ツインエンジンがVR空間で発表した新展開。新法人「EOTA」設立、「団地」がテーマのスタジオコロリド次回作も

イベント

ツインエンジンは、4月 30 日(木)、オンライン上の VR空間でアニメの新情報を発表するイベント「TWINENGINE Conference 2020」を開催した。

これまでTV アニメ「どろろ」や TV アニメ「ヴィンランド・サガ」などの作品を手掛けてきたツインエンジン。本発表会では、今後の企業戦略やアニメーション制作の新構想などを発表。また、中村健治(TV アニメ「モノノ怪」、TV アニメ「つり球」)や、りょーちも(TV アニメ「夜桜四重奏〜ハナノウタ〜」)、石田祐康(劇場アニメ「ペンギン・ハイウェイ」)などツインエンジングループ所属のクリエイターが集結し、「これからのアニメ」をテーマにトークセッションが行われた。

まずは6月18日にNetflixでの独占配信が決定した『泣きたい私は猫をかぶる』のコーナー。ツインエンジン代表の山本 幸治氏と、W監督を務めた佐藤順一氏、柴山智隆氏、そしてメインキャストの志田未来さん、花江夏樹さんが登壇。2人の監督がこの作品にかける思いを語るとともに、キャストの2人は自身が演じるキャラクターの魅力を改めて紹介する。

また花江さんからはアフレコ前のディレクションについても言及。TVアニメでは収録しながら監督と声優の医師をすり合わせていくことが多いが、今回は最初に綿密なディレクションを経て、キャラクター像を完成させていったという。
さらに志田さんによると、打ち合わせの段階で花江さんが他のキャラクターのセリフを読んでくれたり、やりやすい雰囲気を作ってくれたことを明かしていた。

続けて志田さんは、「大切な方と一緒に見ていただけると、この作品の良さが伝わるのでは」とコメント。花江さんも「気持ちを伝えたり、一歩前に出ることの大事さを思いださせてくれる作品です」と魅力を語った。

「泣きたい私は猫をかぶる」関係者一同からのコメント
わたしたちは映画が大好きです。
『泣きたい私は猫をかぶる』は劇場用映画として作ってきました。

しかしながら新型コロナウイルスの影響で、
作品が予定通り劇場で公開できなくなっていく現実に直面しました。

失われていく日常の中で改めて気づかされました。
映画に込められた多くの人たちの夢や熱意に。
お客さんに観てもらえる劇場という場所の素敵さに。

それでも今自分たちができることは、
作品を世に出すこと、
作り続けることだと考えます。

映画『泣きたい私は猫をかぶる』は、
インターネット配信で作品を届けることを決めました。
世界が混迷している今こそ、エンターテインメントが必要だと信じて…

4 月 30 日
「泣きたい私は猫をかぶる」関係者一同

配信情報
Netflix にて 6 月 18 日(木)より全世界独占配信決定
作品ページ:https://www.netflix.com/jp/title/81281872

ツインエンジングループが新法人「EOTA(イオタ)」を設立!

続いては中村健治監督が登場すると、パッケージ+配信による海外市場が約1兆円に達していると説明。パッケージは半減しているが、配信は約3倍を記録しているという。同様に日本の深夜アニメのセールス先もNetflixやアマゾンプライムビデオが台頭し、2020年以降も新規プレイヤーの参入により市場規模はさらに拡大するとしている。

このような背景に合わせて、ツインエンジンは新法人「EOTA(Engine of the Animation)」を設立したことを発表。「EOTA」は、全世界配信向けの映像コンテンツから、ソーシャルメディアなどで手軽に楽しめるショートコンテンツまで、フレキシブルでどのような環境下でも作り続けられる柔軟性のある制作体制をグループに構築するため、各スタジオ・ユニットの大きな受け皿となる。
仲村氏は個人の才能を重視しているとのことで、工場のような大規模な制作体制ではなく、小さなチームで柔軟に制作できる体制を考えているという。

「EOTA」には、ポケットモンスターソード・シールドWEBアニメ「薄明の翼」を手がけ、映画「泣きたい私は猫をかぶる」の公開を控えているスタジオコロリドのほか、「ゴールデンカムイ」のジェノスタジオ、「荒ぶる季節の乙女どもよ」のLayduce(レイ・デュース)、CG制作に特化した「Peakys(ピーキーズ)」といったスタジオが所属する。

さらに、今秋公開予定の劇場中編アニメーション「BURN THE WITCH」で監督を務める川野達朗が率いる「teamヤマヒツヂ」、スタジオコロリドで多くの作品を送り出した新井陽次郎が設立した「FILMONY」、そしてデジタルツールでの作品制作をメインとした「daisy」など、小規模なユニットも所属。プロデューサーとクリエイターが開発段階からタッグを組み、強い企画を生み出すことを目指する。

オリジナルショート作品第1弾 「クラユカバ」本編制作を目指すクラウドファンディング企画が始動!

ツインエンジンでは、個人クリエイターとプロデューサーがタッグを組んでアニメを制作する。その第1弾として、塚原重義監督作品『クラユカバ』の本編アニメーション制作を目指すクラウドファンディングをプラットフォーム・「MotionGallery」でスタートする。

塚原氏はこれまでFLASHを利用した小規模なアニメを制作してきたが、今回縁がありツインエンジンと組むことになったという。

本作は「端ノ向フ」(第66回カンヌ国際映画祭:SHORT FILM CORNER出品)、「女生徒」(札幌国際短編映画祭大林宣彦審査員賞)など数々の短編アニメ作品を手掛けてきた監督・塚原重義氏初の長編アニメーション企画。

クラウドファンディングの目標金額は2000万円。集まった支援金は、作品の細部設定の拡充や、アクションシーンのさらなるクオリティアップに使われる予定。

また、本編制作を目指すクラウドファンディング開催を記念して、昨年Makuakeで実施したクラウドファンディングを元に制作された「クラユカバ パイロットフィルム」をツインエンジンYouTubeチャンネルで公開。
集団失踪の謎を追う主人公・荘太郎が悪戦苦闘する姿や、ディテールが施された装甲列車・装脚戦車のアクションシーンは必見。音楽は成田旬さん、活動弁士の坂本頼光さんによる口上にも注目だ。

【プロジェクトメッセージ】
コロナ禍でも、作品づくりを諦めない。
今、世界はコロナ禍で先行きの見えない状況が続いています。
しかし、そんな状況だからこそ、作品づくりの火を絶やしてはならないと私たちは考えています。
今回の本編制作の意思表明を以って、先行きの見えないアニメ業界に、再起の灯を掲げたいと思っています。

クラウドファンディング 概要
プロジェクト名 :コロナ禍でも、作品づくりを諦めない。塚原重義 監督・アニメ『クラユカバ』本編制作プロジェクト!
プロジェクトページ:https://motion-gallery.net/kurayukaba
募集期間 :2020年4月30日(木)19時~2020年8月27日(木)23時59分

ショート作品企画第2弾・「ボクらのロケットはキミと青春成層圏をこえていく」
個人クリエイターとして NHK や民放番組、舞台、TV ドラマ、MV など様々な分野でアニメーションを担当し、特にギャグテイストの作品に定評がある山元隼一監督による、ロケットの打ち上げを題材とした青春コメディ。

スタジオコロリドの次回作は?

最後に山本氏と映画「ペンギン・ハイウェイ」の監督・石田祐康氏が登壇すると、スタジオコロリドの次回作について語った。石田氏は今回発表されたツインエンジンの展開に刺激を受けていると明かすと、次回作のラフアートを公開。

石田氏自身が「人生で一番楽しかった」という小学生時代を背景にしているとのことで、ラフアートには小学生たちと団地が描かれている。凝った作りではなくシンプルである点、人の生活する場としての魅力を感じ、おぼろげながらも団地というテーマを導き出したという。「ペンギン・ハイウェイ」では新興住宅地が舞台だったが、次回作はまた趣の違った作品になるようだ。

石田氏は構想を練るうちに団地に強い興味を持ち、最終的に引っ越しをしてしまったくらいの熱の入れよう。企画とは別に、純粋に団地生活を楽しんでいるとも話していた。
作品の正式な発表はまだ先になるそうだが、新しいテーマを持つ作品に仕上がってきそうだ。

© 2020 「泣きたい私は猫をかぶる」製作委員会
©塚原重義/ツインエンジン