TVアニメ『キノの旅-the Beautiful World- the Animated Series』田口智久監督のインタビューが公開。再TVアニメ化での挑戦を語る

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10月6日(金)よりAT-X、TOKYO MXほかにて放送開始の『キノの旅-the Beautiful World- the Animated Series』について、田口智久監督のインタビューが公開された。本作の見所や再アニメ化での新たな挑戦について語っている。

田口智久監督インタビュー

――――『キノの旅』は、とても人気のある原作で、一度アニメ化もされている作品です。監督を引き受けるときに、プレッシャーもあったのではないでしょうか?

田口:それに関しては、多分に(笑)。でも電撃文庫の中でも歴史のある作品で、お話をいただいたときは、すごく光栄でしたし、頑張りたいと思いました。

自分も学生の頃に原作を読んでいたし、2003年の中村隆太郎監督による『キノの旅』についても放送当時見ていました。今見ても前作の『キノの旅』はすごく良くできてますし、非常に独特なフィルム感で、この作品の世界観をきっちり映像にしている印象があります。ですので、それに肉薄できるというか、勝るとも劣らないフィルムができるように頑張りたいと思うと、プレッシャーに感じていたりはします。

――――再びTVアニメ化する際に、こだわりたいと思ったところはどこですか?

田口:まずキャラクターデザインを今の黒星紅白先生(原作のイラストを担当)の絵に合わせて、皆さんが見慣れているキノをきっちりやろうというのを目標に、絵を起こしていきました。おそらくそこが一番、新旧の差別化ができるところではないかなと思います。

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『キノの旅-the Beautiful World- the Animated Series』キノ(左)、シズ(右)のデザイン。

また、背景美術にもかなりこだわりました。キノがいろいろな国を旅するロードームービーなので、それぞれの話数で美術の制作会社を変える手法を取っているんです。それぞれの美術制作会社の得意なところをより活かせればいいなと思って。
 それと、実際に別の国に行ったりしたとき、その国独特の空気感を肌で感じたりする経験ってあると思うんですけど、その「違う国に来たんだ」っていう感覚を色味で表現したいなと思ったので、キノが訪れた国の中に入ったときに国ごとに色合いがまったく変わるようにディレクションしました。そこが、視聴者の皆さんに上手く伝わるといいなと思ってます。

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本作では各話ごとに美術制作会社を変え、国ごとの微妙な違いを表現している点にも注目。
――――ちなみに美術制作会社を話数ごとに変えるというのは、TVシリーズではあることなんですか?

田口:いや、前代未聞のチャレンジをしているんじゃないかなと思います(笑)。

――――やってみての苦労はありますか?

田口:1つの会社であれば、世界観の理解がどんどん深まっていくんですけど、今回は毎回リセットされてしまうので、『キノの旅』というのはこういうお話で、今回はこういう国なんですよっていう説明をその都度やっていくから、打ち合わせの時間がどんどん長くなっていったというのはありました(笑)。

――――ただ、その苦労は効果としてしっかり出ていると?

田口:そうですね。例えば水彩調になるとかクレヨンで描いた絵みたいになるということはありませんが、色の塗り方、タッチの感じっていうのが各話ごとに変わっているので、国ごとに全然違うなと感じていただけると思います!

――――この作品では、ひとつひとつの国をしっかりと描くことが肝だと思ったからこそのアイディアだったんでしょうね。

田口:そういうことですね。それぞれの国に行って、そこの文化であったり文明であったりに触れていくというのが、この寓話的なストーリーを持つ『キノの旅』の根幹だと思うので、そこは大切に、見ている人にきっちり伝わるようにできればいいなと思っています。

――――寓話的なストーリーをアニメーションで描くことの難しさはありますか? たとえば説教臭くならないようにするとか。

田口:それはちょっと思ってはいます(笑)。でも、やっぱりエンターテイメントとして仕上げていきたいと思っているので、あまりくどくど言わないようにしようみたいなことは考えます。

当然、テキストは原作を活かした作りにしているので、原作の印象からは外れないと思うんですが、あくまでテキストが主体のメディアから映像に落とし込んだ時に絵的にどう面白く見せるかというところでは苦労は多いです。会話のみで進むシーンが多いので、映像にすると、向かい合って話しているだけにならないようにイメージになるようなカットを挿入したりして、話している内容のニュアンスがより分かるような工夫はしています。

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本作のストーリーは単なる旅行記ではなくどこか現実の社会とのつながりも彷彿とさせる、寓話的な要素を含む。

――――しゃべるというところは、キノとエルメスが中心になると思いますが、エルメスの造形について、かなりこだわっているそうですね。

田口:キノとエルメスって、仲間というのにも友達というのにも形容しがたい気がして…。相棒的な感じがするんですよね。どちらが欠けても成立しないような気がするので、この二人の関係性を、密に表現したいと思いました。エルメスのCGに関しては、ものすごいこだわっています(笑)。エルメスって、ブラフ・シューペリア SS100という実車がモデルになっているんですけど、そのモデリングを作るにあたって、相当細かいところまで解析して作り込んでいるんです。アニメだとセルルックに落とし込んでいるので細かい部分はわかりづらいのですが、それを外したときのエルメスのリアリティはかなり高くなっています。実写で使われる3DCGくらい作り込んでいるので、ある意味前代未聞のバイクアニメになっている気がします(笑)。

――――例えばエルメスがアップになってしゃべっているシーンになっても、十分耐えられるフォルムであると。

田口:全然耐えられますよ、ものすごい密度なので(笑)。こればかりは手で描いていたら終わらないだろうなっていうのが、きっちり画面に出ています。3Dの良いところだと思いました。

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キノと共に旅をする言葉を話すモトラド(二輪車)のエルメス。今回のアニメ化では細かなディティールまで3DCGで再現する。

――――物語の中心となるキノ役の悠木碧さんとエルメス役の斉藤壮馬さんの演技に関してはいかがですか?

田口:お2人とももう言うことがないくらい素晴らしいです。前作の印象が強い人って、やはり多いと思うんですが、。悠木さんの演じるキノも全然違和感がないというか。悠木さんご自身も前作の雰囲気に寄せてくれているかもしれませんが、キノって多分こういう声なんだろうなっていう感じが出ているので、本当にすごいなと思いました。本当に素晴らしい声優さんだと思います。

エルメスに関しては、斉藤壮馬さんのこれまでの演技の印象もあったので、こんな演技もされるんだなって改めて感じました。やっぱり非常にうまいですし、エルメスの少年めいた感じも出していただけていて、本当にきっちり演技ができる方なのだなと思いました。

キャスティングについてはもともとそんなに不安はありませんでしたが、1話のアフレコをしたときに「これはいけるな」っていう手応えを感じました。
多分ずっとこの2人はこうやって旅をしてきてるんじゃないかなって思うくらい、聴いていて自然な演技をしてくれています。

――――そして原作の時雨沢恵一先生は、今回のアニメに、どのように関わってくれているのでしょうか?

田口:基本的に、脚本の監修から絵コンテのチェック、あとは設定のチェックもやっていただいています。銃やエルメスのデザインなどは、かなり細かくやり取りをして今の設定になっているので、銃マニアの方が見ても唸る描写になっていると思います。しかも今回は音響のほうにも結構来ていただいていて、ダビングにも立ち会っていただいてるんです。そこでも銃関係の効果音のことなど細かく見てもらっています。ものすごく色々な部分でご協力していただいていますが、任せてもらっているところが大半なので、自分としてはすごくやりやすくて「このタイトルの胸をお借りします!」という感じで制作しています。

――――時雨沢先生は、そういう銃などの設定部分でのこだわりがすごいんですね。

田口:そうですね。ガンアクションがお好きだと思います。なので、今回のアニメのアクション面のリアリティに関してはかなり高いのではと自信があります。ただそれが、映像として派手かどうかはまた別にはなってきますが。画面がバーンと光ったりはしませんが、『キノの旅』ならではの味をもったアニメになってるんじゃないかなと思います。

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「キノの旅」の重要な要素の1つ「銃」。旅の途中で出会うのは美しい風景だけではなく危険なできごとも…。リアルさを追求したガンアクションシーンも本作の見所。

――――黒星紅白先生も、キャラクター原案として主要キャラ以外もデザインされているのですか?

田口:できるだけ黒星さんの描くキノワールドに近づけるようにしたかったので、黒星先生にもキャラクターの監修をしていただいています。実際、メインのキャラはもちろん、各話数の主要なゲストキャラは黒星先生に原案を起こしてもらい、アニメーションのデザインに落とし込んでいるんです。当初は、黒星先生もお忙しいのでざっくりとしたラフがくるのかなと思ったら、ものすごくしっかりした色付きのデザインがいただけたんです。それを見て、ここまでやっていただけるのであれば、こちらもしっかりしたものを作らなければ!とより強く思いました。

――――黒星先生のイラストを見ながら小説を読んでいた読者の方には、すごく楽しみなアニメになるでしょうね?

田口:はい、時雨沢ワールド、黒星ワールドがきっちり楽しめるアニメになっていると思います!ぜひご期待していただきければと思います!

放送局情報

AT-X:10月6日より毎週金曜22:00~
<リピート放送>
10月8日より毎週日曜8:00~
10月9日より毎週月曜14:00~
10月12日より毎週木曜6:00~

TOKYO MX、サンテレビ、KBS京都、BS11:10月6日より毎週金曜24:30~

※放送日時は予告無く変更になる可能性がございます。

公式サイト

(C)2017 時雨沢恵一/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/キノの旅の会