目指したのはキャラクターが実際に生きている雰囲気…『イエスタデイをうたって』藤原佳幸監督&リクオ役・小林親弘さんミニインタビュー

TVアニメ

2月15日、東京・下北沢トリウッドにて、4月から放送がスタートするTVアニメ『イエスタデイをうたって』の先行上映イベントが開催された。

『イエスタデイをうたって』は、冬目景氏が1998年から18年に渡り描いた青春群像劇。大卒のフリーター・リクオを中心に、恋愛や仕事といった問題と向き合うキャラクターの姿が描かれる。

今回のイベントでは第1話、第2話が続けて上映されたあと、監督の藤原佳幸氏、リクオ役の小林親弘さん、そしてカラスのカンスケ役・前川涼子さんがMCを務める形でトークコーナーがスタート。
高校時代から原作のファンだった藤原監督は、本作のアニメ化について、半ば立候補のような形で監督に名乗り出たという。
また小林さんは熱量を表に出さないキャラクターの会話に触れると「本音を隠しているのがすごく人間臭くて、演じてみたいと思いました」と語った。

そんな小林さんのキャスティングについて藤原監督は、声優は全員オーディションで選んだことを明かしつつ、小林さんは直感で「これリクオだよね」と確信を持ったとコメント。原作者の冬目氏も含めて満場一致で選ばれたとのこと。

原作の魅力を聞かれた藤原監督は「冬目先生の絵力」に加えて、「セリフのひとつひとつにこもる緊張感」と発言。
これには小林さんも強くうなずくと、「一歩進んだと思ったらもとに戻る、関係性がもやもやするリアルさというか、相手がなにを考えているんだろうと悩む間があるんです」と力説した。

また藤原監督はリアルタイムで追っていた高校時代を振り返ると、当時は「晴ちゃんかわいい!」「大学生ってこんな感じなのか」といった感想が第一だったと告白。しかし、年月を経てもう一回読み返すと「榀子も味わい深いな」と思うようになったとか。
小林さんもまた、「その時々で感情移入する相手が変わるんだと思います」と同意していた。加えて、携帯電話などがない時代が舞台であり、「好きになった人とのコミュニケーションのとり方も魅力のひとつ」と話した。

左から前川涼子さん、藤原佳幸監督、小林親弘さん

会話以外のやりとりがとてもリアル-藤原佳幸監督&小林親弘さんインタビュー

上映イベントの終了後、藤原監督と小林さんにあらためてコメントをもらうことができたので、その内容を紹介する。

――小林さん自身も上映会で第1話、2話をご覧になっていましたが、あらためての感想をお願いできますか。

小林さん:めちゃくちゃ良かったですよ! セリフとセリフの間や目配り、環境音といった会話以外のやりとりがとてもリアルで、僕自身も昔のことを思い出す瞬間がありました。

――監督はファンの皆さんの反応を見ていかがでしたか。

藤原監督:温かいお客さんばかりで本当にありがたかったです。私はまず第一に「冬目先生に認められるアニメを作りたい」という思いから制作が始まりました。そして先生にも完成したアニメを確認していただいて、とてもポジティブな言葉をかけてくださいました。なので熱心なファンの方々に対しても自信を持ってお見せできますし、上映会の反応を見ても、あらためて間違いはなかったと、作ってよかったと思えましたね。

――小林さんの演技はリアルで、生々しさすら感じるものでした。役作りでの苦労はありましたか?

小林さん:今まで演じてきたどのキャラクターも同じなんですけど、その人が実際に生きている雰囲気を出したい思いがあります。それはリクオも同じです。ただ、物語の中で熱量が上がるシーンが少ないことで、会話している相手がどんな思いでいるのかを探りながら演じる必要がありました。どんなに役作りや練習をしても、結局相手次第で変わる、そんな難しさはありましたね。

藤原監督:私としては、収録本番前にあるテスト段階の、独特の緊張感を大事にしたいと思いました。「テストのときの緊張感、もう一回出せます?」みたいなお願いもしましたね(笑)。

小林さん:「テストのほうが新鮮で良かったかも」と思うこともあるくらいでしたからね。

――『イエスタデイをうたって』に限って言えば、小林さんだけでなくすべてのキャストが同じ難しさを感じていたかもしれませんね。

小林さん:最初から「こうやろう」と決めていたわけではなく、みんな話数を重ねていく中で最適な答えを見つけていったと思います。だから、後半に行けば行くほど、どんどん良いシーンがたくさん出てくるんです。

藤原監督:そのあたりは私もキャストの皆さんを信頼して、委ねていたところはあります。結果的に想定通りどころか、想定を超える演技を見せてくれました。声に合わせて作画を直す、なんてこともしたくらいですから。

――作中の街並みは決して派手になりすぎず、リアルさを重視しているように感じました。

藤原監督:美術さんががんばってくれました…! 私がしたことといえば、ロケハンで資料を集め、可能な限りイメージを膨らませることでした。あとは「ここはもっと粗くしたほうがいいんじゃないか」「地味になりすぎてもいけないから色を足したほうが良いのでは」といった、本当にこまかな修正くらいです。

小林さん:実際の町中で見るような景色ばかりで、リアルさに驚かされましたね。リクオの散らかった部屋とか、キャラクターの生活感まで見えてくるのはすごいことだと思います。あと環境音もとてもよくて、リアルさがさらに増していますよね。

藤原監督:今回はBGMを極力使わず、環境音で表現したいと考えていました。BGMで、「今は悲しいシーンですよ」みたいに強調しすぎるのは作為的になってしまいます。キャラクターが抱えている心情の微妙なまだら模様の部分を描きたかったのです。
加えて『イエスタデイをうたって』は、どのキャラクターに感情移入するかで物語の見え方が変わる作品だと思います。そこにBGMが入ると、特定のキャラクターにしか感情移入できなくなってしまうんです。

――監督は初期のころからリアルタイムで原作を読んでいるというお話でしたが、そもそも知るきっかけはなんだったのでしょう。

藤原監督:ジャケ買いです(笑)。「この絵柄は独特だな」と魅力を感じて、実際に手に取ってみたら言葉が際立っているなと感じて、当時高校生だった私は「大学生はこんなことを考えているのか」と刺激を受けましたね。アニメ制作にあたって冬目先生とお話したときも作品と似た空気感があって、作品の魅力は先生の魅力でもあるのかな、と思いました。一ファンとして、その空気感を再現できたら嬉しいですし、できることを詰め込みました。

――小林さんはどういった経緯で原作を読んだのですか?

小林さん:僕はオーディションを受けるタイミングで読ませていただきました。最初は一巻だけ買ったのですが、読んですぐに「これは全巻読まなきゃ」と、すぐに続きを買いに行きました(笑)。悩みがいつまでも続く姿がとてもリアルだし、絵柄も冬目先生にしか描けない独特なものだし、本当に出会えてよかったですね。

――最後に、ファンに向けてのメッセージがあればお願いします。

藤原監督:上映会ではファンのみなさんが温かく拍手をしていただいたので、まずは一安心しています。クオリティに関しては最終話まで、しっかりしたものを作ったので、最後まで楽しんでみていただけたらと思います。

小林さん:何十年も経ったとき振り返っても、「出演できてよかったな」といえる作品です。僕だけでなく、このキャスト陣でなければ作れなかったと思います。気が早いですが「またやりたいな」と思えるくらい素晴らしい作品です。ぜひ1人でも多くの方に見てもらいたいですね。

放送情報
 放送局情報:テレビ朝日「NUMAnimation」、BS 朝日
 放送時間:2020 年 4 月 4 日(土)毎週土曜日深夜 1 時 30 分〜
BS 朝日 2020 年 4 月 10 日(金)毎週金曜日夜 11 時 30 分〜
 配信:AbemaTV にて 2020 年 4 月 4 日(土)毎週土曜日深夜 1 時 30 分〜

<地上波同時・独占先行配信>
放送 URL:https://abema.tv/channels/abema-anime/slots/ETm2RL3YdqW2K1
 本編:全 12 話
 配信限定エピソード:全 6 話(AbemaTV 本編終了後に独占先行配信開始)

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©冬目景/集英社・イエスタデイをうたって製作委員会