TVアニメ『刻刻』先行上映イベントにキャスト、スタッフ陣が登壇。安済知佳の誕生日を祝うサプライズも

2017年12月20日、東京・秋葉原のUDXシアターにて2018年1月7日より放送がスタートするTVアニメ『刻刻』先行上映会が開催された。会場で第1話の先行上映が行なわれた後に壇上に登場したのは、主人公・佑河樹里役の安済知佳さん、間島翔子役の瀬戸麻沙美さん、“じいさん”役の山路和弘さん、そして本作の監督を務める大橋誉志光氏。

1.jpg

まずは第1話を振り返ってのトークがキャスト陣と大橋監督により展開された。本作を視聴する際、原作を読んでから観るか、アニメを観てから読むのどちらが良いかを安済さんが大橋監督に尋ねると、「どちらでも楽しめます。僕も原作はもちろん読みましたが、アニメは作りながらも楽しんでいる」と、頼もしい言葉が返ってきた。つづけて「ただ、読み始めると止まらない」と発したコメントに対して安済さんが反応し「オンエアされたところだけ読んでみよう、ということができない作品だと思います」と語る。

一方で、瀬戸さんはアフレコをしながら徐々に原作を読み進めていったタイプだという。そんな瀬戸さんもクライマックスとなる原作第6巻からは止まらなかったようで、その中毒性はアフレコ現場でも話題になっていたようだ。全8巻のうち、第7巻まででストップしていたと語るのは山路さん。それは原作の最終巻が品切れで購入できなかったためだという。こうしたエピソードからも、本作が毎回が気になるストーリーテリングをしているという上手さがうかがえる。

瀬戸さんは第1話では未登場ゆえに客観的な目線で視聴し、その後の話数に登場しているのにもかかわらず、思わず「ああ~面白かった。2話も楽しみだな~」と夢中になったようすを話す。彼女が注目したのは“音”。その作中の“音”の演出について大橋監督は説明をする。一般的なアニメであれば映像に合わせた効果音を付けて、臨場感を高める音響演出がなされるが、本作の場合は時が止まった世界(止界)で展開されるため、そうした演出が封じられる。ただ、そのままだと寂しいフィルムになるため、音響監督と相談した大橋監督はアンビエントな音楽を作ることで“圧迫感”を表現し、それによって視聴者には独特の空気感を与えたという。

“圧迫感”は作品作りのキーワードになっており、背景には抜けるような青空はなく、常に遮蔽物があるように描かれている。そこから解放されるタイミング、つまり終盤の展開は作品の大きな見どころになると監督は力強く述べた。また、「音のない世界」は演じ方にも影響を与えた。瀬戸さんによると、自然音がするなかでの距離感で声をかけるのと、音のない世界でそれをするのとでは届き方が違うため、それを想像した上での芝居になっているそうだ。そのあたりも注目して作品を視聴するとよりリアルな見え方で楽しむことができるだろう。

ここで、エンディングテーマ『朝焼けと熱帯魚』を歌う、ぼくのりりっくのぼうよみ(以下、ぼくりり)がゲストとして登場。もともとは彼の3rdアルバム『Fruits Decaying』に向けて作っていた曲を大橋監督が採用したという。「作品は人が死んだりと重たい話でもあるので、エンディングは気持ちが明るくなる曲」というオーダーに最もフィットしたのがこの曲だったという。「彼の声も楽曲も、歌詞の内容もセンチメンタルで良い」と大橋監督からは曲の良さが口をついて出る。安済さんも「MIYAVIさんとKenKenさんの主題歌『Flashback』は『刻刻』の世界観がすごく伝わりやすい楽曲でしたが、エンディングではいきなり爽やかな曲に変わり、そのギャップが面白かった」と語る。この『朝焼けと熱帯魚』は第2弾のティザームービーにも使われており、流れ始めるタイミングの樹里がジャンプするカットは何度もチャレンジしたこだわりの芝居だという。

「それにすごく爽やかな曲がついたので、個人的な喜びがあって。話数が進むにつれて気持ちが沈んだり考えさせられるものがあると思うのですが、それを優しく眠りへと誘ってくれるエンディングになるのではと思います」(安済)と語る。ぼくりりは「主題歌とエンディングで役割が違っていて、アニメの世界から現実に移行する意味で息が抜ける曲になればいいなと思います」と話した。

さらに主題歌『Flashback』を歌うMIYAVIさんから会場に向けてビデオレターが届いた。
「作品が進むに連れて広がっていく壮大かつ、人類としての普遍的なメッセージにインスパイアされて楽曲を作らせてもらいました。どうあがいても時間は前に進んでいく。そのやるせなさやせつなさ、時に残虐なまでの暴力性を表現しました。今回はベーシストのKenKenをフィーチャリングアーティストとして迎え、彼のベースとの掛け合いもスリリングな仕上がりで楽しみにして貰えばと思います」と、コメントを寄せたのに対し、大橋監督からは意外な裏話が飛び出した。もともとMIYAVIには戦闘シーンで挿入する曲を発注していたという。その仕上がりは当初のリズム感のあるもので、さらにボリューム感があるものだったのでオープニングに推薦したという。

次のコーナーはややライトに『刻刻』にちなんで、「もしも時間が1日止まるとしたら、一体何がしたいですか?」というもの。アフレコ現場でも何度も話題になったそうだが、作中でのリアリティに基づくと、惰性が働かないため、移動手段や止めるタイミングも重要。「お腹空いたタイミングでつまみ食いをしつつ、この世界の可能性を探りたい。知人がどんな瞬間に止められているのかを見たい」と答えた安済さん。一方、ぼくりりは「時間が止まったら世界で僕だけ。それってめっちゃ寂しくないですか!?」と詩人らしい感性を見せ、「寂しすぎてめっちゃ寝ると思います」という答えに落ち着いた。
瀬戸さんは真面目に、「静かな世界で台本チェック」と答え、大橋監督も続けて「締め切りギリギリ前に止めて、一気に仕事を終える」とのこと。山路さんは「南国の一番いい季節に行って、そこで止めて独占したい。あるいは開場前の美術館の独り占め」と、深みのある答えを見せた。

イベントも終盤を迎えたところで、この日のサプライズ企画が行われた。司会の発声につづいて、会場全体で「安済さん、お誕生日おめでとう!」とクラッカーが飛び、大橋監督からは花束が贈呈された。このイベントの翌々日(12月22日)は彼女の誕生日。喜びを噛み締め、眼尻を下げつつ「せっかく座長という立場に置かせてもらった『刻刻』をひとりでも多くの人に見てもらいたいですね。そしてなるべくお客さんのいるところでキャストのみんなと作品の裏話をして『刻刻』を盛り上げていきたいです。お祝いしてくださった皆さんにいろんな笑顔を届けられる1年にしたいです」と抱負を述べた。

イベントの最後には登壇者がそれぞれ挨拶を述べた。
「オーディションで出会ったときから樹里としてこの世界観で生きたいなと強く思っていました。アフレコは全部終わりましたので、あとはみなさんにお届けするのみです。きっといろんなことを考えさせられ、いろんな感じ方ができるお話になっていて、受け取り方感じ方人それぞれだと思います。皆さん同士でディスカッションするのも楽しい作品だと思いますので、これは最後まで見続けたくなる作品なのですが、本当に最後まで見ていただくことによってわかってくるものがありますので、ぜひ原作ともに最後までわれわれ佑河家のことも、間島さんのことも見守っていただけたら嬉しいです」(安済)

「私も原作を読んでアニメの台本を読んで、本当にこの作品に関われて良かったなと思います。間島という役に出会えて、この現場で経験できたことはすごく嬉しいなと思っています。1話を見たらぜひ最終話まで見届けて、皆さんそれぞれに感想を持っていただけたら嬉しいなと思います」(瀬戸)

「最初は自分がキーマンで一番キャラが濃いと思って演っていたら、回を追うごとにもっと濃い人間がいっぱい出てきて、それが悔しくて(笑)。最後まで楽しみにして下さい」(山路)

「『刻刻』はとてつもない作品だと原作を読んで感じました。それがアニメになるというプロジェクトに自分がエンディングという形で参加させていただけて光栄でありつつ、この作品をみなさんが楽しんでいただける一部になれていたらと強く思います」(ぼくりり)

「現場的には最終話(制作)に入りつつあります。最終回は原作を紹介しながら、ちょっとだけその先を描いたりしています。原作を読まれた方も知らないところもちょこっとあると思いますので、ぜひ最後まで観ていただきたいなと思います」(大橋監督)。

公式サイト

(C)堀尾省太・講談社/「刻刻」製作委員会