TVアニメ『宝石の国』スタッフ登壇のトークイベントが開催。オープニング制作やパッケージデザインの魅力に迫る

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TVアニメ『宝石の国』最終話の放送直前となる12月23日(土)に、渋谷のHMV & BOOKS SHIBUYAにてスタッフ登壇のトークショーが行われました。
司会を務める東宝の武井克弘プロデューサーとアニメーション制作を手掛ける制作会社オレンジの和氣澄賢プロデューサーが登壇し、まずはアニメ『宝石の国』の企画当初を振り返ってのトークからスタート。
武井プロデューサーがアニメーションの企画をスタートしたのが2013年、そして、オレンジで2015年より制作を開始。長い年月をかけて作られてきた作品がついに最終話を迎えることになった。

和氣さんは、最初に企画を聞いた時、「フルCGでキャラクターを描くというチャレンジが面白いと思いました。オレンジはCG制作に特化した現場だが、自分は作画のアニメの現場から移ってきたばかりだったので、最初はCG制作を勉強するために、色々な会社でCGの作り方を学びました。」と、自身としても初のアプローチで作品を手掛けていく苦労を明かした。

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また、いよいよ放送となる最終話の見どころについて、武井さんは「オープニング楽曲にも少し変わった仕掛けがあります。また、朴璐美さんが演じられるパパラチアの声が今回、初めて聴けるので楽しみにしてください。第1話でやって来た月人の身体から黄色い矢が出てきたのですが、あれはヘリオドールの欠片。最終話の回想シーンでヘリオドールが登場する貴重なシーンが見られるので、ぜひ注目してほしいです。」と期待を込めて語った。

続いて、オープニング楽曲プロデューサーの照井順政さんが登壇。武井さんは、照井さんの起用について、「『宝石の国』は、特に音楽が大切な作品で、作品を象徴するような印象的な音楽にしたいと思っていました。歌唱は表現力が豊かでどんな曲でも歌えるYURiKAさんにお願いしたいと決めていたのですが、照井さんが音楽プロデュースを務めるアイドルユニット「sora tob sakana」や、「ハイスイノナサ」(照井さんが所属するロックバンド)の曲を聴き、アイドルソングと前衛的ロックを往復する照井さんの活動に興味を持ちました。『宝石の国』も、キャッチーなキャラクターやドラマがありながらも表現自体は先鋭的な漫画なので、その創作観に繋がるものがあると感じました。」と語り、照井さんは、「市川先生のコミックは最低限の情報を与え、読み手に想像させる余地を残した作品。アニメ本編は見やすく情報を与えるように意識した作りになっていますが、オープニングテーマとエンディングテーマは、あえて原作のテイストを残すようなコンセプトで作りました。普段、自分が作る音楽は、音楽的な情緒を消したり、人間味を消すことによって、逆に消した部分を匂い立たせるような手法を取っていますが、その手法が、この作品にも合っていると感じました。」と楽曲のコンセプトを語る。

また今回は、映像と音楽を同時に作っていく贅沢な試みをしており、照井さんがイメージした「最初は音や言葉も破片のようにバラバラに散っていて、それがサビで一気に集約していく」という曲のイメージを活かし、散らばる欠片が集まっていき途中でタイトルロゴが現れる映像が作られたという制作秘話も語られた。

そして、ここでオープニングテーマを歌うアーティスト・YURiKAさんが登場。最初に楽曲を聞いた時、YURiKAさんは「これまでは、周りが感じる自分自身のイメージを表現したような明るい楽曲が多かったのですが、この曲には独特な空気感があり、自分にうまく歌えるのかと最初は不安に思いました。」と最初の印象を語る。
また、レコーディングでは、「ドラムだけでなく、灰皿やスプレー缶など、スタジオにある色々な物を叩いて音を集めて作りました。」と楽しそうな収録の様子を語った。

さらに、今回の印象的なオープニング映像を制作した映像ディレクターのカヤックの天野清之さんが登壇。今回、初めてアニメのオープニング映像を手掛けたとのこと。
和氣さんより、原作コミックの表紙のイメージを保ったまま、平面的な絵をカメラワークを使って立体的に見せたいというコンセプトを伝えられ、映像のプログラミングを得意とする天野さんがそのイメージに近付けた映像を作り上げた。
また、イベントでは、初期段階のビデオコンテが初上映され、三角形のポリゴンが集まりタイトルロゴが浮かび上がる様子や、宝石達が次々と映し出される印象的なカメラワークなど、完成版の映像に繋がる貴重なコンテが披露された。

また、何度かアレンジした映像のうち、採用されなかったバージョンも披露され、OP最後に登場するフォスの腕や足にノイズが入っている映像も公開。
天野さん曰く、「作中では、フォスが壊れて再生していきます。成長していき、心に少しずつ色々な物を抱えていく様子を表すために、身体の変化が起こる部分にノイズを入れてみたバージョンを作りました。」このバージョンはネタバレに繋がるとして未公開になってしまいたが、細かなこだわりが随所に詰められた映像を試行錯誤して作っている様子が伝わった。
出来上がったオープニング映像についてYURiKAさんは、「ただただ感動しかないです。宝石の鮮やかさや、浮遊感を感じる素敵な映像でした。」と映像を見た時の印象を語った。

また、天野さんはこれ以外にも、オープニングCDのジャケットやCM制作も携わることになりました。CMは宝石型のモチーフを発砲スチロールで作り、そこに色々な映像をプロジェクトマッピングで照射して作るという凝った作りになっている。
さらに、天野さんより提案があり、7話に登場するアンタークの登場にあわせてカウントダウンサイトも実施された。放送局4局で放送時間が異なるため、画面を4分割に分け、放送されるごとに画面が解放される仕組みを作り、アンタークの登場を演出した。天野さんはオープニング映像だけでなく、作品の様々な面でアイディアを出していった。

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続いて、発売中のBlu-ray & DVDのパッケージデザインを手掛けるチコルズの山田知子さんが登壇。普段は書籍のデザインをメインに手掛けており、アニメのパッケージデザインは今回初めて手掛けるとのこと。

山田さんは、コンペ用に提案したBlu-ray & DVDのパッケージ案を公開し、「こんなものが出来るわけないというコスト度外視でアイディアを出しました。」と語る、透明なレイヤーで作られた豪華なパッケージ案や、自分の好きなキャラを出して組み替えることができる鉱物ケース案など、デザイン性に富んだ様々なアイディアのパッケージ案を披露。そして、3つ目に提案したジュエリーボックス案が現在のパッケージデザインとして採用されたという。

パッケージの角を切り落とし、ジュエリーボックスのイメージで作ったデザインで、箔を押す面積も何度も調整してもらったというこだわりが詰められている。
また、各巻のイラストのコンセプトとして、「光と線で表現する」イメージが語られ、山田さんは「リアルな表現とマンガ的な表現が混ざると面白いと感じ、それが今回のデザインのテーマになっています。」と語る。

今回のパッケージデザインを進めていく間に、斬新な表現だけでなくパッケージとして目立たせるような処理が必要ではないかと悩んだ時期があったことも語られ、その際、周りからは「見たことの無い感じが面白い」と言われ、「現場全体が全てに挑戦している感じがありました。自分のコンセプトを最後まで大事にして頂いたと感じました。」と語った。

収録されているブックレットについても、美しい設定画をたくさん見せたいと思ったため、「限られたページ数の中で世界観の魅力を整理して見せたいと思いました。宝石たちが持つ剣の形や長さなど、細かい設定があり、とても興味深いです。BD & DVD 3巻以降には、物語の中でも重要な資料を入れようと思っているので、楽しみにしてほしいです。」と語ると会場から歓声が上がった。

アニメーション本編はもちろんのこと、音楽やオープニング映像、パッケージなど、あらゆる面でのこだわりが詰まった作品の裏話が語られ、イベントは大盛況で幕を閉じた。

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以下は、登壇したゲストよりファンへのメッセージとなる。

武井さん
「原作愛とチャレンジ精神に溢れたスタッフが集まってくれたおかげで、とても楽しく作らせて頂きました。大好きな原作を世の中に広めたいという初期衝動でアニメを企画しましたが、結果、原作へのリスペクトゆえに漫画とはまた別個の良い作品が出来たのではと思います。Blu?ray & DVDも続きますので、引き続き宜しくお願いします。」

和氣さん
「TVアニメ『宝石の国』に携わることができて、制作中もとても楽しみながら作っていました。
この作品で、初めてのことに挑戦した人も多いのですが、そうした人達と一緒に作るアニメは楽しいんだなと感じました。皆の「挑戦したい」というモチベーションが、この作品のクオリティに繋がったのだと思います。」

照井さん
「とても素晴らしい作品に関わることができて光栄です。楽しみなことが最終話にも残されているので、ぜひ注目してご覧になってください。」

YURiKAさん
「私も原作のファンの一人で、色々な人が愛情を持って作っている素敵な作品のオープニングを歌えて嬉しいです。OPテーマ「鏡面の波」は、歌うごとに愛が増す作品です。4月のイベントにも参加しますので、楽しみにして頂けたらと思います。」

天野さん
「素晴らしい作品に関わることができて嬉しいです。アニメのオープニングは未経験ですが、オファーを頂けて、そして作りきることができて良かったなと思います。」

山田さん
「大好きな作品なので、半分ファン、半分スタッフという形で携われて嬉しいです。ファンの方と同じ目線で制作しているので、今後のBlu?ray & DVDもぜひ楽しみにして頂けたらと思います。」

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(C)2017 市川春子・講談社/「宝石の国」製作委員会