福山潤、ソロアーティストとして初の“ライブ”を開催。ファンとともに歌詞を作る大胆な企画も

声優

9月15日(日)、東京・有楽町朝日ホールにて「福山潤「dis-communicate」スペシャル・ミニライブ」が開催された。
ソロアーティストとしては、今年1月に行われた2ndシングル「Tightrope」のリリースイベント以来8ヶ月ぶりで、しかも「ライブ」と銘打つのは、じつは今回が初めてとなる。今回は昼夜2公演のうち、昼の部のイベントレポートをお届けする。

<以下、ライブレポートより>

当日の会場は満員御礼。開演を待つファンたちは、まったく予想のつかない「初ライブ」だけに、気のせいかやや緊張した面持ちだ。しかし、勢いよく登場した福山の第一声は「は〜い皆さんこんにちわ〜! どうも〜! 福山潤でございます!」と、まるっきりいつもと同じだった。「ライブをやったことがないので、悩んだ挙句にトークショーと同じ入りをしてしまった」と笑いを取ると、会場の緊張感は一気に解け、冒頭から暖かい雰囲気に包まれた。

OPトークでは、3rdシングル「dis-communicate」の歌詞は、テレビアニメ『真夜中のオカルト公務員』の世界観に馴染むようさまざまな工夫を凝らしてあることや、同アニメで新人公務員・宮古新を演じたことで、自らも初心に帰ることができたなど、制作当時の思い出を振り返った。

OPトークが終わると、最初のコーナーはいきなりの”重大発表”。一般的なライブでは最後に行われることが多い”特報”を最初にぶつけてくるあたりが、何とも福山らしい。突然の展開に会場がどよめくなか、「2ndアルバム「P.o.P -PERS of Persons-」リリース決定」、「2ndアルバムリリースイベント開催決定」、「町田市とのタイアップアニメ出演&主題歌担当」と怒涛の特報ラッシュが続き、最後に「中野サンプラザでのワンマンライブ決定」が発表されると、会場からは歓喜の悲鳴が上がった。

さらにサプライズはこれだけではなかった。続く「みんなで歌詞を作ろうのコーナー」は、今この会場にいるファンから歌詞のフレーズを募集し、それを使って一曲分の歌詞を作ってしまおうという、なんとも大胆で前代未聞な企画。ただしテーマがないとさすがに難しいだろうということで、まずは歌詞全体のテーマを決めることに。20のさまざまなテーマが入ったミュージックボックス(という名の抽選箱)から、無作為に3枚を取り出す福山。そこに書かれていたテーマは、「海外ドラマヒーローがゾンビを倒す歌」、「家族」、「好きなものを最初に食べるか、最後に食べるか」の3つだった。荒唐無稽なテーマに本気で焦る福山の表情に、これがガチ企画だと確信するファンたち。そしてサイリウムを使った観客投票の結果、歌詞のテーマは「好きなものを最初に食べるか、最後に食べるか」に決定する。

ここからは、会場にいるみんなが歌詞をTwitter上に投稿していき、それらを福山がタブレットを見ながらリアルタイムで拾っていくという不思議な共同作業タイムに突入。「先に食べる背徳感」や「横取りされた苦い思い出」など、クオリティの高い投稿の数々に感心しきりの福山。なかには「仏の顔も三度まで」や、「モッツァレラチーズ、はよせいや」などの迷ツイートもあり、それらに対しても丁寧にツッコミを入れながら歌詞を絞り込んでいく福山。そして再び会場のみんなによる投票が行われ、歌詞に使われるフレーズは「敵は最初に倒す」に決定した。予想以上にバラエティに富んだ歌詞の数々に福山は「(この企画を)思いついちゃったんです。でも今は……若干後悔してます(笑)」と苦笑いを浮かべつつ、そのほかの歌詞についてもなるべく多くを楽曲に取り込み、2ndアルバムに収録することを約束した。スマホを持っていない人のために紙とペンを用意するなど、面白くて優しい大人・福山潤の魅力が詰まったコーナーに会場は大いに盛り上がった。

そしてサプライズはまだ続く。先ほど発表された2ndアルバム「P.o.P -PERS of Persons-」のリード曲「パース・オブ・パーソンズ」がすでに完成していることを伝え、さらに「MV、観たくないですか?」と笑みを浮かべる福山。初解禁となるフル尺MVが大スクリーンに映し出されると、オール台湾ロケで撮影されたという福山の新たな表情の数々に、ファンは思わずうっとり。さらにMVのメイキング映像も流れ、ここでは福山自らが撮影の裏側を振り返った。ここで福山はいったん降壇、スクリーンにはミニライブ公式パンフレットのメイキング映像が流れる。リラックスした表情でプライベート感満載な映像を観ながら、ふと「あれ? これってたしかライブだったよね」などと思っていると、突然ステージの照明がガラリと変わった。

ついにライブタイムが始まった。4人のダンサーを従えてステージに姿を表した福山は、シャツをはだけたラフなスタイルにチェンジ。表情はどこまでもクールで、とても先ほどまでずっと喋りまくっていた人物と同一とは思えない。完全にスイッチが入った状態であることが一目で分かる。最初の曲は「Tightrope」。EDM色の濃い軽快なデジタルロックに会場のボルテージは一気に加速。のっけから激しいダンスと振り付けで熱唱する福山の姿に、アーティストとしての覚悟と進化を感じる。続く2曲めは「OWL」。福山潤の代名詞とも言える、心に深く突き刺さるラップが炸裂。サビではダンサーと息のあったパフォーマンスを披露し、どこまでもカッコいいアーティスト・福山潤をこれでもかと見せつける。

楽曲が終わり大きな歓声に迎えられた福山は、「トークライブからミニライブに、やっと変わりました」と、ここでMCタイムに。冒頭から激しい2曲を続けて歌ったことに「本厄の僕にできるのかと不安だった」と心情を吐露。「なんとかなったのかな?」と聞くと、会場からは拍手が巻き起こり、ホッとする一幕も。

MCが終わり、続いての曲は「Breaking Dawn」。引き続きの激しい楽曲にも関わらず、ダンサー抜きでのひとりステージ。サビではマイクを会場へ向け、ファンの「Breaking Dawn」の声がホールに響き渡る。続く4曲めは「Moving」。今日初めてのミディアムテンポに会場は手拍子となり、最後は観客もいっしょになってメロディを口ずさむ。2曲を通し、会場が一体となって盛り上がっていく様子に、改めて福山とファンとの絆を感じた瞬間でもあった。

2回めのMCタイムの話題は「Breaking Dawn」の歌詞について。自分自身はお酒を飲んで記憶を無くすことはないが、どこかに憧れを持っていることや、気付くとどうもダメ男の歌ばかりを歌っている気がすると語る福山は「でも、それでいいかな(笑)」と、これからも方向性を変えないことを宣言し、会場の笑いを誘った。

再びダンサーが登場し、ミニライブもいよいよ佳境へ突入。5曲めは満を持しての「dis-communicate」で、ポケットに手を入れてのウォーキングや緩急の付いた振り付けなど、この日いちばんのキレッキレなダンスを披露。そしてそのテンションを保ったまま「KEEP GOING ON!」へ。さらに磨きがかかった福山のラップに加え、バックダンサーによるロボットダンスやヒップホップダンスなど、ソロダンスもフィーチャー。締めくくりは福山を先頭に見事な千手観音ダンスを見せるなど、パフォーマーとしての成長ぶりも伺わせる2曲となった。

「KEEP GOING ON!」が終わり観客から歓声や掛け声が飛ぶと、「(例え罵声だったとしても)僕の耳は褒め言葉しか入ってきませんから」とニヤリ。続けて福山が「次が最後の曲になってしまいました」と告げると、会場からは「ええ〜」という声が。すかさずに「そう言っていただけたことが何より嬉しいです」と返す福山の表情は、満面の笑みが浮かんでいた。

最後は「Hi-Fi-Highway→」。2017年に行われたSPイベント「ひとりのBocchi Show」でもラストを飾ったこの楽曲で、再びライブを締めくくる。語りかけるような福山のラップとダンサーのパフォーマンス、会場からの声援と、その場にいた全員が最高の笑顔になるひととき。最後に「またお会いしましょう。福山潤でした!」と深々と頭を下げる福山の姿が印象的だった。こうして福山潤”初のミニライブ”は、最初から最後まで笑いと暖かみ、かっこよさが詰まったまま幕を閉じた。1月リリースの2ndアルバムはもちろん、4月に行われるワンマンライブが楽しみでたまらなくなる、そんなライブ体験だったと言える。

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Text by 岡本大介