『花とアリス殺人事件』アニメーション監督・新海誠氏と作家・乙一氏のコメントが公開に

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岩井俊二監督が脚本・音楽・脚本を手がけ、初となる長編アニメーションに挑戦した最新作『花とアリス殺人事件』について、アニメーション監督・新海誠氏と作家・乙一氏が本作を鑑賞してのコメントが到着した。
乙一氏は、映画の公開にあわせ『花とアリス殺人事件』のノベライズ化を担当した人物。、映画とはまた違った趣の、もうひとつの『花とアリス殺人事件』の物語に、多くの反響が寄せられている。

また、新海誠氏は『言の葉の庭』などの作品が高い評価を受けている監督だ。同氏が『花とアリス殺人事件』をどのように見たのか、興味のある人はぜひ読み進めてほしい。

『花とアリス殺人事件』感想 作家・乙一

心地よいアニメだった。登場人物に愛着を抱き、いつまでも観ていたいとおもわせるロトスコープ作品はめずらしい。この技術はまだ人類にとって開発途中の代物だ。岩井監督はそこに見事な道しるべを立てたのだ。

この映画における登場人物は生身の身体性を宿している。しかし表情はアニメ的なディフォルメがほどこされている。それらが違和感なくひとつの存在として画面内に息づき、抽象性と具象性の境界をふわふわと漂いながら世界観を形成する。両親の離婚、そして婚姻届、それぞれの契約に影響されながら二人の少女の世界観がゆらぎ、そして出会う。そのユーモラスな顛末と、絶妙の会話に、おかしみがどこまでも加速した。

『花とアリス殺人事件』コメント 新海 誠

岩井俊二監督の作る実写映画には、常にはっきりとした文体がある。一目でそれと分かる映像、台詞、音楽、間。世界の美しさに気づかせてくれるその文体が好きで、でも、その文体は実写でこそ成り立つものだとも思っていた。だから、それをアニメーションとしてどう翻訳するかが、アニメ監督としての僕の密かな テーマの1つだった。

それだけに、今作は衝撃だった。岩井俊二はアニメーション監督として、拙作はもちろんのこと他の誰も為し得なかった水準を軽々と飛び越えてしまった。「アニメだと難しいから/失敗しやすいから」という理由で僕たちが避けてきたような描写をこれでもかと積み上げて、こんなにも豊かなアニメーション映画を生み出してしまった。岩井俊二の文体は、表現手法というよりももっとずっと深く、彼独自の世界への認識に根ざしていたのだと今さらに気づかされもした。紛れもない、観るべき傑作である。

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公式サイト

(C)花とアリス殺人事件製作委員会