『ハーモニー』は魂を持っていかれる作品―公開記念舞台挨拶に沢城みゆき、上田麗奈、洲崎綾が登壇

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11月13日より公開がスタートした『ハーモニー』の舞台挨拶が、11月4日、TOHOシネマズ新宿にて開催された。当日は、本作に出演した沢城みゆきさん、上田麗奈さん、洲崎綾さんのほか、監督を務めたなかむらたかし氏、マイケル・アリアス氏が登壇。それぞれが作品に込めた思いを語った。
ボイスの収録自体は約1年前に終わっていたとのことで、長い期間を経て完成を迎えた『ハーモニー』。本作を視聴した沢城さんは「一言ではまとめられない」とコメント。誰かと感想を言い合うことで、初めて答えが出てくるのではと説明していた。上田さんも同意見のようで、「共感し合わないと分からない部分もありました」と話した。そして洲崎さんも、見終わったあと「魂を持って行かれちゃって、しばらく戻って来れませんでした」という。

そんな作品を作り上げたなかむら監督だが、今回の原作を映像化することはとても難しい作業だったという。ともすればチープになってしまう映像作りが上手くいっているかどうか、まだ掴みきれていないそうだ。

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また、キャスト陣が演じたキャラクターについても語られた。沢城さんは自身が演じたトァンのことを「個人を演じた印象がほとんどない」という。キャラクターに関しても一言で表すことがとても難しいようで、収録でもワンシーンワンシーンで監督と確認作業を行いながら演じていたという。

ミァハ役の上田さんは、役をもらった当初は達観したイメージを持っていたが、少しずつ純粋な面があるのではと気づき、演技も徐々に変化していったという。この話を聞いたなかむら監督は上田さんのキャスティングについて、「上田さんの声がちょっと壊れていた」と、独特の言い回しで魅力を語っていた。ミァハという難しい役を演じてもらうにあたって、一風変わった演技力を求めていたそうだ。

洲崎さんの演じるキアンは、3人の中で「一番感情移入しやすいキャラ」とのこと。3人の関係性を保つ、バランサーとしての役割も持つという。そんな人物だけになかむら監督は、上田さんとは対照的に「嫌味のない普通な感じ」の声を持つ声優を求めていたと明かしていた。さらにアリアス監督はキャスティングについて「3人としての対比を重視していた」と説明。結果として現実の世界にもいそうな関係性を描けたと語ると、さらに「3人を選んで正解だった」と賞賛を送っていた。

その後も、キャスト陣3人のお気に入りのシーンや、アフレコ現場でのエピソードなどさまざまな話が飛び出した。その中でも、トァン、ミァハ、キアンの関係性が垣間見える話題がいくつもあり、観客も聞き入っている様子だった。最後には登壇者全員が本作と、原作を遺した伊藤計劃氏への思いを語り、舞台挨拶は幕を閉じた。

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「ハーモニー」

11月13日(金)より
TOHO シネマズ新宿ほか全国劇場にて公開

ストーリー

まがいものの天国で、さまよう魂の物語――。
アメリカで発生した暴動をきっかけに世界を戦争と未知のウィルスのるつぼに叩き込んだ「大災禍(ザ・メイルストロム)」。政府は弱体化し、やがて、人間こそ最重要の公共リソースであると位置づける高度発達医療社会が立ち上がった。<生府>の成立である。

<生府>により、人々は「健康」と「優しさ」を尊ぶ“生命主義”の名の下に、美しく管理されることになった。人々は、WatchMe(恒常的体内監視システム)を体に埋め込み、あらゆるリスクは遠ざけられた。人々は自らを優しい牢獄へと閉じ込めたのである。

霧慧トァンは<生府>の番人であるWHOの螺旋監察官。紛争地域の停戦監視などが仕事だ。だが彼女は、“生命主義”への違和感をぬぐうことができず、WatchMe の裏をかいて、禁止された酒や煙草を嗜んでいた。

かつて彼女には友達がいた。御冷ミァハ。成績優秀でありながら、<生府>の管理を憎悪する少女。個人用医療薬精製システム<メディケア>を騙せば世界を転覆させることだってできるとうそぶく歪んだ天真爛漫さ。トァンと零下堂キアンはミァハに心酔していた。

「私たちは大人にならないって、一緒に宣言するの」

ミァハの導くままに死を試みる2人。そしてミァハだけが死に、トァンとキアンだけがこの牢獄に取り残された。13 年が経ち、WHOから母国での謹慎処分を言い渡されたトァンは、善良な市民として暮らすキアンと再会。事件以来、対照的な生き方をしてきたふたり。ミァハ不在の食事は、殊更に彼女の存在を際立たせるものだった。再会の最中、ある犯行グループによって同時に数千人規模の命を奪う事件が発生。キアンもその犠牲となるが、死に際にある言葉を遺した…。

犯行声明として発せられた彼らの「宣言」により、世界は「大災禍」以来の恐怖へと叩き落される。それは、平和に慣れすぎた世界に対しての警告であり、死んだはずのミァハの思想そのものだった。トァンはミァハの息遣いを感じながら、事件の真相を求めて立ち上がる。

キャスト

霧慧トァン /CV:沢城みゆき
御冷ミァハ /CV:上田麗奈
零下堂キアン /CV:洲崎 綾
オスカー・シュタウフェンベルク /CV:榊原良子
アサフ /CV:大塚明夫
エリヤ・ヴァシロフ /CV:.三木眞一郎
冴紀ケイタ /CV:チョー
霧慧ヌァザ /CV:森田順平

スタッフ

原作:「ハーモニー」伊藤計劃(ハヤカワ文庫 JA)
監督:なかむらたかし/マイケル・アリアス
脚本:山本幸治
キャラクター原案:redjuice
演出・CGI 監督:廣田裕介
キャラクターデザイン・総作画監督:田中孝弘
プロップデザイン・作画監督:竹内一義
メカデザイン・エフェクト作画監督:渡辺浩二
色彩設計:成毛久美子
美術監督:狹田修/新林希文
編集:重村建吾
音楽:池 頼広
録音演出:名倉靖
音響デザイン:笠松広司
主題歌:「Ghost of a smile」EGOIST(ソニー・ミュージックレコーズ)
アニメーション制作:STUDIO4℃
制作:Project Itoh
配給:東宝映像事業部

公式サイト

(C)Project Itoh / HARMONY