『NIGHT HEAD 2041』に詰め込んだのは現在と未来の「社会性」 脚本家・飯田譲治インタビュー

TVアニメ

2021年7月よりフジテレビ「+Ultra」ほかにて放送中のテレビアニメ『NIGHT HEAD 2041』。本作は、1992年にTVドラマが放送されカルト的人気を誇った『NIGHT HEAD』をベースに、原作者・飯田譲治の脚本によって新たに描いた作品だ。

TVドラマ版で描かれた、超能力者であるが故に苦しみ、居場所を求めて放浪する霧原兄弟に加え、彼らを追い詰めていくもう一組の兄弟・黒木兄弟の相克が、新たな『NIGHT HEAD』として描かれている。

今回は、原作・構成・脚本を担当する飯田譲治氏にインタビューを実施。2021年に『NIGHT HEAD』が蘇った経緯、そして全12話を通して描きたかったテーマを伺った。

2041年は今からたったの20年後…リアルを追求した近未来像

――まず、今回のアニメ『NIGHT HEAD』の企画が始まった経緯から、教えていただけますか。

子どものころドラマを見ていた、今のプロデューサーから「アニメ化したい」と話を持ってきてくれたことがきっかけです。
「今、『NIGHT HEAD』やったら、すごく若い子たちに受けるんじゃないか。」と言ってくれたんです。それが僕も嬉しくて、ならば脚本を書こうと決心しました。

脚本を書くにあたって、今のアニメにはどんな要素が必要かも、彼らスタッフがいろいろ伝授してくれました。素直にそれに従って、自分の書きたいものを書いていきましたね。

――伝授されたものというと、具体的にどんな要素があったのですか。

今回のアニメで追加したタクヤとユウヤの黒木兄弟は、スタッフのアドバイスから生まれたキャラクターです。中心になるキャラクターが2人よりは、5、6人は欲しい、またそれぞれタイプの違いとかも、いろいろ聞きながら

――キャラクターを増やそうっていうのは、スタッフからの提案だったと。

飯田:そう。自分の中で、未来の話にする設定でやりたい思いがあったので、それをベースにしつつ。対峙する兄弟という設定は、割と自然に自分の中から出てきました。それに従って話を続けていったら、2、3話書いたら、すごいみんな面白がってくれて。そこからどんどん発展させていきました。

――黒木兄弟はアニメオリジナルですが、どういった性格付けとかを考えていったのでしょう?

飯田:直人・直也はもともと存在したキャラなので、それにタクヤ・ユウヤが対峙して不自然なところがないように意識しました。90年代の面影がある直人・直也に対して、現代の兄弟みたいな感じですね。
今のすごく若い人たちが見て、リアルにいるって感じられるような、そういう兄弟を描くのがテーマでした。

――似せるというより、差別化を考えていったと。

差別化は考えなきゃいけなかったけど、なかなか大変でした。若いキャラクターをガッツリ書く機会はあまりないですから。でも苦労も含めて、ある意味楽しかったですよ。

――今回のアニメと原作ドラマとの違いとして、近未来が舞台であるところも大きいと思います。そもそも近未来にした理由はどころからきたのでしょうか。

ドラマの中でも「変革」をテーマにしていたので、それを今の時代もしっかり表現したかったのです。もっと分かりやすく、変革とは一体なんだって。それを描こうと思ったら、近未来にするのが一番しっくりきましたね。

あとは単純に、未来のことを描いてみたかったんです。アニメでやるんだったら、実写ではできないことをやりたいという思いはありました。

――アニメならではの演出、見せ方というのは、どのように考えましたか?

まずは2041年と設定したとき、この世界がどうなっているかをリアルに考えました。エアカーが飛んでいたり、いろんな機器が発達していたりといった未来を想像する人もいるけど、2041年って、今からたった20年後じゃない?

――ええ。

僕は20年程度なら、そんな変わっていないと思うんです。今あるものを流用するケースが、すごく多いだろうなと。車は絶対、ガソリン車がまだ走っていると思うんです。電気自動車も水素自動車も頓挫して、生き残るのはガソリンぐらいで、ということになっているだろうし。そうやってリアルに考えて、現在の形になりました。

――物語の描き方という意味では、近未来と現代劇で違いはありましたか?

近未来だからといって、まったく違うものになるとは考えられないです。社会が変わらないように、人間の本質だって変わってないはずですから。

――思い描いた構想を、12話にぎゅっとまとめるところで苦労した点はありましたか。

作ったキャラとか、捨てなきゃいけないこといくつもあり、それは辛かったです。あと、作ったエピソードも捨てたし。ドラマには登場した神谷司も出そうと考えていたけど、結局なくなりましたし。

――捨てたとなると、そのうえで整合性も取らなきゃいけないと思うんです。その辺の苦労もあったのかなと思うのですが、いかがでしたか。

そうですね。でも逆に完成した映像を見ると、すごくテンポ感が良くなっていたんです。それはそれで良かった面かなと。

――毎週放送されるものですから、飽きさせないようなテンポ感とかも気にされてはいるんですか。

飽きさせない工夫というのも確かに考えましたね。今のお客さんって、一つの画面に対する情報量が、昔よりも何倍もあったほうが良いと思うんです。
ワンシーンに一つしか情報を与えないのは、みんな退屈で見なくなるかなって。アニメの視聴者は、特にそういうところがあるだろうし。なにより自分自身もそういうところがあるから。何回も試行錯誤して考えたい、そんな人が楽しめる作品を目指しました。

――伏線と呼ぶほどオーバーなものではなくても、「あれって何だったんだろう」と考えさせるというか。

その通りです。そうやって考えながら見るものを作りたいって。実写のときもいつもそう思っているのですが、今回はアニメとして描いているので、とんがっていても楽しいんじゃないかと。

――TVアニメはひとつのエピソードを30分弱にまとめる必要がありますが、ここでの苦労はありましたか。

30分だから大変というのは、自分の中ではなかったです。TVアニメやドラマみたいな連続ものだと、好きになったキャラと結構長く付き合えるんですよね。だから30分とか45分でどんどん続いてくものも最近では好きになってきました。だから今回も愛着を持ったキャラクターと長く付き合えたので、楽しさのほうが大きかったです。

社会がどうなるかを考え、投影したのが『NIGHT HEAD 2041』

――アニメーション制作は白組さんが手掛けていますが、CGに対する印象は何かありますか?

CGは映画に使われはじめたころからずっと見ているけど、あらためて自分の物語がCGで再現されて、本当にすごいと感じました。

――具体的にすごいと感じたのは、人物なのか、それとも演出なのか。

背景ですね。人物はもちろんすごいですが、背景の描きこみはデータの蓄積がないとできないことだと思うので。

――『NIGHT HEAD』のドラマが生まれた当時は、CGは存在しなかったですからね

当時はCGというより合成でしたね。合成にしたって一コマ作るだけで大きなコストがかかる世界でした。しかも、VHSで編集していたから、一度作ると消すとかできなかったですよ。
CGでなんでもできる時代になって、誰も驚かなくなったからこそ、作り手がどうやって技術使うかの勝負になってきたと感じます。

――アニメ化の企画が進み、CGでやると聞いたときの第一印象はいかがでしたか?

以前からCGアニメをいくつか見ていたから想像はできていましたが、それよりもだいぶ最先端をいっていました。映像が出来上がるたびに、自分もただの客として楽しみにしていましたね。

――ちなみに、スタッフに対して、何かディレクションは行いましたか?

CGの制作が始まってからは一切していません。僕はあくまでも脚本までで、あとはすべて任せました。

――スタッフに対する印象はいかがでしたか。

監督の平川さん(平川孝充氏)は初期の打ち合わせをしているときから、台本を理解してくれましたし、ブレーキをかける感じでもありませんでした。それなので僕も最初から信頼していました。
キャラクターデザインの大暮さん(大暮維人氏)に対しては、僕のほうからは一切オーダーを出していないんです。好きにやってくれればいいって。

――キャラクターデザインは当然、ドラマとは全然違うイメージだと思うんです。

ドラマとアニメは別物だと思っているから、それも1人のファンとして楽しんでいました。実際「こりゃないだろう」みたいな感覚はどこにもなかったです。打ち合わせのときに何回も会って話をしていて、心配するような要素はなかったですね。

――ドラマとアニメとの違いについてお話しいただきましたが。逆にドラマでもアニメでも変わらない、『NIGHT HEAD』の軸となるものは、何かありますか。

変わらないものとなると、結局自分の作家性をどうやって反映させるかに尽きると思います。
30年前に作ったものを今、もう一度作り直しているわけで、この30年間に学んできたものを自分なりに、いかに具体的に織り込んでいけるかを考えて作りました。

――日々のアップデートをどう落とし込むか、というところですね。

そうですね。『NIGHT HEAD 2041』では自分の経験、溜め込んだ知識をすごく上手く描けたと思います。最終回までしっかり、通しきることができました。

――具体的にはどんなアップデートがあり、どんなものが落とし込めたと感じていますか。

30年前は、「これから物質世界から離れて、精神世界への道が広がっていく」と言ったのですが、2021年になって、人間の社会がどう変わっているかを自分なりに語らないといけないと感じていたんです。

これから日本がどういう時代になっていくか、僕らが住んでいる社会がどんなことになっているかを考え、それを投影したのが『NIGHT HEAD 2041』です。視聴した方にも、作品を通して受け止めてもらえればと思います。

――ちょっと曖昧な言葉ですが、飯田さんが感じる「社会性」を描いたと。

そうですね。管理される側とする側というのが、昔よりもあからさまに見えるようになってきた社会。その中で、許される自由っていうのは一体何だろうとか。
人生でなにかを選択するときも、いろんなルールができているせいで、やりにくくなっています。僕らが若いころより全然自由度がないと思うんです。いろんなことが、結論まで見えたりしていると思うし。

だけど、今若いやつが50歳になったときに、どういう社会になっているかなんて、誰も保証できない。だからこそ、『NIGHT HEAD』が持つ世界観は、若い人にもっと見てほしいなって気持ちですね。

――縛り付けるルールがある中で、どうやって生きていくかというとこですね。

ルールを守ることが正しいのか間違っているのかということも含めてね。

――今回、久しぶりに、『NIGHT HEAD』シリーズの展開が行われましたが、ここからさらにコンテンツとして広げていきたい気持ちはありますか。

気持ちはあるけど、なるようになってくしかないと思います。個人的な望みとしては、この台本を実写でやりたいですね。
でもこれは、本当にちょっとした願いです。ひょっとしたらできるかもしれないけど。自分の夢として抱いておきます。

――分かりました。では最後に、最終回に向けて、一言あればお願いします。

この『NIGHT HEAD 2041』というドラマで本当に描きたかったテーマは、最終回に全部詰め込まれています。それをみんながしっかり受け止めてくれれば嬉しいです。

自分の中の正義、信じているものは人それぞれにあって、それが本当に信じられるかを検証しなきゃいけないときが、絶対、人生には出てきます。
そのときに、間違いを正せるかどうか、価値観を変えざるを得ないときに変えることができるのか。人間がどんな選択するか…最終回でタクヤ・ユウヤがどういう結論にたどり着くかを見て、みなさんそれぞれに考えてほしいです。

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©飯田譲治/NIGHT HEAD 2041 製作委員会