『EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』スタッフトークイベントが開催。ストーリー制作の裏側に迫る

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全国公開中の『EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』について、12月22日(水)新宿バルト9に、監督の京田知己、脚本の野村祐一、SF設定考証の森田繁が登壇して、トークイベントを実施した。

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全国絶賛公開中の『EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』。その公開から約1カ月経った12月22日(水)、本編上映後にスタッフトークイベントが実施され、監督の京田知己、脚本の野村祐一、SF設定考証の森田繁が登壇し、ストーリー制作の裏話を明かした。

TVシリーズ『交響詩篇エウレカセブン』に脚本で参加し、本作で「ハイエボリューション」シリーズ初参加となった脚本の野村は「前作の『ANEMONE/交響詩編エウレカセブン ハイエボリューション』の頃に少しお話をいただいていた」と明かし、京田監督は「TVシリーズの時に膝を突き合わせて脚本を詰めさせてもらった人の一人。面白いセリフを書かれる方で、とても印象が強かったんです。『ANEMONE』では、脚本と絵コンテと演出と監督と多くの役割で死にそうになったので、『EUREKA』をスタートする時に、セリフを書ける人が欲しいとプロデューサーに相談すると野村さんのお名前がすぐに上がり、相談させてもらいました」とオファーした経緯を述べた。

森田はシリーズ1作目の『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』から携わっているが、TVシリーズを「大変そうな作品だな」と視聴者として観ていた作品だったと明かし、京田監督はオファーした理由として「設定考証を相談できる方を探していて、他作品で森田さんのお仕事を拝見していたので、お願いします!」とオファーしたと言う。

次にSF設定考証の話へ。本作におけるSF設定考証とは、その世界の政治形態や軍の組織、宇宙船、この世界の雰囲気で生きている人々の生活などを構築していくことを言う。森田は「本当にスクラップアンドビルドの繰り返し作業なんです。」と説明しながら、「シナリオと考証は本来同時進行にしたいのですが、そういう現場は少ないんですね。ただ本作は非常に理想形に近い現場で、世界を構築できたと思います。」と本作の制作過程について言及した。

そして、前作『ANEMONE』から10年の時を経た本作。京田監督は「この『EUREKA』でシリーズが完結した後も、次のお話が作れる作品を目標にしました。そこから設定の見直し、配置の見直しをしていきました。それで、次のキャラクターにまっさらな形でつなぐことができる、持続可能な新しい世界を作ろうと思っていました。」と本作の原点であるエピソードを話した。

そして森田は「『交響詩編エウレカセブン ハイエボリューション1』の時にはTVシリーズの時に使った素材をリユースし、新しい解釈を入れるというトリッキーなことをやるのだな、と感じていました。でも『ANEMONE』『EUREKA』でまた変わりました。この人は予想外のことを考える方だなと実感しました。『ANEMONE』で話の舞台が飛んだ時、お客さんはもちろん、監督以外のスタッフも驚いたと思います。(笑)監督の中で構築されているものを読み解くのがスリリングでした。」と京田監督への印象を語った。また、森田は1メートル半にも及ぶフローチャートが京田監督から送られてきたが「見なかった!」と笑いを誘う一幕も。

野村は今回のストーリーを作って行く時に「最初に監督からのイメージをいただきまして、コツコツ組み立てていくのですが、一番最初のTVシリーズから、十何年間客として見ていたので、TVシリーズの記憶が入り込んでいて、でもその時に京田監督が求めているものはそれではないというのが理解できたので、そのギャップが難しかったです。監督から『EUREKA』は“ロードームービーだ”と伺い、「エウレカとアイリスの2人の人生を“旅”と表現するなら、『EUREKA』は“ロードムービー”と言える」と思っていたら、車で逃避行する、本当の“ロードムービー”なんだ!と驚いたことがありました。」(笑)と明かすと、それに対し森田も「なぜドイツのアウトバーンの交通標識を調べるんだ!?」と驚いたという。
京田監督は野村への印象として「消しても消しても、野村祐一というところがすごい。映画はやはり尺もあるので、脚本から端折ったりすることがあるんですが、それでも、そこかしこに野村祐一が出てくる。変えても変えても野村祐一が出てくる。(笑) 自分だったらこうはできないなと思います。」と絶賛した。

印象に残っている場面として森田は「軌道エレベーターを赤道からではないところから立つというのを設定したのですが、文献を調べ、縮尺模型を作った結果、実際なんとかいけそうだなと思い、今回のアイデアは実現可能と確認できました。この仕事ができてよかったなと思います。」

野村は「エウレカがクレジットカードを何度も割るシーンです。脚本では1回だったのですが、完成したものは何度も割っていましたね。プラスチックに関する環境問題が、最近話題になっているのに・・・」と冗談で笑いを誘いながらも「やはりエウレカとレントンが再会するとこはほんとになんとも言えないですよね。やっぱりグッときました。」とそれぞれが携わった印象深い場面を紹介した。

ここで時間が来てしまい、最後の挨拶へ。
森田は「『エウレカセブン』シリーズの様な作品は、日本のアニメ界でも作りにくくなっていると思います。こういう作品がこれからも見られるように、皆様に応援してほしいと思っています。」
野村は「レントンとエウレカの旅の終わりをみなさんと一緒に見送ることができて本当に嬉しいです。感無量です。エウレカとレントンの話は一旦終わりましたが僕たち3人はまだまだ頑張ります!これからもよろしくお願いします!」とコメント。
京田監督は「いつも僕の前の人が締めてしまう(笑)」と嘆きながらも「正直作り終わった後に、4週間も上映してもらえるのかと言う不安がありました。難しい話ですし、複雑な作品ですので、4週間上映していただくことができて本当に感謝しています。作った甲斐がありました。スタッフキャストを代表して御礼申し上げます。今日のトークショーのように、楽しい雰囲気で作ってきました。この先も楽しい雰囲気のまま作ったものをみなさんに届けられればと思います。」と感謝し、締めくくった。

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