『アサルトリリィBOUQUET』アクションディレクター鈴木勘太「描きたかったのはヒュージの巨大感と、リリィも負けていないこと」【連載インタビューVol.2】

TVアニメ

2020年10月から放送がスタートしたTVアニメ『アサルトリリィBOUQUET』。本作は、1/12アクションドールシリーズ「アサルトリリィ」を原作としており、舞台化や小説化など多彩な展開を見せているメディアミックスプロジェクトだ。

今回AnimeRecorderでは、TVアニメを手掛けるメインスタッフへのインタビューを実施。第2回目は本作のアクションディレクターを務めた鈴木勘太氏に話を伺った。

剣戟だけじゃない、砲撃のシーンにも注目

――鈴木さんが『アサルトリリィBOUQUET』に参加することになった経緯から教えてもらえますか。

2018年にシャフトさんが制作した「Fate/EXTRA Last Encore」に私も作画監督や原画として参加して、そのときの縁もあって今回の『アサルトリリィBOUQUET』にも参加することになりました。

――『アサルトリリィBOUQUET』への参加が決まった当時を振り返っていただけますか。

お話をいただいたときはアニメを制作するプロジェクトは初期の段階で、まだ本格的に動いてない時期から参加していました。原作はアクションドールなので、その原型を見ながらイメージを膨らませたのが最初の作業でした。

『アサルトリリィ』というアクションドールがあること自体は以前から知っていて、「ホビー系のアニメをシャフトさんがやるのは珍しいな」と思ったのが第一印象でした。
あとは、バトルシーンではCGも使うことが決まっていて、楽ができるかも…と少し思っていたのも覚えています(笑)。でも実際には各キャラクターが持つチャームの動きは作画ですし、CGとは言ってもかなり動かさなければいけません。想像していたよりも大変な作品になりましたね。

――鈴木さんは本作でアクションディレクターという肩書ですが、具体的にアクションのどこからどこまでを担当しているのでしょう。

アニメの中にあるアクションをすべてゼロから作っているわけではありません。まずは原画のスタッフが描いたアクションシーンを見て、それをより華やかになるよう修正したり、肉付けしたりするのが主な仕事です。それに加えて、どんなエフェクトを使うかも考えています。

――原作であるアクションドールからアクションの考えていくこともあるのですか?

それもありますけど、まずは原画さんや演出さんの意図を尊重するのが最優先です。スタッフの皆さんが作ったものに、足し算をしていくのが私の仕事です。

――では、足し算をする際に大切なこと、意識していることはなにかありますか?

自分自身が見せたいものを反映させつつ、原画さんが描きやすい動きにすることは意識しています。私のせいで複雑になり、作りづらくなるのは避けなければいけませんでした。
特に『アサルトリリィBOUQUET』の場合、チャームなどディティールの部分が繊細で、CGで描くのは限界があります。手描きで描かなければならない箇所も多いので、シンプルにまとめることが大切でした。

――チャームは本作のアクションで重要な役割を持っていると思いますが、チャームごとの個性はどうやってアニメに落とし込んでいったのでしょう。

個性という意味ではチャームごとというより、扱いに慣れている人、慣れていない人の2種類に大きく分けることから考えます。この作品の場合は大半のキャラクターが慣れている人ですけど、梨璃は不慣れなのでチャームを両手で慎重に扱い、姿勢もちょっと及び腰なんです。逆にそれ以外の夢結たちは、片手で軽々と扱う。チャームの形状よりも、あくまで使う人から動きを考えていくんです。

――鈴木さん自身が、アクションを考えていて楽しいと思えるキャラクターはいましたか?

ストーリーの流れもあって剣戟になるシーンが多いですけど、私は砲撃のシーンが楽しかったですね。第4話の神琳と雨嘉のシーンは原画さんもとても上手くて、チャームの個性を強く出せたと思います。

――今回は人対ヒュージが主なバトルになっていますが、人対人とはやはり描き方も違うのでしょうか?

やはりヒュージの巨大感と出すこと、そしてリリィたちも決して負けてはいないことを、映像の中で表現できるよう心がけました。単純に動きだけでなく、エフェクトも含めて強さを表現しました。

――エフェクトが重要であると。

はい。この作品ではCGをベースに作画を当てはめていく作業をしました。その際にCGではできない要素を付け足すとなると、やはりエフェクトはまっさきに思い浮かぶアイディアで、映像を豪華に見せるには必須です。

――ヒュージだけでなくリリィ側も多彩なメンバーがいますが、キャラクターデザインによってアクションにも違いは生まれるのですか?

女性キャラクターの場合はスカートの丈の長さでアクションの質が変わります。今回はCGを元に作画しているんですけど、CGだと下着が見えていることもよくあるんです。ただそこは、作品とは合わないので作画のタイミングで鉄壁にしようとなりました。
また、男性キャラクターとの大きな違いとしては、ボディラインをしっかりと見せること。例えば両手で武器を振り上げる場合、どの角度まで腕を優先するのか、またどこから胸を優先するのかも考えます。

――鈴木さんは過去にもさまざまな作品でメカニックデザインや作画監督を担当してきましたが、そのノウハウが活きたところはありますか?

以前『境界線上のホライゾン』という作品で作画監督を担当したことがあり、そのときも巨大な敵と人間が戦う描写がありました。『境界線上のホライゾン』はCG前提で作られたコンテを手描きで表現することになり苦労することもありましたが、結果的にきめ細かなアクションを実現できたと思います。その中でロボットの個性、人間の個性を反映させる経験もできました。このあたりは今回の『アサルトリリィBOUQUET』にも活かせていますね。

――佐伯昭志監督は本作のバトルを「1980年代のアニメを意識した」と仰っていましたが、鈴木さんにもその意識はあったのですか?

監督のコンテを見たら、確かに1980年代のテイストは感じましたね。常に動き続けるのではなく、緩急をつけたり、ちょっとした動きだけで表現したり。あとは普段の立ち方、ポーズにも感じられますね。
これを実際のアニメに落とし込む際には、私がよく仕事をするサンライズさんに教えてもらったことが活かせたかもしれません。サンライズさんの作品は細かい動きのカットをつなげることが多く、その経験を反映できたと思います。

――今回の制作はシャフトですが、鈴木さんから見てシャフトにはどんな特徴があると感じますか?

とても速いペースでデジタル化が進んでいる印象でした。これから先のアニメ制作では大切なことですし、この環境で仕事をすると吸収できることも多いです。あとはテレワークにしっかり対応できていて、そこも驚かされました。

――鈴木さんの立場だと原画のスタッフとコミュニケーションを取る機会も多いと思いますが、テレワークだと難しさを感じたのでは?

もちろんコミュニケーションも大切ですが、ある程度割り切って作業できました。今までなら諦めていたアイディアをすべて詰め込んだ状態でスタッフに投げることができたので、決してマイナスの面ばかりではありませんでした。

――実際のアニメを見ての感想はありますか?

第1話を見て、想像以上にシャフトさんの色が強く出ていると感じました。作画リソースの使い方も一点集中型というか動くところと動かないところで極端に緩急をつけていますね。逆にそれ以外のところ、独特の角度や色使いは抑えているのに、それでもシャフトらしさがにじみ出ているんです。

――では、鈴木さんの視点から、アニメで注目してもらいたいポイントがあればお願いします。

第2話の前半で、一箇所だけ明らかに空気感が違うシーンがあったと思うんです。あれは新人の原画スタッフが頑張ったものなんです。第2話に限らずスタッフの力の込もったシーンが随所にあるのでぜひ見てもらいたいです。

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