『海賊王女』フェナ役・瀬戸麻沙美さんにインタビュー。髪を切るシーンは「作品を作る上で重要なことだった」

TVアニメ

2021年10月より放送中のTVアニメ『海賊王女』。本作は、監督を『B:The Beginning』などで知られる中澤一登氏、アニメーション制作をProduction I.Gが担当する完全新作オリジナルアニメだ。
18世紀×王女×侍×海賊という異色の世界観の中、自身の運命に翻弄されるヒロイン・フェナの旅路と成長を描く本作。今回はフェナを演じる瀬戸麻沙美さんにインタビューを実施。物語がクライマックスへ向かうタイミングで、作品の魅力を振り返ってもらった。

世間知らずで、怖いものがないところは若い頃の自分と似てる

――『海賊王女』への出演が決まったときを振り返ってもらえますか。

オーディションの段階で中澤監督の作品であることを知り、その時にパイロット版の映像を見せていただき、制作スタッフの皆様の作品への強い思いが伝わってきたんです。以前中澤監督の作品に出演したときも任せていただいた役にやりがいを感じていましたし、今作にも「出演してみたい」という思いが強くありました。なので今回も関われることになりとても嬉しかったです。

――確か中澤監督とは『B: The Beginning』に続いて2作品目の出演ですよね。監督に対する印象はいかがですか?

物腰柔らかで、いつもニコニコしている人です。お仕事でご一緒するのは2回目ということで、距離感が以前より近く、出演が決まったときも「フェナをお任せします」と話していただいたのが印象的でした。それは実際のアフレコのときも同じで、私が感じたフェナ像をそのまま演じて、大きな修正が入ることはありませんでした。

――作品に対する第一印象はいかがでしたか。

ワクワクするものが詰まっていますよね。個人的に海が大好きなので、海を舞台にした冒険というだけで物語が気になりました。それでいて和と洋が混ざり合う世界観も印象的でした。日本刀を持つ侍たちが西洋風のお姫様を守る姿は、お話を頂いた当時から心に残っています。

――ご自身が演じるフェナに関しては、どんな印象を持っていましたか?

最初はキャラクターデザインとセリフにギャップがあると感じました。見た目は白髪で色白で華奢で、どこか儚い印象がありましたし、タイトルの『海賊王女』にもある通り、王女を司る、上品な存在だと思っていたんです。だけどストーリーを読み進めてみると、冒頭から意思の強さを感じるセリフがあって、さらに島から脱出するための作戦を紙芝居で熱心に説明するシーンもあって、見た目からうけた印象とはまた違った一面がありました。そして、そんな作戦を共にしてくれる仲間がいるということは、きっと人に愛される存在なんだろうと感じました。

――キャラクターの個性は、第1話の時点で掴んでいたと。

そうですね。まっすぐで明るいそんなキャラクターを任せていただく機会が多かったので、イメージはしやすかったです。フェナの明るくてかわいらしい部分をしっかり出しつつも、変にあざとくならないように意識しました。

――演じていて、共感できる部分はありましたか?

旅が始まったときのフェナと、声優としての仕事を始めたばかりの自分を重ね合わせることはありました。世間知らずで、怖いものがない。シャングリラからの脱出計画も、世間を知らないからできたことだと思うんです。10代の私も世間知らずで、今なら怖くてできないこともやってたなと思い出します(笑)。

――実際の収録の雰囲気はいかがでしたか。

実は収録自体は新型コロナウイルスが流行する前、2019年のころに行っていたんです。
当時から映像自体はあったのですが、キャラクター同士の掛け合いのシーンでは、「キャストのテンポ感を重視したい」と言われていたので、映像に引っ張られるのではなく、私たちなりの勢いを意識して収録しました。なので、アフレコというより映像のない状態で声を録るプレスコに近い印象がありましたね。

――プレスコに近い収録の中で、瀬戸さんなりのオリジナリティは出せましたか?

演者のかけ合いを大切に収録を進めていただけたので、とても楽しく臨めました。フェナはセリフ量が多かったので、それを聞き取れるように、その尺の範囲内で収録しなければいけないのは難しかったですね。こればかりは完成した映像を見るまで、どんな仕上がりになっているのかドキドキしていました。

――本作ではキャラクター同士がテンポよく掛け合いを魅せるシーンも多いと思いますが、意識したことは?

フェナだったらどんな話し方をするかを考えながらお芝居をしました。フェナとの会話劇が多かったのは雪丸と花梨だと思います。それぞれの役を演じる鈴木さんや悠木さんのお芝居もとても素敵で、一緒にかけ合いができて嬉しかったです。

とくに意識したことというと、相手との距離感です。例えば花梨との会話で、フェナが花梨の後を付いていくとき、向かい合ってはいない状況だったので目で見える位置関係とは違った距離感は大切に感じました。

――冒険を繰り広げる中で、フェナの成長も感じ取ることができました。瀬戸さんは演技の中で、フェナの成長をどう感じましたか?

本編の物語が始まる前、フェナはシャングリラの中で、限られた人としか話す機会がなかったと思うんです。それが突然仲間と巡り合い、信頼関係を築いていって。そういった経緯を想像すると、単純な成長というより、見える世界が広がったと言ったほうがしっくりくる気がしますね。

――仲間たちと出会ったことによる変化も大きかったですよね。

同じ船に乗る仲間たちはみんな個性的ですからね。例えば宝にたどり着いたとき、みんなリアクションが違ったり(笑)。中でも花梨は宝に目がくらんでしまうのではなく、冷静さもありましたし、旅の中でも同じ女性として仲間もしてフェナのことを気にかけていて、とても大きな存在だったと思います。

――実際の映像を見ての感想も教えてもらえますか?

収録から放送までに期間があいていたので、テレビ放送はとても新鮮な気持ちで見ています。収録時の映像の段階から「すごい映像になる」と確信していて、その通りの感動がありました。窓の反射や海の表現も美しくて、自分の演技を確認する緊張感よりも、映像に圧倒される気持ちのほうが強かったのを覚えています。

アニメの制作中、中澤監督から背景美術を見せていただく機会があって、自分の中で期待が高まっていたのもあります。だから最初から背景に目が行きましたね。
ストーリーだと第1話の脱出劇。危機迫る状況ですけど、動きはコミカルで、口や目、表情の動きが声と一体になって、アニメーションの魅力を再確認できた気がします。

――特に序盤だと、フェナが髪を切るシーンが印象的でした。

あのシーンは私も「切った!」と思いました(笑)。もちろん事前に収録していたので知ってはいましたが、改めて映像としてみると衝撃的でしたよね。最初に公開されたフェナのビジュアルだとロングの印象が強くて、彼女の魅力のひとつでもあったと思います。それだけにショックを受けた視聴者の方もいたようです。

でも、そのあとの物語を見ていくと、時間が進むにつれて髪の毛も少しずつ伸びていくんですよね。話数があらかじめ決まっていて、時間経過の表現できるタイミングも限られるアニメにおいて、とても貴重な役割を果たしているのかなと思いました。たしかに切った姿を見ると「かなり短くしたなぁ」と感じましたけど、作品を作る上で重要なことだったのだと思います。

――ビジュアルの面でいうと、髪を切る前と後、どちらが好きですか?

完全に個人的な好みになってきますけど、ロングヘアのフェナの美しさには憧れます。私自身がショートヘアで、ロングヘアを維持する人への尊敬の念があるんです。

――ストーリーは今後クライマックスに向かっていきます。瀬戸さんはどんなところに注目してほしいですか。

ここまでも彼らは大冒険を繰り広げてきましたが、まだまだ大きな展開が待っています。もしかしたら「裏切られた!」と思うくらいの出来事もあるかもしれません。皆さんにはたくさん予想しながら見てもらうのもいいですし、そんなことを一切考えず、物語の流れの身を任せるのもいいと思います。そのどちらの方にも興奮やワクワクを届けられると思うので、ぜひ楽しみにしてください。

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