降幡愛、バースデー当日にスペシャルライブ「Ai Furihata “Trip to BIRTH”」を開催! 時にギターを掻き鳴らし、自身の音世界を表現

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2月19日に開催された、降幡愛さんのスペシャルライブ「Ai Furihata “Trip to BIRTH”」のオフィシャルレポートが到着した。

オフィシャルレポート

降幡 愛はとても不思議なアーティストだと思う。声優としての彼女は、演じているキャラクターの明るくオチャメな少女イメージそのままを体現するキュートな魅力に満ちあふれているが、いざアーティストとしてマイクを手にした瞬間、そこに立ち現れるのは憂いを帯びた大人の顔だ。

2020年9月、ポルノグラフィティやいきものがかりなど数々のアーティストを手掛けてきた本間昭光をプロデューサーに迎えて、本格的80sシティポップをコンセプトにしたデビューミニアルバム『Moonrise』で鮮烈なソロアーティストデビューを飾った彼女。その『Moonrise』をひっさげて、11月に計8公演行ったBillboard Live YOKOHAMA&OSAKAでのスペシャルライブ「Ai Furihata “Trip to ORIGIN”」は、そんな降幡のギャップが魅惑的なアーバンサウンドへと昇華される底知れぬ魅力が、いかんなく発揮されていた。

それから約3ヵ月を経た2021年2月18日、19日。2020年12月にリリースした2ndミニアルバム『メイクアップ』をひっさげて、降幡が2度目となるスペシャルライブ「Ai Furihata “Trip to BIRTH”」の会場に選んだのは、“Trip to ORIGIN”での衝撃を再び呼び覚ますBillboard Live TOKYOだった。2月19日が彼女の誕生日であることにもちなんだ“BIRTH”の文字が踊るこのスペシャルライブは、また一つ大人になった降幡の音楽性――オリジナリティあふれるアダルト&アーバンなサウンドがさらに進化を遂げ、アーティストとしての軽やかなスタンスと堂々たるパフォーマンスを見せつける場となった。そんな2days公演ファイナルを飾る2月19日2ndステージの模様をお届けする。

大人のポップスが楽しめる音楽の聖地・Billboard Live TOKYO。カジュアルな中にもかしこまった雰囲気が漂う会場には今回、このライブのためのスペシャルメニュー「HappyになれるBirthdayプレート」も用意。開演前の客席で、観客が思い思いに豪華な食事やドリンクを静かに楽しんでいるのがBillboard Liveらしい光景だ。そして開演の18時。軽やかなシンセサイザーのBGMにのせて、バンドメンバーと降幡が客席後ろから登場。大きな拍手に迎えられ、ステージ中央に立った降幡が深々とお辞儀をしてハンドマイクを胸に構えると、BGMがキラキラとしたアルペジオに姿を変えて「パープルアイシャドウ」がスタート。ソフトなスラップベースが心地よいダンサブルなサウンドに合わせて降幡がリズミカルに振りをつけ、伸び伸びと切なげなメロディーを歌い上げると、華やいでいた客席が一瞬にしてセンチメンタルな空気を漂わせる。

前回の“Trip to ORIGIN ”のセットリストは『Moonrise』のナンバーを届けるライブだったが、今回は昨年12月にリリースされた『メイクアップ』の楽曲がメインだ。一瞬の暗転からの2曲目は「RUMIKO」。「パープルアイシャドウ」と対を成す男性目線からの楽曲。『メイクアップ』をトレースしたオープニングだ。軽やかなステップを踏む降幡の歌声に、聴くほうの体も思わずリズムを刻んでしまう。そして続く3曲目。弾むイントロでライブタイトルをコールし、大きく手を振りながら「最後まで楽しんでいってくださいねー!」と叫ぶ降幡が歌い出したのは、愛する人と結ばれる想いを描く「シンデレラタイム」。躇いに揺れながらも惹かれていく男女のドラマの中にオーディエンスを一気に引き込んでいく演出が心憎い。

「皆さんようこそお越しいただきました! 誕生日当日のスペシャルライブに足を運んでいただいてありがとうございます!」と挨拶する降幡。この日の記念すべきバースデースペシャルライブは、オンライン配信でも楽しめるということで、iPadを見ながら、リアルタイムで書き込まれるコメントにも丁寧に返事をし、すり鉢状の客席を見渡して「素敵な会場で……ビビリますね!」と笑う。降幡のスペシャルライブは毎回、ドレスコードのカラーが設けられているのも特徴で、“Trip to ORIGIN”はブルーだったが今回はピンク。開催日が平日、しかもBillboard Live TOKYOだということで男性ファンはスーツ姿が多いが、小物にピンク色をあしらったり、ライブグッズとして制作されたピンクの缶バッジを身につけたりと、思い思いにドレスコードを楽しんでいる。髪色をピンクに染めたり、ピンク色のスカートを着込んだりしている女性ファンの姿も鮮やかだ。そして降幡からバンドのメンバーを紹介。根岸孝旨(Ba)、町田昌弘(Gt)、nishi-ken(Key)、会原実希(Cho)の前回から続く布陣に加え、今回は松永俊弥(Dr)が初参加している。

フレンドリーなMCに続いて「カバー曲を1曲披露したいと思います。今回は私の歌いたい曲を」と語って歌われたのは、斉藤由貴の「悲しみよこんにちは」だ。19日1stステージではコーラスの会原と踊りながらWinkの「愛が止まらない ~Turn it Into Love~」がカバーされていたが、今日は降幡が愛する高橋留美子原作のアニメ『めぞん一刻』初代オープニングテーマがセレクトされた。この曲では、会原がサックスも担当。明るく軽快な80sポップスらしい曲調だが、どこか切ない想いを歌う歌詞が降幡の音楽性とも相まって、ふわりと春の匂いを運んでくれた。

そのままセットリストは、アジアンなサウンドを届ける「桃源郷白書」へ。ひらひらと腕を踊らせながらキュートな振り付けを披露する降幡から、甘やかな花の香りが湧き立つ。歌い終えて「今回はお衣装も〈桃源郷白書〉合わせですね。ちょっとチャイナなドレスで登場しました、いかがでしょうか?」と客席に尋ねると、再び大きな拍手が沸く。そしてデビューから今までを「曲もですけど、私自身も一歩一歩成長できているのではないかなと思います」と振り返り、「2月19日、誕生日を迎えてひとつ年を取りまして、また新たな気持ちで皆さんの前で歌えるように、1曲1曲気持ちを込めて歌っています。届いてくれたら嬉しいなと思います」と、ファンの一人一人に「ありがとう」と感謝の気持ちを改めて伝えた。

そして放たれた6曲目は、静かなバラード「OUT OF BLUE」。ファンに向けた真摯な想いが、 “後にも先にも貴方ほど 全てを愛した人はいないのだから”という降幡自身がしたためた歌詞とシンクロする。一つ一つの言葉をしっかりと届ける緩やかで温かい歌声とドラマティックなサウンドに、オーディエンスもシンと聴き入っていた。深々と礼をして「こうして、歌でも皆さんに想いを伝えることができて幸せです」と話していた降幡だが、ここで少しギアチェンジ。「これをすると降幡はだいぶ喜びます(笑)」と笑って決めたのは、両手で“×マーク”を作る“YADA・YADA”のポーズ。“Trip to ORIGIN”でも盛り上がりを見せたあの曲のお目見えだ。

さらに降幡は「じゃあ、私はちょっとコレを……」と、傍らに置かれていたネオングリーン色のギター(Fender Player Lead II)を肩に! 「もっと盛り上がりたいですが、いいですか!!」とシャウトして「Yの悲劇」がスタート。スカのリズムに合わせて降幡が跳ねると、全員が笑顔とともに “YADA・YADA”ポーズで応える。会原のセクシーなサックスソロでは、降幡がステージにしゃがみ込んでギターを掻き鳴らし、熱を上げていく。その熱気は「Yの悲劇」のアンサーソングとして書かれた「SIDE B」へと引き継がれ、ギターを下ろした降幡が大きな手拍子で客席にアピール。アグレッシヴかつクールな町田のギター、タイトな根岸のベースと松永のドラム、きらびやかなnishi-kenのキーボードが疾走感を煽る。そして本編ラストを飾ったのは、パンチの効いた透明なハイトーンも印象的な「ルバートには気をつけて!」。力強い歌声が、降幡の音世界を大きなスケール感で描き出していった。

鳴り止まない拍手が手拍子に変わり、アンコールをせがむ。そして再びステージに登場した降幡が「アンコール1曲目、よろしいですか!」とバンドを振り向き、マニピュレーターの名を呼ぶと……ここでサプライズ! ステージが暗転して会原が歌い、奏でられたのは「Happy Birthday to You」のあのメロディーだ。きょとんとした顔をしていた降幡は「めっちゃ嬉しい」「ヤバい、泣いちゃうよ~」と言いながら表情をくしゃっと崩し、涙を堪えるように目をパチパチ。開演前、事前に用意されていた手描きのメッセージシートを、オーディエンスの1人1人とバンドメンバーが頭上に掲げると、「ええ~! ヤバい! 泣いちゃうよ、感動しちゃう!」とまたも大きな声を挙げる。そこに運ばれたのは、降幡の写真が飾られた大きなバースデーケーキ。フォーマルな服装で登場したプレゼンターの顔を、目頭をそっと拭きながら見ていた降幡が「本間(昭光)さんじゃん!!」ともう一度ビックリする。あらためてプロデューサー・本間が「おめでとう」を言うと、「知らなかった! ありがとうございます、ビックリしました」と降幡。メッセージシートを抱えたバンドメンバーと記念写真を撮影し、客席からの温かな拍手が贈られる。

「ほんとに素敵な音楽を、私の好きなチームと作れていることが、伝わったと思います。なおかつ1人1人がメッセージを……そんなことありますか? 2021年2月19日、忘れられない日になりました! ほんとに皆さん、ありがとうございます。降幡 愛、もっともっと大きくなります。よろしくお願いします!」

バンドメンバーを紹介し、「今度こそ行くよ、ほんとに皆さんありがとー!!」「誕生日嬉しいよ、みんな愛してるー!」と絶叫して始まったアンコールの1曲目は、思い出深いデビューミニアルバムのリードトラック「CITY」だ。ゴージャスなバンドサウンドでのイントロが始まると、それまで黒く覆われていたステージ後ろのカーテンがゆっくりと開き出す。目に飛び込んできたのは、Billboard Live TOKYOのある東京ミッドタウン ガーデンテラスの4階から見下ろす六本木の夜景だ。「CITY」の名にふさわしい林立する美しいビルの灯りをバックに、オーディエンスの1人1人に手を振り、激しくアクションしながら熱唱する降幡。“CITY CITY 二人だけの夜を離したくはない”……感無量といった表情で歌われたそのフレーズは、今宵の誰もが心に刻んだ言葉だったはずだ。

改めて感謝を述べた降幡は、後ろの夜景を振り返りながら「東京に憧れて、都会に憧れて〈CITY〉という曲を書きました。それをこうした夜景をバックに……六本木で歌えて、本当に幸せです」と語り、4月にスタートするZeppツアーへと想いを馳せる。ここで、そのZeppツアーのライブタイトル「降幡 愛 1st Live Tour APOLLO」を発表。「私は皆さんに光を当ててもらって輝ける月のような存在。その月に一緒に来て欲しいという意味を込めてAPOLLOというタイトルを付けました。みなさん、一緒に宇宙旅行しようね!」と笑顔で告げ、その会場では、書き下ろし楽曲を収録した完全数量生産限定盤の7インチシングルレコード「AXIOM」が発売されること、4月11日にはツアーに先駆けて収録曲2曲が先行配信されることも発表された。

「本当に皆さん、素敵な空間、素敵な時間をありがとうございました。これから先、楽しいこと明るいことが待っていると信じて、4月のZeppツアーでお会いできればなと思います」

想いを込めた言葉を添えて、アンコール2曲目に届けられたのは「AXIOM」に収録される新曲「うしろ髪引かれて」。胸をキュッと締め付けるような物悲しいメロディーが、豊かさをたたえた降幡の歌声によく似合うセンチメンタルなナンバーだ。そして「ほんとに忘れられない誕生日になりました。心の中で一緒に歌って踊ってくださいね!」の言葉とともに最後に歌われたのは、華やかな「真冬のシアーマインド」。大きな手拍子にのせた爽やかなボーカルと“スリーツーワン!”の楽しいコールが、「また絶対お会いしましょうねー!」という降幡の大きな呼びかけと一緒に、六本木の夜景に鮮やかに溶けていった――。

“Trip to ORIGIN”と“Trip to BIRTH”。2度のアダルトなスペシャルライブを経て、一回りも二回りもアーティストとしての大きな成長を見せてくれた降幡 愛。4月の「降幡 愛 1st Live Tour APOLLO」では、どんな新しい降幡に出会えるのだろうか? 楽しみは尽きない。

Text by 阿部美香
Photo by 江藤はんな

<2月19日(金) 2ndセットリスト>
1.パープルアイシャドウ
2.RUMIKO
3.シンデレラタイム
4.悲しみよこんにちは
5.桃源郷白書
6.OUT OF BLUE
7.Yの悲劇
8.SIDE B
9.ルバートには気をつけて!

EN1.CITY
EN2.うしろ髪引かれて <新曲>
EN3.真冬のシアーマインド

公式サイト