磯光雄監督最新作『地球外少年少女』“未来予測”完成披露試写会が開催。「宇宙に行きたいという気持ちを持ち続けてほしい」

左から・成田、和氣、藤原、磯、榎本
イベント

1月28日より前編、2月11日より後編が各2週間限定で新宿ピカデリーほかで劇場上映されるオリジナルアニメ『地球外少年少女』。TVアニメ「電脳コイル」で<2007年文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞><第29回日本SF大賞受賞作品>など数多くの賞を受賞した磯光雄が15年ぶりに原作・脚本・監督を務める話題の最新作が遂に完成。

本作の上映に向けて、オリジナルアニメ『地球外少年少女』“未来予測”完成披露試写会が実施され、本邦初公開となる前編が遂に公開された。上映後にはゲストによるトークショーを実施。磯光雄監督に加え、“月で生まれた子供たち”を演じる「登矢」役の藤原夏海さんと、「心葉」役の和氣あず未さんが登壇。また、東京大学を首席で卒業し現在はイェール大学で助教授を務め、近年は西村博之さんらと共に様々なメディアで活躍する成田悠輔さん(社会経済学者)がスペシャルゲストとして参加。本作で描かれる『磯光雄が描く未来予測』について語りました。

■オリジナルアニメ『地球外少年少女』“未来予測”完成披露試写会イベントレポート

1月9日(日)に、日本科学未来館・未来館ホールにて、オリジナルアニメ『地球外少年少女』“未来予測”完成披露試写会が開催され、前編「地球外からの使者」が遂に初お披露目となりました。会場には、『電脳コイル』から注目しているファンはもちろん、「日本宇宙少年団」の子供たちや、親子で参加する家族の姿も見られ、幅広い層が本編の上映を楽しみました。

上映後にはトークショーが行われ、磯光雄監督をはじめ、メインキャラクターを演じる藤原夏海さんと和氣あず未さんの3名が登壇。まず、15年ぶりの新作を届けられた感想を監督に伺うと、「新作が完成するまで7年ほどかかってしまいました(笑)。これからスペースXなど商業宇宙がTVでも話題になり、宇宙が盛り上がることになると思います。丁度良い時期に作品を届けることができたと思っています。宇宙の面白さを届けたいと思って作りました。」と感想を語りました。また、どんな人に本作を届けたいかと伺うと、「この作品を観て宇宙を目指す人が出てきてくれたらと思っています。将来、JAXAやスペースXに入りました、なんて人が出てきてくれたら嬉しいです。」とコメント。宇宙に興味のある子供たちはもちろん、宇宙を知らない人にこそ、本作を楽しんでもらいたいという監督のあふれる想いが語られました。また、今回のMCで参加した、JAXA研究開発プログラム「J-SPARC」ナビゲーターなどを担当する宇宙キャスターの榎本麗美さんは、「宇宙が舞台のアニメを見て宇宙飛行士を目指したり、JAXAに入ったという方も多いので、子供たちには宇宙のアニメが必要だと感じていました。宇宙を舞台にした磯監督の待望の新作が登場して嬉しいです。」と作品への期待を語りました。

メインキャスト陣からは、それぞれのキャラクターの説明が行われ、藤原さんは、厨二病で表情も不愛想な少年・登矢について説明。人類初の月で生まれた子供の一人で、相棒のドローンであるダッキーが物語のキーに。磯監督の印象を伺うと、「1話の収録の際に、作品の概要を説明してくれましたが、熱意があり、良い作品を作ろうとしているんだなという雰囲気が伝わりました。」と収録を振り返りました。続いて、和氣さんも、自身が演じる心葉の説明を行い、登矢と同じく月で生まれた子供の一人であることを紹介。身体が弱いが、精神年齢は登矢よりも上で、彼を母親のようにフォローする役柄だと説明。謎の声が聞こえるという点がキーワードとなり、「今後の見どころにもつながってきます。」と紹介されました。また、和氣さんにも同じく監督の印象を伺うと、「これまでの作品は、監督と直接お話しするような機会は少なかったのですが、本作では、磯監督が自分の熱意をまっすぐに伝えてくれます。分からない用語なども、熱心に教えてくれました。」と収録時を振り返りました。また、2人の演技について磯監督に伺うと、「役を掴みきるまでは大変だったと思いますが、藤原さんは、途中から大きな成長を遂げたように思います。また、和氣さんは、最初から完璧で、今にも息が絶えそうな心葉の様子を見事に表現してくれました。」と演技を絶賛すると、キャスト陣が嬉しい様子で笑顔を見せました。

イベント中盤には、スペシャルゲストも登壇。『電脳コイル』のファンでもあり、未来の社会システムに精通している成田悠輔さんを交えて、作品の魅力を語るトークを行うことに。
成田さんは、今から15年前に「仮想世界研究会」に参加していた頃、磯さんがゲストで来てくれた時の様子を振り返り、見た目も今と変わらぬ姿だったため、「磯監督こそ宇宙人のような人」と印象を語りました。

そんな成田さんに本作の魅力を伺うと、「“神様のいない時代の宇宙”を描いているように思います。現代は、お金持ちだったり、政治的な匂いがする宇宙のイメージが強いが、本作では、身体がか弱くコンプレックスを持っている子供たちや、SNSのフォロワー数に一喜一憂するような人間っぽさを持つ等身大の子供たちが登場し、宇宙空間でどうなるのかをビビッドに描いています。お金と権力にまみれて、力を持たないと語ってはいけないと思われている宇宙を僕たちの手元に取り戻してくれる“宇宙解放宣言”という面があるのでは。」とコメントしました。監督もその意見に大きく同意し、「今はお金持ちだけが行ける宇宙ですが、これからどんどん行きたい人が増えて、いずれは普通の人が行ける普通の場所になると思います。」と強く語りました。

そして、成田さんにさらに、本イベントのテーマでもある「磯光雄が描く未来予測」について伺うと、「もっとすごい未来が訪れるのではと思っています。本作の登場人物は少なめだが、今後は人間の社会が作られるくらいの人々が宇宙で生活すると思います。現在の世の中の制度は数千年かけて作られてきましたが、それを一旦ゼロにして、何もないところから新しく制度を作りはじめることになります。人類の歴史としても起きたことが無いような巨大な実験が始まります。そんな中、『地球外少年少女』ほど、生活ディテールを含めて、宇宙における生活を細かく描いている作品は見たことが無いと思います。」と、スケールの大きな未来予測に加え、作中のリアリティについて学者の視点からも興味深いと感想を語りました。

そしてイベントでは、宇宙に興味を抱く子供たちが所属する「日本宇宙少年団」の団員より、監督への質問コーナーも行われました。高校生の男の子が緊張しながらも「映画が面白く、キャラクターデザインやキャラクターの性格がとても良かったです。」と作品を称賛し、「今回の制作で一番大変だったことはどこですか。」と監督に尋ねると、「宇宙を知らない人が見ても楽しめることを前提にして作りました。宇宙を勉強しているうちに、これは実際とは違うのではと止めようとした部分もありましたが、勉強する前の自分の気持ちを忘れないように、面白いと思ってもらえるように作りました。」と、作品への想いが語られました。

様々なテーマでの熱いトークが繰り広げられた後、登壇者一人一人よりメッセージが贈られ、大盛況のイベントは幕を閉じました。

藤原さん
「(宇宙商業ステーション)“あんしん”に行ってみたくありませんか?地球を見ながら温泉につかってみたいです。
この作品を通して、宇宙に対してさらに興味が出ました。後半もいろいろ詰まっていますので、楽しみに待っていてほしいです。」

和氣さん
「この作品を観てから、宇宙、惑星や、星、銀河などを調べるようになりました。宇宙という大きな規模のものは、一人でも関わることで未来が変わっていくのではと思います。ぜひ未来ある子供たちに宇宙を目指していただけたらと思います。」

成田さん
「後半の最終話はすごいことになっています。磯監督の暴走っぷりが堪能でき、全く違う作品と言ってもいいような急展開が待っています。後編も楽しんでください。」

磯監督
「宇宙は人間があまり行ったことのない不思議な場所で、未知な場所に憧れる気持ちがあると思います。これからいろんなことを勉強して、難しいなとか、無理かなと思うことがあるかもしれないのですが、最初に“行ってみたい”と思った時の気持ちをしっかりと持ち続けてほしいと願っています。」

公式サイト 公式Twitter 作品概要
©MITSUO ISO/avex pictures・地球外少年少女製作委員会