『LIP×LIP FILM×LIVE』ではキラキラしていない人間らしさを見てほしい―生みの親・HoneyWorksにインタビュー

インタビュー

12月25日(金)より公開がスタートした『HoneyWorks 10th Anniversary “LIP×LIP FILM×LIVE”』。
本作は、HoneyWorks(ハニーワークス)がプロデュースする、勇次郎(ゆうじろう・CV:内山昂輝)と愛蔵(あいぞう・CV:島﨑信長)による男子高校生2人組のアイドルユニット「LIP×LIP」結成秘話を描いたアニメパートと、2人のバーチャルライブパートを収めた新作映画だ。

今回は、LIP×LIPの生みの親であるHoneyWorksのメンバー、Gomさん、shitoさん、ヤマコさんの3人にインタビューを行った。結成10周年を迎えるHoneyWorksがLIP×LIPの映画で見せたかったものとはなんなのか、そして映画で2人はどんな表情を見せてくれるのかを伺った。

アイドル、友情、ドキュメンタリー…ユニットのすべてを詰め込んだ映画

――本日はよろしくおねがいします。まず、『HoneyWorks 10th Anniversary LIP×LIP FILM×LIVE』を制作することになった経緯から教えてもらえますか。

Gomさん(以下Gom):2020年はHoneyWorksの結成10周年という節目の年で、記念としてアニメ作品をなにか作りたい気持ちは以前からありました。それと同時にLIP×LIPが結成したときのエピソードがまだ描けていない気持ちもあり、この2つが組み合ってできたものが今回のアニメ映画になります。

LIP×LIPがデビューしたころをアニメにする考えは、具体的なものではありませんでした。しかし小説などのメディアミックスを展開し、また楽曲を制作する中でキャラクターのイメージも膨らんでいって、いつしか彼らが一人で歩いてくれるような感覚になったのです。現在の彼らが自らの力で歩いてくれるなら、僕たちとしても過去の話を見てみたい、知りたいと思い、アニメで描きたいと決断しました。

shitoさん(以下shito):ニコニコ動画にアップロードした「夢ファンファーレ」の動画に「結成秘話が見たい」というコメントがあって、そういったファンの方々の声も参考にしましたね。実際にアニメで結成までのストーリーを描くにあたっては、キラキラしすぎないようにしたい、とは考えていました。アイドルとしての部分だけでなく、可能な限り人間らしいLIP×LIPを見せたかったんです。

ヤマコさん(以下ヤマコ):MV(ミュージックビデオ)を描いていたときも、アイドルの部分と、私生活の闇を抱えた部分の二面性は意識していました。だからといって、そこまでガッツリ見せることもできていなかったので、今まで隠していた部分、見せられなかった表情を出せたら、というのはスタッフの皆さんに要望として出しました。

――勇次郎と愛蔵の個性というところでは、今まで描ききれなかったところがあると思います。今回のアニメではどのように描こうと考えていましたか。

ヤマコ:勇次郎はキラキラしたアイドルらしさや、あざとかわいい見られ方をする機会が多かったと思うんです。でも実際は生意気だったり、口が悪かったりする面があって、アニメではそれを全面に押し出したい気持ちがありました。
MVでもそういうシーンをいくつか入れたときはファンからの反応が良かったし、なにより意外性がありますから、ここはぜひ大きく見せたいと思いました。

愛蔵はキザでチャラいイメージがありますが、実は面倒見が良くて、人のことをしっかり見ているんです。これもまたアイドルの姿とは違った一面で、かわいげがあるんです。

shito:アイドルとしてだけでなく、人間としても好きになってほしいんです。そのためには本当の性格や悪い部分もしっかりと見せたい思いはありましたね。だからオーディションやレッスンといったアイドルらしい一面も見せつつ、家族との関係や人間ドラマがストーリーになっているんです。私生活で逆境があったほうが、人間としても、キャラクターとしても成長しますから。

――ただ、2人の人間関係を細かく描こうとするとかなりのボリュームになるでしょうし、限られた上映時間との戦いにもなってきそうです。

ヤマコ:私の中では今回の映画だけで全てを見せる必要はないと思っていました。映画が終わっても2人の物語は続くわけだし、2人の関係性も、これからどんどん変わっていくと思うんです。多分、これからも2人はたくさんの壁にぶつかると思うし、成功だってたくさんするはずです。未来を描く余地を残しつつ、今描けるものを集中的に描いたので、すべてを詰め込もうという気持ちはそもそもありませんでした。

――勇次郎と愛蔵の家族関係というのも大きなテーマになっていますが、具体的にどういったところを深く描こうと考えたのでしょうか。

shito:2人は家族の存在が逆境にもなっていて、それを乗り越えるときの複雑な感情は表現したかったところです。1人で乗り越えるのではなく、2人が支え合って壁にぶつかっていく様子は、見ている人からきっと応援してくれると思うんです。

Gom:僕たちもHoneyWorksとして10年間活動してきましたけど、彼らの活動を見ていると似ているところがあると感じます。2人が感じる憤りとか、それを乗り越えた達成感とか、通ずる部分がありました。ちょっと後付けにはなりますが、僕たち自身の感情や、考え方の変化も描けているんじゃないかと思います。

――HoneyWorksさんの作品だと、『告白実行委員会』がアニメにもなっています。その時の経験が活きたところはありますか?

shito:個人的には経験が活きたというより、新しい挑戦のほうが多かった気がします。『告白実行委員会』ではテーマを恋愛に絞っていましたが、今回は友情もあればアイドルとしての一面も描き、ヒューマンストーリーやドキュメンタリー的な描き方など、とてもたくさんの側面があります。それらをひとつにまとめ上げる必要があり、『告白実行委員会』とは別物でしたね。

ヤマコ:『告白実行委員会』は恋愛というひとつの感情を徹底的に描く必要があり、それはそれで大変な反面、他をそぎ落とせるやりやすさもありました。『LIP×LIP FILM×LIVE』だと勇次郎と愛蔵、その家族でさまざまな感情が渦巻いていますからね。

――キャラクターデザインや劇伴など、アニメ制作におけるこだわりについてもお聞かせください。

Gom:オープニングとエンディングにはやっぱりこだわりましたね。どんな楽曲ならアイドルものでもあり、ヒューマンストーリーでもある本作に寄り添えるのかはとても悩んだところです。
オープニングに関しては分かりやすいインパクトと、アイドルらしいキラキラした感じを大切にしました。逆にエンディングは本編で見せたストーリーに絡んだメッセージを持たせたいと思いました。作品を通しての感情の流れであったり、テンポ感を意識していて、エンディングを作るために本読みに参加させてもらったりもしましたね。ストーリーの流れが分からないと、最後を締めるエンディングを作るのは難しいので。

shito:逆にそれ以外、作中で流れるBGMに関してはほぼお任せでした。以前から僕たちが編曲をお願いしているチームがあり、すでに信頼関係も築けていたので、なんの心配もしていませんでした。実際、出来上がったサウンドはクオリティが高くて嬉しかったです。

ヤマコ:キャラクターデザインだと、オリジナルに寄せていただくのは前提として、表情にもこだわってもらいました。勇次郎のちょっと影が垣間見える瞬間とか、愛蔵のニカッとした笑顔とか、一瞬見える表情が大切になると思っていたので。

――本作では勇次郎と愛蔵が出会いを描いたアニメの他に、2人のバーチャルライブも楽しめますよね。こちらはどういった経緯で映画の中に組み込もうと考えたのでしょう。

shito:これはアニメを制作するスタッフの方々から提案していただいて、僕たちもぜひやりたいと思ったアイディアです。彼らの生い立ちと感情を知って、そのままライブが始まったら見方も変わると思うんです。それにバーチャルで、どこでもライブができるのは彼らの魅力なので、やらない手はないだろうと。

Gom:セットリストはいくつかのパターンがあって、上映時期によって変わってきます。すべて違った表情が見れて、何度も楽しめると思うのでぜひ見てもらいたいところです。

――アニメとバーチャルライブを通して、あすかなの2人が要所で登場するのも印象的でした。

ヤマコ:LIP×LIPのライバルになってくれるといいなと思っていました。年齢も近いし、出身も東と西で対比になっていますし。なにより、LIP×LIPは出会ってばかりで仲が決して良くないのに対して、あすかなは最初から仲がとてもいいんです。

shito:群像劇というか、さまざまなキャラクターをさまざまな視点で描くのはHoneyWorksの特徴で、主人公だけでなく周りの人物も同じように生きて、動いているんです。今回の映画ではあすかなの2人が、群像劇らしさを上手く表現してくれる存在だと思います。

――今回の映画がLIP×LIPのゴールではなく、今後もまだまだ2人の活動は続いていくと思います。皆さんとしては、今後どんな成長を見せていきたいと考えていますか?

shito:ライブの規模はどんどん大きくしていきたいですよね。今回はバーチャルライブという見せ方をしていますが、もちろんリアルな会場、例えば武道館だったり、アリーナだったり、そういった大きな場所での活躍も見てもらいたいです。大規模なライブが実現して、いずれはリアルのアーティストと対等な存在になってほしいですね。

Gom:僕たちとしてはファンの方々が飽きないよう、絶え間なくさまざまな作品を提供していきたいです。アーティストはシングルを出し、アルバムを出し、ライブをするという大きな流れがあって、これを途絶えさせないことが使命です。その上で2人の素の部分であったり、キラキラしたアイドルの部分であったり、さまざまな表情を見せていきたいです。

ヤマコ:ビジュアル面で言えば、勇次郎と愛蔵がアイドルデビューしたのは中学3年生で、これからもっと成長していくと思います。成長する過程で着てほしい衣装もたくさんありますし、どんどんバリエーションを見せていきたいです。今までは年齢の都合で制服姿が多めでしたが、おしゃれな私服とか、ファンタジーなコスチュームとか、できることはまだまだあると思います。

――それでは最後に、『LIP×LIP FILM×LIVE』のどこに注目してもらいたいか、皆さんから一言いただければと思います。

Gom:音楽とアニメの融合はとても新鮮で、アニメのストーリーが終わった後もライブを存分に楽しんでもらえればと思います。

shito:キラキラしていない彼らが見られるのはこの映画だけです! ぜひ彼らの素の部分を知って、さらに推してもらえると嬉しいです。

ヤマコ:結成時のエピソードを知った上で見るバーチャルライブは、LIP×LIPの成長した姿そのものだと思います。成長過程と、その結果がこの映画の見所ですね。

――ありがとうございました。

『HoneyWorks 10th Anniversary “LIP×LIP FILM×LIVE”』
12月25日(金)より全国公開
配給:東映

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