが2019年8月17日新宿バルト9にて開催された。
イベントでは、 メインキャストの衛宮士郎役の杉山紀彰さんと間桐桜役の下屋則子さんを囲み、 ufotable限定店舗特典となる特別映像「アニメーションマテリアルII」を見ながら、名シーンの数々を振り返った。
最初のシーンは、 雨に打たれる衛宮士郎と間桐桜が初めて心を交わす「レイン」。 ufotableの撮影監督の寺尾優一さんはこのシーンを「劇場版『Fate/stay night [Heaven’s Feel]』の象徴的シーンのひとつでもある」とコメント。
今回のイベントでは須藤友徳監督による「絵コンテ」、 アニメーターが描いた原画(動画)を撮影した「線撮映像」、 そして仕上げ(彩色)と撮影処理を加えた「完成映像」を同時に見せる制作過程映像が披露された。
この映像を見た杉山さんと下屋さんは、 アフレコ当時の印象を振り返った。
「私たちは、 絵コンテを撮影した映像でアフレコをしました。 須藤さんの絵コンテは本当にきれいで、 キャラクターの表情もとても丁寧に描かれています」(下屋)
「表情や感情がとても掴みやすいんです。 ありがたいですね」(杉山)
このシーンの演技プランについて、 下屋は悩んでいたことを明かした。
「桜が初めて自分の事を語り、 思いをぶつけるとても難しいシーンだったので、 収録をする前に、 須藤さんとお話ができたらなと思っていたんです。 そうしたら、 このシーンの収録に入る前に小休憩が入って。 須藤さんに話しかけようと思ったら、 ちょうど奈須(きのこ)さん(原作)もそこにいらっしゃったので、 このシーンについて伺いました。 お二人とお話しできたことで悩んでいたことも解決しましたし、 迷っていた部分も確信に変わって、 堂々と芝居をすることができました」(下屋)
一方、 杉山さんは「桜の心情をベースに、 このシーンの芝居を組み立てていった」と言う。
「このシーンは桜が主軸で。 士郎が知らなかったことを、 桜が打ち明け、 思いをぶつけてくる内容ですよね。 だから、 下屋さんが(須藤)監督や(奈須)先生に確認されて、 演じられたものを、 作中の士郎と同じように受け止めて。 自分の中で感じたことをお芝居にしていきたいなと思っていたんです。 だから、 あえて収録前に(桜のセリフを)どう受けるかを確認したり、 相談したりすることはしませんでした。 テスト収録のときに演じてみて『そのままでOKです』というリアクションをスタッフさんからいただいたので、 自信をもって本番収録に臨みました」(杉山)
「杉山さんといっしょに収録ができて良かったです。 隣のマイクで演じる杉山さんの気持ちを、 すぐそばで感じることができました。 ……フフフ、 なんか照れるなぁ(笑)」(下屋)
今回披露された「アニメーションマテリアルII」の映像では、 3DCGで描かれた雨粒もクローズアップ。ひとつのカットに、 3DCGでの雨粒を近景900個、 遠景200,000個降らせることで、 美しく激しい雨が降り注ぐシーンができたことが明らかになった。
「雨粒が涙のように見えて、 すごく素敵だなと思いました」(下屋)
「桜の悲しい涙のようにも見えますし、 士郎に対する希望の光の木漏れ日のようにも見えるという、 絶妙なバランスだなと思いました」(杉山)
二番目のシーンは、 アインツベルン城でセイバーオルタとバーサーカーが戦う「パワーゲーム」。 寺尾撮影監督は「第二章」最大の激戦シーン。 アインツベルンでの戦闘はシーン全体が一つの広大な戦場で行われました」とコメント。 「アニメーションマテリアルII」では、 空撮映像(俯瞰視点)でセイバーオルタとバーサーカーの戦闘が城内外のどこへ移動し、 転戦していったかが明らかになっている。この映像を見た、 杉山さんと下屋さんは思わず感嘆のコメントをこぼしていた。
「城がどれくらいの大きさで、 キャラクターがどれくらい離れた位置にいて、 どこにカメラを置かれているのか。 綿密に計算されて、 映像ができていることがわかりますね」(杉山)
「バーサーカーとセイバーオルタは一瞬で飛んでスピード感があるので、 本編映像では広さを感じていなかったのですが……こうやって俯瞰視点で見ると、 アインツベルン城の広大さがよくわかります」(下屋)
このシーンではサーヴァントたちの戦闘が大迫力で描かれている。
「サーヴァントの戦闘って本当に凄まじいものなんだなとよくわかります」(下屋)
「神話の戦い、 ですね。 エフェクトもすごく細かいし、 何重にも撮影処理が入っているんですね。日本の2Dアニメーションで洗練されてきた表現と、 緻密に作りこまれた3Dモデルの表現とのマッチング感がすばらしいと思います」(杉山)
「アニメーションマテリアルII」ではこの戦闘シーンの「絵コンテ」も映像収録されている。 完成映像と比べて見ると、 その出来栄えの凄味がよくわかるだろう。
「僕らがアフレコの時に見ていた映像は、 絵コンテの段階のものだったのですが、 その時点ですごい作画になりそうだと感じられて、 アニメーターさんは大変だろうなと心配してしまうほどだったんです」(杉山)
「こういうバトルシーンを見ていて、 涙が出たのは初めてだったんです。 それくらい、 魂を感じる映像になっていました」(下屋)
そして、 最後に披露したのは、 間桐桜の秘密が明かされる「悪夢」のシーン。 寺尾撮影監督はこのシーンについて「間桐桜の夢を現実が連動する「悪夢」のシーン。 注目はその後の路地裏のシーンとお城内部のシーンの、 場所の広さや壁面の高さが完全に一致していることです。 その意味は……?」と興味深いコメントを寄せた。
「アニメーションマテリアルII」では、 桜の夢に登場するファンタジックなお城やファンシーなキャラクターたち、 お城の額縁の絵を披露している。
「初めて『第二章』の桜の夢のシーンを見た方は、 何が始まったんだ? と驚いたかなと思います。 このシーンは私たちも驚きました」(下屋)
「僕も収録前にリハーサル用のビデオで拝見して、 そう……来ましたか! と驚きでした」(杉山)
「このシーンは、 原作ゲームのテキストだから成立するシーンだと思っていたんですね。 桜の内面を描くシーンなので。 須藤監督に絵コンテを見せていただいたときは、 思わず『須藤さん! 天才ですね』と絶賛してしまいました」(下屋)
「バランスが絶妙なんですよね。 メルヘンな印象だけでなく、 川に動物のぬいぐるみが流れていたり、 どこかに不穏な印象がある。 すごいなと思いました」(杉山)
また、 下屋さんは夢のシーンの見どころをあげてた。
「『第二章』のお城の内の壁に飾られている額縁の絵画は、 『第一章』で士郎が影に接触したときにフラッシュバックするシーンで挿入されたビジュアルなんですよね。 もし『第一章』のパッケージをお持ちの方は、 コマ送りで確認していただきたいです」(下屋)
最後にいよいよ公開に向かう最終章――「第三章」へ臨む、 ふたりの意気込みが、 特報PVの上映とともに語られた。
「私たちがアフレコをするのは、 これからなのですが、 「Fate/Grand Order Fes.2019~カルデアパーク~」でのステージイベントに出演するにあたり、 『第三章』のほぼ完成したシナリオを拝見したんです。 [HF]ってストーリーも長いですし、 物語も分岐していくので、 須藤監督ではない方が映像化を担当されたら、 きっと違う[HF]が描かれたと思うんです。 でも、 今回の須藤監督の[HF]はベストなんじゃないかな、 と本当に思うくらいの完成度の高さなんです。 ベスト・オブ・[HF]。 辛いシーンも大変なシーンもたくさんありますが、 私たちも身を引き締めてアフレコに挑みたいと思います。 」(下屋)
「何を言ってもネタバレになってしまうのですが、 本当にアフレコを楽しみにしています。 そしてそのアフレコをしたものに、 いろいろな演出処理が加わることで、 どんなすごい映像になるのだろうと。 これから、 楽しみしかありません」(杉山)