『異世界美少女受肉おじさんと』山井紗也香監督インタビュー! 神宮寺と橘の成長を描くための工夫とは

TVアニメ

漫画アプリ「サイコミ」などで掲載されている『異世界美少女受肉おじさんと』。本作は、アラサー会社員のおじさんが異世界転移したら絶世の美少女に。男の姿に戻るため、親友とともに魔王を倒す旅に出るというファンタジー作品だ。

すでにTVアニメ化も決定している本作は、10月18日にアニメ最新情報を発表する生放送を実施。その中で、2022年1月の放送を予定していることと、日野聡さんやM・A・Oさんといったキャスト陣、さらにアニメーション制作をOLM Team Yoshioka、監督を山井紗也香氏が務めることも発表された。

今回、本作が初監督作品になる山井紗也香氏にインタビューを実施。制作中のアニメは一体どんな仕上がりになるのか、現状を伺った。

第一印象は「甘酸っぱい」 ワクワクするし、ソワソワもする作品

――本日はよろしくお願いします。本作は山井さんにとって初監督作品とのことですが、どういう流れで担当することになったのかを教えてください。

これまでは他のスタジオで原画などを担当してきまして、現在のOLMでは「いつかは監督をやりたい」と元々言っていたんです。するとある日、私が所属するTEAM YOSHIOKAのプロデューサーである吉岡さん(吉岡大輔氏)に呼び出されて、『ファ美肉おじさん』の話を頂いたのが始まりでした。本当に突然のことで、呼び出されたときは「なんかやらかしたかな」と思いました(笑)。

――原作のことも、そのとき初めて知ったと。読んでみての感想はいかがでしたか?

「甘酸っぱいな」というのが第一印象でした。個人的に思っていることは同じ2人がすれ違うストーリーが好きなので、読んでいてワクワクもするし、ソワソワもするし、キャラクターに感情移入する作品でした。

――インパクトのあるタイトルですが、こちらの第一印象はいかがでしたか?

確かに、1回聞いただけでは頭に入りませんでした(笑)。ただ、『ファ美肉おじさん』という愛称はたまたまTwitterで見たことがあって、後日、「あぁ、あの作品か」と記憶が蘇りました。

――あらためて、初監督を務めるにあたっての意気込みはありますか?

原作者のお二人とは年齢も近く、アラサーとしての集大成にしたいなと感じました(笑)。お二人は脚本会議に参加していただいて、お話する機会もありました。子供の頃に見たアニメとかも似ているおかげあって、私が提案するアニメの演出もすぐに意図を汲み取ってくれるんです。ひょっとしたら、アラサーに響く作品に仕上がってくれるかもしれません。

――具体的に、どんなところにこだわりを持って制作を進めていますか?

原作は長ゼリフが多く、そこで笑いを引き出せるのが魅力だと思います。この魅力ではアニメでも殺さないよう、テンポ感にはこだわって制作しています。原作でテンポのいいところはアニメでもテンポよく、沈黙が続くところは間を開けて、原作が好きな人が楽しめる内容を目指しています。

――山井監督の個性を発揮できていると感じる部分はありますか?

もともとテロップが出てくるアニメが好きで、本作でもテロップをちょくちょく入れています。あとはオノマトペとかも表示したり、原作に出てくる文字を最大限生かせるように意識しています。

――本作はコメディ要素の強い作品ですが、コメディ作品を作るときの難しさ、あるいはやりやすさはありますか?

コメディの場合は勢いがつけやすく、自然と作品全体に緩急が生まれるのはやりやすいですね。しかし本作の場合は神宮寺と橘の心の成長を描くのも重要だと思っています。コメディの合間に心情の細かい変化も表現できるようにしています。
例えば、2人の学生時代を回想するシーンがあるのですが、それぞれで演出が異なるものになっています。特に橘の回想シーンはこだわって演出しているので、注目してもらいたいポイントのひとつです。

――キャスティングについてはどんな考えを持っていましたか?

橘の見た目は女の子だけど中身は男であることを声でも表現したいと思っていました。少年の声というより、少女がおじさんの言葉を自然に使っているイメージに重点を置き、M・A・Oさんに任せることにしました。
神宮寺は冷静さがありつつギャグもあるので、アドリブ感が出せる人として日野聡さんにお願いしました。

橘日向

神宮司

――ちなみに、山井監督のお気に入りのキャラクターはいますか?

人間だとシュバルツ君、人でなければイカが好きです。イカはゆるキャラっぽいかわいさがあると思ったし、グッズを出してほしいです(笑)。水族館で売っているキーホルダーとかがあったら面白そう。
シュバルツ君は異世界転生作品ではおなじみの立ち位置で、メタ発言を頻繁にして、クスッと笑わせてくれるのが好きです。

――音楽やサウンド面については、どのようなこだわりを持っていますか?

異世界感を出したいときは北欧をイメージした楽曲を使用しています。一方で神宮寺や橘といった、現実世界からやってきたキャラクターの心情を描き出したいときは8bit、ゲーム音楽をイメージした楽曲を使っています。

神宮寺と橘はゲームの世界に放り込まれたイメージで、ステータス画面やレベルが上がったときのポップアップといった演出も加えてあります。これを引き立てるためにも、8bitの音楽は最適だと思いました。壮大な音楽の合間に、いわゆるピコピコサウンドが挟まるので、注目してもらえると嬉しいです。

――これまでも原画などを担当してきたとのことですが、その経験が活きた部分はありますか?

長ゼリフの見せ方に関しては、OLMが制作した『オッドタクシー』で勉強した部分が活かせていると思います。あと、OLM Team Yoshiokaはチームワークがよくて、意見をどんどん言ってくれるのも嬉しいですね。

――OLM Team Yoshiokaにはどんな特徴があると感じますか?

今の話にも繋がりますが、意見を言うとどんどん取り入れてくれます。やる前に「ダメ」と跳ね返されることはまずなくて、「今までやってこなかったけど、今回はやってみよう」と挑戦するチームだと思います。

――最後に、アニメファンの方々へ一言お願いします

原作の面白さを、アニメーションというエッセンスで皆さんに伝えられたらと思います。もともと原作を読んでいる方はもちろん、アニメから作品を知った方でも、口の筋肉が緩みっぱなしの作品にできるよう頑張っていますので、放送を楽しみにお待ち下さい。

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©️池澤真・津留崎優・Cygames / ファ美肉製作委員会